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第1641話 過労の2人。(想像力と堅実な設計。)

武雄が研究所に向けて歩いていると。

「あ・・・キタミザト様・・・」

「本当・・・」

そんな絶望的な声が聞こえ、声の方を見るとダンとクローイが居た。

「こんにちは、買い物ですか?」

武雄が2人に近寄り話しかける。

「はい・・・キタミザト様、もう少しで図面が出来上がると思います。」

「私もクレーンのがもう少しです。」

2人が報告してくる。

「・・・2人ともしっかり寝てますか?

 目の下のくまが酷いですよ?」

「寝ても覚めても船の事が・・・」

「私も夢でクレーンが倒壊するんです・・・」

2人が呟く。

武雄が「あれ?何でこんなに追い込まれているの?」と思う。

「とりあえず、寝なさい。

 睡眠が足らないと良い仕事は出来ませんよ。

 それと気にしすぎです。

 初めての物なんですから失敗するのが当たり前ですよ。」

「ですけど・・・船の設計がそのまま物になるというのは初めてで・・・どこまで考えれば良いのか。」

「コンテナを吊って倒壊したら相当の被害が・・・どのくらい頑丈に作らなくてはいけないのか。」

2人が呟く。

「あ~・・・確かに前例のない物を作る時は1つずつ不安材料を取り除いていくのが作業の1つではありますけど。

 2人ともちょっと考えすぎですね。

 たぶんそれやり始めると収拾がつかないですよ?

 不安材料なんて山ほどありますし、今からすべてを想定なんて出来ないんですから。

 どこかで一旦区切らないといけません、そして詳細な模型を作る事を始めなさい。

 模型を見ながらいろいろな角度で問題点を検証する、もちろん水に浮かべて試験しても良いです。

 次に1/4サイズを作り失敗点と成功点を洗い出して、1/2サイズを作り再度洗い出し。

 そこで実物大の試験機を作って可動試験という事になると思いますけど?」

武雄が

「・・・キタミザト様、水に浮かべるのですか?」

ダンが目を見張って武雄に聞いてくる。

「え?・・・ええ、素人考えですみませんが、設計だけの物は絶対に何か不具合が発生します。

 それは船に限らず、どんな物でもです。

 実物を作った際に対処できる物なら良いですけど、もっと根本的な原因があった場合は大変でしょう?

 それに船は水に浮く・・・もっと極端に言えば半分は沈んでいますよね。

 そうすると水という物に当たりながら進むという解釈も出来るのです。

 例えば・・・船の先端が尖っている・・・先端が細目の場合と平らな場合を比べた場合、同じ水に浮くという事は同じでも水に当たるという考え方から見ると前進するのに必要な力が違うと考えられませんか?

 それに平らな方は確かに安定して浮かぶかもしれませんが、進む際に正面の水に当たって船が大きく揺れたりする可能性もあります。

 じゃあ、進むのを重視して細くすれば良いかと言えば目的は輸送船ですからそこまで細長くは出来ない。

 ある程度太さが必要だ・・・

 そうやって考えると設計でこのぐらいが良いと思っても水に浮かべて確認しなければわからない事もあるという結論になるのが当たり前だと思うのですけどね。」

武雄が言う。

「確かに・・・模型を作って浮かべるとは考えも付きませんでした。

 そうか、皆さんに見せるだけの模型ではダメという事ですね?」

ダンが頷く。

「・・・いや、そこはただ単に私が見たいだけですけど。

 それに水に浮かべるのなら詳細に作っても積み荷である荷重をどのくらい乗せるのかはしっかりと考えないといけません。

 1/4サイズの模型だから重りも1/4で良いかという単純な考えではダメだと思います。

 まぁ1/4にするにしても見学者を納得させられるような理由がないといけないという事ですね。」

「わかりました。

 ・・・方向性が見えて来た!」

ダンが少し顔色が良くなる。


「キタミザト様、私は?」

「クローイさんの方はもっと自信が持てるような設計をしないとダメですね。

 素材の強度や素材が曲がる限界荷重等々を数値化して、それを組み込んだ強度設計をまずしないといけません。

 櫓がまず鉄製ですからね。

 最初は基本的な数値の検証でしょうか。

 何mm厚の鉄鋼では1mでどのくらいの荷重をかけたら曲がり始めるのか。

 確認し、0度、30度、45度、60度での角度でどう違うのか。

 そして検証をしたらそれを数値化する。

 最終的には積み荷を吊る位置からどのくらいの距離で櫓の柱を建て、そこにはどのくらいの力がかかるのか、どうやって対応するのかを検討してから模型作りをしないといけません。

 クローイさんに必要なのは設計段階では倒壊しないという自信です。」

「キタミザト様、実際はどうやって数値化して生かせば良いのでしょうか?」

クローイが聞いてくる。

「あ~・・・研究所の2階のトレーシーさんか鈴音に聞きなさい。

 確か資料を持っていたはずです。

 1階の試験小隊の詰め所に声をかければ呼んでくれると思います。」

武雄が「確か王城で写した中に基本公式があったよね」と思いながら言う。

「はぁ・・・ならすぐに。」

「ダメ。」

クローイを武雄が止める。

「「え?」」

「二人とも見るからに睡眠が足らないです、そんな顔と頭の状態だと良い仕事は出来ません。

 話は通しておきます。

 今日は戻って何も考えず寝なさい。

 何も考えずにですよ。」

「「はぁ・・・・」」

「明後日にでも取りに来なさい。

 それまでは休養をする事!良いですね?」

「「はぁ。」」

「ほら帰って寝なさい。」

「わかりました・・・帰って寝ます。」

「キタミザト様、失礼します。」

ダンとクローイがローチ工房の方に歩いていく。

「・・・やる気があるのは認めますが、ちょっと真面目過ぎますかね。

 もう少しゆったりした気持ちで設計をすれば良いのになぁ。」

武雄が2人の背中を見ながら呟くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ずーっと気になってるんですが。 タケオさんが、『元の世界』に『戻りたいという気』にすらなっていない様子に。 タケオさんの仕事の進め方と関係あるのでしょうか? [一言] そして、『武雄さ…
[一言] 貴族からの仕事と武雄ちゃんの圧力のせいなんだよなぁw
[気になる点] 武雄は現代の週休制度が身体的に身についているから当たり前の事だとこの時代の今までの当たり前を理解しようとすらしようとしませんね。 上司として自分のやり方をいかに効率的だからと言っても押…
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