第1652話 180日目 一日の終わり。(保健の追加版。)
エルヴィス伯爵邸の客間。
いつもの夕食後のティータイム。
「5日に出立ですね。
わかりました。」
エリカがそう答え、カサンドラとペイトーも頷く。
「エリカさんがまとめに入ったんですよ。
あ、私は今回は留守番しておきますね。」
アリスが答える。
「ふむ・・・アリスは行かないのじゃの?」
「前回は行きましたし、レイラお姉様も元気なのを確認しましたしね。
今回は特に用事もありませんし、タケオ様も会議ばかりでしょうから私が暇になってしまいます。
タケオ様が留守の間はベルテ一家の事や子供達の事も見ておきたいですからね。」
「ふむ、アリスも妻としての自覚が芽生えたようで何よりじゃ。
タケオ、同行者にヴィクターは入れなかったのじゃの?」
「ええ、当初は入れていたのですが、私もマイヤーさんもヴィクターも居なくなると何かあった際にエルヴィス家との連絡役が居ないとわかったので今回はヴィクターが留守番ですね。
同行者は試験小隊からあと2名くらいでしょうね。」
「うむ、何かあればヴィクターに頼むかの。」
「はい、アリスとヴィクターで話し合って貰えれば良いと思います。
なので、ヴィクターにはジーナへの、ベルテ一家にはジッロさんへの手紙を書いてもらい、届ける予定です。
スミス坊ちゃんにはどうしますか?」
「わしは何も言う事はないのじゃが・・・アリスはあるかの?」
「・・・特にないですね。
スミスの諸問題はタケオ様が現地で解決してくれるでしょうから。」
「諸問題かぁ・・・」
「あ、タケオ、スミス向けの冊子を作りましたよ。」
パナが冊子を武雄の前に置く。
「え・・・いつ作ったの?・・・まぁ・・・見ますけど。」
武雄がパナの仕事の速さに驚きながら冊子を手に取り中を確認する。
「・・・なんか昔読んだ内容ですね。」
「タケオ的には中学生ぐらいの保健授業の内容と同じくらいにしました。
あれぐらいがちょうど良いですよね?」
「ええ、それで十分だとは思いますが・・・ん~・・・」
「タケオ様、どんな内容なのですか?」
「あ、私も気になります。」
アリスとエリカがワクワクしながら聞いてくる。
「・・・どうぞ。」
武雄がちょっと考えながらアリスに渡すとエリカが覗き込んで来る。
「へぁ!?」
「はぁぁ!?」
アリスとエリカが驚きの声を上げる。
「ん?変な声が上がったの?
タケオ、これはどういう事じゃ?」
「私や鈴音がスミス坊ちゃんと同じくらいの時に習った内容なんですよ。
第ニ発育急進期(第二次性徵期)・・・まぁつまりは女性は胸や腰つきの変化、男性だと筋肉の発達といった体型的な変化。女性は子供が生める準備に入る事と、男性は生殖器の機能の発達に関してといった・・・まぁこれから起こるであろう事が列記されていて、図解入りなんですよ。」
「ほぉ・・・アリスとエリカ殿のこの反応だと・・・」
「パナは絵が上手なんですよ。
良く描きましたね。」
「あれでもまだ3割程度しか詳細にかけていないのですが。」
「十分ですよ。
そこまで詳細に書く必要はないですし、大まかに概要がわかれば良いのですからね。
パナは十分な仕事をしてくれました。
あとは・・・これの説明を私がするのかぁ・・・」
武雄が腕を組んで考える。
「エリカさん・・・ここお尻。」
「こっちが前ですからそうでしょう・・・え?穴ってこんなに近いの?
感覚的にはわかりますけど。」
「絵にするとこうなんですね・・・へ・・・へぇ~・・・」
「ここに子供が入るのかぁ。」
「これが膨れるって脅威以外の何物でもありません。」
「世のお母さん方凄いわね。」
「これは感謝しないといけないですね。」
アリスとエリカは二人仲良く冊子の両サイドを各々が持ち、顔の前に持って来て、言い合っている。
「ん~・・・気になるの。」
エルヴィス爺さんがアリス達を見ながらソワソワする。
「伯爵、もう一冊ありますよ。」
パナがエルヴィス爺さんの前にも冊子を置く。
「うむ、すまんの。
・・・ほぉ・・・なるほどの。
これはアリスとエリカ殿が感心するのもわかるの。
フレデリック、見るかの?」
「はい、拝見いたします。
・・・ん~・・・こうなっているのですか。」
エルヴィス爺さんとフレデリックは感心しながら見ている。
「そうだ、今回の王都への旅・・・会議ですけど。
クゥとビエラはどうしますか?
今回は付いてきますか?」
我関せずでティータイムを取っているチビッ子達に向け武雄が聞く。
「きゅ?」
「あ~・・・あ?」
「きゅきゅ?」
「あ~。」
クゥとビエラが顔を見合わせて話し始める。
「主!私は参加しますよ!」
机の上でオレンジを食べているミアがそう言ってくる。
「ええ、ミアは私の通訳さんですからね。
何かあっても良いように付いてきてください。」
「はーい。」
ミアが返事をする。
「タケオ、私・・・いく!え~・・・リツと・・・会う!」
ビエラが返事をする。
「クゥのお姉さんですか。
うん、わかりました、今回は会議まで余裕がありますからね。
王都から遠くなければ私も会いに行きましょうか。
挙式の時に来て貰いましたが、お土産渡し忘れましたしね。」
「タケオも・・・いく!」
ビエラが頷く。
「ふむ、近い所に居れば良いがの。
それは王都に行って考えるしかないじゃろう。
気を付けて行くのじゃぞ。」
エルヴィス爺さんが言うのだった。
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