第1644話 講義は続くよどこまでも。(とりあえず試験してみよう。)
「だから・・・ここで内径を足すと180度に・・・なるほど・・・となると、ここでsinを使って・・・あぁ!なるほど!」
トレーシーが武雄の講義を受けて、講義中に自身で取ったノートを見返しながら頷いている。
「ここからはトレーシーさんにお願いしますけど・・・
例えば・・・60度ずつ斜めに支え木を置き、10㎏の力を端部に当てた際に残りの両端にかかる荷重は5㎏と想定しますが・・・この支え木自体にかかる負荷の合計はいくつでしょう?
あ、重力とかは気にしない事とします、あくまで理論値での考えで良いですよ。」
「「・・・」」
トレーシーと鈴音が顔を見合わせる。
「タケオ、答えは」
「はい、パナは口を閉じましょう。」
パナが正解を言いそうになったので武雄が止める。
「・・・武雄さん、正解わかっています?」
「いいえ、わかりません。
何気に問題を発案しただけですよ。
紙と鉛筆と時間があれば私も考えますけど。
それに本来なら部材が耐えられるかは材質の降伏点とか鋼材の断面係数等々知らないといけないんですけど・・・
その辺の係数がないんですよね・・・どうやってその辺の数値を割り出すのかもわからないですけどね。
トレーシーさん、やりますか?」
「え?・・・その・・・所長が言っていた・・・断面係数(?)ですか?」
「ええ、強度計算するには必要ですけど。
ん~・・・でもなぁ・・・これやり始めるととんでもなく面倒だろうし、一から試行錯誤するんだろうから相当な時間を取りそうだしなぁ・・・
盾の強度で簡易計算をする場合は専売局から来ている材料の試験結果でも良いのかなぁ・・・設計上の安全率を高めれば解決するのかなぁ?」
武雄が考える。
「武雄さん、微積は必要じゃないんですか?」
鈴音が聞いてくる。
「正確にいえば、必要ですよ。
でも・・・微積教えるの大変ですし、私も社会人になって微積も全く使っていませんからね・・・私にはこれ以上の講義は無理です。
王都から写して持ってきた本の中にありましたかね・・・」
「確か、なかった気がします。
となると詳細は難しいんですかね?」
「現状では難しいですね。
今度王城に行った際に許可が貰えれば確認してきます。
あれをパナ達に説明して貰っても・・・絶対に理解するのに時間がかかるでしょう。
ならば今は基礎角度の45度、30度、60度でしか出来ないでしょうかね。
それに√2と√3は1.414と1.732で計算出来るのでとりあえずこれで設計を始めてみると良いと思いますよ。」
「良いんですか?」
鈴音が聞いてくる。
「良いも悪いもそもそも私達は数式を覚える事や難解な構造を設計するのが目的ではなく、大まかに安全性を確認する事が目的です。
ついでに言えば、そう遠くない時期にそれなりに結果が求められています。
王都で説明しに行くのですけど・・・トレーシーさん、連れて行きますからね。
その時に簡易的な説明をする必要がありますが、わかりやすい数字を見せる必要があるのですが、30度、45度、60度、90度がわかりやすいでしょう。
詳細な計算を実施するのは随分先になるでしょうね。」
武雄が腕を組んで首を捻る。
「ん~・・・」
鈴音が考えている。
「とりあえず、所長やスズネ殿がもっと深い所を考えているというのがわかりました。
私はまずはこの三角関数を理解しつつ、盾の設計ですね。
鉄板を薄く作るという事ですけど・・・フルプレートで使われる厚さで耐えるのに薄くしたら耐えられないと思うのは当たり前ですよね?」
トレーシーが聞いてくる。
「当たり前ですね。
なので・・・例えば、鉄板に当たる前、もしくは当たった後に衝撃を緩和するために木を組み込んでみてはと思うのです。
・・・こうやって・・・今の使用している木よりも薄い板でトラス構造の鉄板を挟み込むという手段があります。
もしくはそもそも木製を使うと小銃の弾丸が防げないなら鉄板を表面+裏面+中に入れるトラス構造の3重を作ってみるのも良いでしょう。」
「なるほど・・・表面と裏面とその間にトラス構造・・・
ちなみに所長・・・鉄板に打ち込んで何mm保つかの確認はしましたか?」
「していません。
試験小隊に頼んで実弾演習時に的にして貰ってください。」
「となると・・・試験用に既存の鉄板を用意しないといけないですよね。」
「そうですね・・・手順は逆になるでしょうけど。
まずは実物で確認、検証と裏付けの為に計算をして厚さに対しての強度というのが大まかに出て来るでしょう。
それに盾にトラス構造を組み込むのは剣に対しては面としての防御力アップ、小銃に関しては表面を突破した弾丸がトラス構造である斜めにした鉄板に当たる事による力の分散、そしてそこを突破した際の裏板での受け止めを想定してですけど・・・
まぁとりあえず、今は木で鉄板のトラス構造を挟む事を第1弾として考えてください。
試作して弾丸を防げないなら次は鉄板で表面+裏面を作りましょう。」
「わかりました。」
トレーシーが頷くのだった。
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