第1640話 一応エルヴィス爺さんには報告しよう。(エリカ、まとめ開始。)
昼過ぎのエルヴィス伯爵邸。
「ほぉ・・・ジーナが頑張って調べてくれたようじゃの。」
「ええ、流石、ジーナですね。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが武雄が持ってきたジーナの報告書を見ながら言う。
「うちの部下は優秀で困ります。
まぁエイミー殿下辺りに頼んだのでしょうけども、エイミー殿下ならその辺の機微もわかるでしょうから王立学院や人事局で開示される内容以上に踏み込んだ内容はジーナに教えないでしょう。」
「同級生だしの。
個人的なイメージを書いていない事からも私的な事は言わなかったのはわかるの。
それにしても・・・父親が外交局の対外戦略部かの・・・
まぁ親が外交局だからと言って子が外交局に入る必要はないのは確かじゃが。」
「エルヴィス家に来て外交局のような事をする事はほとんどありませんからね。
どちらかと言えばタケオ様の領分でしょうが。」
「うちは外交というより商取引ですからね。
向こうと輸出入を一手に引き受けているだけですし。
今回はたまたまお偉いさんが遊びに来ただけですよ。」
武雄が苦笑しながら首を振る。
「ふむ・・・父親が外交局だと幼少時からいろいろと他国の事も聞いているじゃろうの。
我が領内は獣人や異種族が普通に居るからのぉ。
志向や好き嫌いも親に似るのは当然じゃが・・・果たして馴染むかの?」
「タケオ様、こちらで質疑書を用意いたします。
それに沿って質疑応答をしてきて頂けますでしょうか。」
「まぁどういう答えが良いのかはわかりませんが、しっかりと聞いてきます。」
「うむ、よろしく頼むの。」
エルヴィス爺さんが頷く。
「それと王都での会議の開催日が正式に5月15日になりました。
5月10日に王都に入ろうかと思います。
出立は5月5日を予定し、エリカさん達と向かいます。
会議が研究所だけとはとても考えられませんので・・・数日滞在し、帰宅はスミス坊ちゃんが乗って行った馬車を引き取ってきます。」
「ま、タケオの事じゃ、それは致し方ないじゃろうの。
アリスはどうするのじゃ?」
「本人が来たいならですが・・・まぁ私からは何もありません。
今回は王都での会議が中心ですので、特に何かあるわけでもありませんし。」
「うむ、それで良いじゃろう。」
「では、私は研究所に戻ります。」
武雄が扉に向かおうとすると。
「タケオ、今回は私が王都に行きます。
ハツユキは研究所で仕事ですから。」
夕霧が武雄に声をかける。
「王都に何かあるのですか?」
「ん、例の残り1体とイソカゼが再度交渉中ですが、まとまりそうです。
なので私が行きます。
イソカゼからは多分これは生まれたてではないけど、古くはない感じとの連絡がありました。
私よりも確実に若いので何かあっても破裂させられます。」
「・・・」
彩雲が何も言わないで震えている。
「ふむ・・・夕霧、無理は禁物じゃぞ?」
「ん、伯爵、大丈夫。
タケオ、王都に行きましょう。」
「まぁその際は磯風も居ますからね。
前段階は交渉しておいて貰いましょう。
夕霧も出来るだけ危険には近づかない事、部下が出来るのなら任せても問題ないですからね。」
「ん、タケオ、わかりました。
無理はしません。
タケオ、ハツユキが前に王都に向かった際の旅支度をしておきます。」
「ええ、あ、それと馬での移動時の事ですけど、初雪の経験を共有はしているでしょうが、改めて予行をしておきなさい。」
「ん、わかりました。」
夕霧が頷く。
「では、私は研究所にいますからね。」
「ん。」
「タケオ、ご苦労じゃったの。」
武雄がエルヴィス爺さんの執務室を出て行くのだった。
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エルヴィス伯爵邸の客間にて。
「エリカさん・・・この本変じゃないですか?」
アリスが本を読みながらエリカを呼ぶ。
「え?どれですか?
今は街で買った民間療法の本を読んでいるんですよね。」
「そうです。
で、えーっと・・・あ、この本だ。
ここの・・・どこだったかなぁ・・・えーっと・・・あ、ここ。
こっちの本とこっちの本、書かれてる方法は同じでも効能が違いますよ?」
「え?・・・あ、本当だ。
どっちが正解なんだろう・・・あとでパナ殿に聞いてみましょうか。」
「そうですね。
さてと・・・続きを写していこうかな?」
エリカは今までエルヴィス家に来てからの資料のまとめをしている。
「えーっと・・・3都市間の意思伝達構想案の要点は・・・王家専属魔法師を使う事っと。
要点としては・・・」
エリカが新しいノートに書き始めるのだった。
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試験小隊の訓練場。
「「「「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」」」」
アンダーセンが監督している隊員達が肩で息をしている。
「はい、1200mの所まで行って全力で帰ってくる。
そんなに難しくないだろう?」
アンダーセンが皆に言う。
「途中に通路と呼ばれる落とし穴があって、結構広いんですよ。
飛び越えようとして万が一渡れなかったら下まで真っ逆さまです。
かなりの恐怖感がありますよ。」
「かと言って、正直に一度通路の底まで降りてまた登るのもなんだか違う気がするんですよ。」
「それは確かに。」
「そうだな、一度皆で考えてみる必要があるな。」
試験小隊も徐々に訓練を見直すのだった。
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