第1645話 戦術考察の為の事前協議。(改めて考えると怖い所と隣接しているんだね。)
武雄は研究室で話し合いを終えて3階に到着したのだが。
会議室の方から話し声が聞こえる。
「?・・・ヴィクター、会議室使っているんですか?」
「主、おかえりなさいませ。
はい、試験小隊の面々が会議室で戦術の話をしております。」
ヴィクターが武雄に近寄りながら言ってくる。
「えーっと・・・そうかぁ。
ん~・・・気になるけど・・・入って確認しますかね。
それとも報告書を待っていた方が良いのでしょうか?」
「どちらでもよろしいのではないでしょうか。
ですが、戦闘に特化していた者達の考察を待つというのも初期段階では必要かと思います。」
「・・・そうですね・・・待っていましょうか。
ちなみに改めて魔王国側領主の戦力は伝えたのですか?」
「はい、お伝えしています。」
「ふぅ・・・そうですか。
では、私は所長室に居ます。」
「はい。」
武雄が所長室に向かうのだった。
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研究所の3階 会議室。
試験小隊の面々はロの字に机を配置し、中央に地図を広げて打ち合わせをしている。
「現状の対比は以上ではあります。
ですが、この数値は慣例の戦争時の為、5000名ずつとなります。
侵攻時はファロン子爵が3000名、オーガ250体、パーニ伯爵は騎士組が3000名、オーガを300体。
魔王国 王軍から1000名の魔法師の追加が事前の机上での想定という話です。
ですが、満を持するなら・・・王軍は3000名か6000名の追加をする物と考えられます。
なので本格侵攻をする際には兵士12000名、突撃要員としてオーガ550体が妥当であると考えられます。
なので、戦力比1:3になります。」
ベイノンが説明している。
「・・・普通に戦えば負けだな。」
「まぁ・・・そうでしょうね。」
マイヤーの呟きにアンダーセンが頷く。
「敵視認から王都までの連絡と追加戦力の到着期間は?」
アンダーセンが聞く。
「まず、敵戦力の視認と発覚が開戦日の当日とした場合、王都まで伝令を走らせて3日。
王城にて報告、会議を3日、出立は・・・早くても4日後と想定します。
各騎士団や王都の壁を招集したとして最大4500名。
そしてそこからの行軍では戦場に5日はかかると思われます。」
ブレアが説明する。
「開戦日から15日か・・・」
マイヤーが呟く。
「平野での戦闘は全くの勝ちが見えない・・・なら関で籠城し、応戦しつつ相手の戦力を減らしながら増援を待つのが良いのでしょうね。
関の強化は実施済みなのですね?」
「あぁ、エルヴィス家側の関は所長と夕霧殿達の研鑽で関の左右3㎞までは8mの壁を作ってあり、早々には越えられないだろう。
それに初雪殿は壁の向かい側には膝の高さになる木を植えて助走が取れないようにしている。」
アンダーセンの質問にマイヤーが答える。
「獣人の特性を生かせない戦略ですね。
ゴドウィン家の関は今夕霧殿達の強化を受けている・・・となると侵攻時には同様な戦略が取られるだろう。
関での戦闘が主戦場になるか・・・」
「魔王国側の関は総石造りです。
門部分を強化すれば15日は持ちこたえられるのではないのでしょうか?」
ブルックが言ってくる。
「こちらの戦力とは魔法師による関の上からの攻撃と関や門に取り付いた敵を振るい落とす兵士となる。
敵も馬鹿ではない・・・関を落とすには門のみとわかればオーガに突進をさせるだろう。
果たして止められるかどうか・・・
魔王国側の3伯爵領の魔法師部隊の総数は?」
アンダーセンが言ってくる。
「10小隊かと。
ですが、オーガを1撃で倒せるとは思えません。」
アーリスが言ってくる。
「・・・ではどうやって倒すかというとこだな。
よし、条件の方向性が出て来たな。
本格侵攻時は関で対応するとしてオーガ等の攻撃をどう凌ぐかの検討だな。
相当厳しい戦闘になるだろうが・・・」
マイヤーが言う。
「それと・・・そうだなぁ・・・オーガについては、ファイアを中級魔法程度の威力で3発で絶命とする。
命中率は250mで30%、200mで40%、150mで60%、100mで80%、50mで100%とするか。
ベイノン、オールストン、アーキン、ミルコとケードで検討する事。
期間は1か月、想定出来る物は組み込んで・・・例えば関の前がどうなるか、通路がどうなるか、都度想定を勘案してくれ。」
「「「はい。」」」
「なら、次は通常の慣例の戦争での万が一を想定した戦術の考察だな。
これはアーリス、ブレア、ブルック、アニータとコーエンとする。
さて・・・慣例の戦争で万が一というのはどういう事か皆で考えようか。」
試験小隊の戦術研究の第1回打ち合わせが進むのだった。
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研究所の3階 所長室正面の総務部。
「ねぇヴィクター・・・会議長いね。」
武雄がジーナの机に座りながらヴィクターに声をかける。
アスセナが今休憩中でまた所長室を貸していた。
「白熱しているという事でしょう。
はい、主、内容を確認してサインをください。」
ヴィクターが武雄に書類を渡してくる。
「はい、ご苦労様・・・え?もうステノ技研との契約書出来たの?
早いですね。」
「まぁ初めてではないですから。」
「はぁ・・・優秀ですね・・・
えーっと・・・」
武雄が契約書の中を確認するのだった。
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