第1636話 簡易脱水機の評価。(盾の第2弾。)
研究所の3階 所長室。
「失礼します。」
制服姿のマイヤーが入ってくる。
「はい、お疲れ様です。
着替えたのですか?」
「ええ、汚れているので下の湯浴み場で軽く洗って屋上に干しています。
あ、そうそう、スズネ殿が持ってきた簡易脱水機良いですね。」
「そんなの持ち込んだのですか?」
武雄が首を傾げる。
「あれ?知りませんでしたか?」
「知りませんでした。
それで?」
「ええ、まぁ衣服と下着の1人分しかまだ出来ませんが、手回しで脱水をするという機械ですね。
余計な水分を落とせるので明日の朝か昼前には乾いていそうです。」
「脱水となると少し皺になりますよね。」
「まぁそこは致し方ありませんが、通常の手で絞ったよりも早く乾きそうというのは良い事です。
戦場でも洗濯物というのは1つの問題ごとではありますので。
作業服は我慢するにしても長期遠征時は出来るだけ下着は清潔さを保ちたいですし、夜洗って乾かせば次の日の湯浴み時には代えられますから。」
「なるほどね。
手回し式も利点があるのですね。
ならエルヴィス家にも紹介してみますかね。」
「ええ、戦場に行くなら数個か数十は欲しがりますよ。」
「そうですか。」
武雄が頷く。
「所長は何をされているのですか?」
マイヤーが聞いてくる。
「いや・・・思い立った物をとりあえず書いているだけです。」
「重要機密ですね。」
「そこまでの物ではないですよ。
時にマイヤーさん、一研の研究は魔法師向けでしたよね。」
「まぁそうでしたね。
二研は盾とか防具でしたか?」
「・・・正確には決まっていないんですけどね。
私が魔法に不慣れなので魔法適性があるなしに関係ない武具関係を・・・となっていると思っています。
盾の第1弾は決まっている、まぁ第2弾も私の中では決まっているのですけどね。」
「1m×1.5mの盾でしたね。
あれの第2弾が決まったのですか?」
「いや、普通に考えてそんなに大きな盾を持っていても戦闘時に邪魔だなと思ったんですよ。」
「戦闘には使いませんし、横一列での行進しながらの敵との衝突が通常戦法ですからね。」
「うん、そうです。
で、テイラーさんの所には小さめの盾もあるわけです。」
「それは冒険者向けですね。」
「うん・・・なぜ?」
武雄がマイヤーに聞く。
「そういう物だからとしか言えませんね。
もう少し言うならば戦争時も冒険者のように小さい盾を装備する事は兵士単体として見るならば、理に適っています。
盾で防ぎ、剣で攻撃する。
ですが、そうすると両手剣での攻撃が出来ません。
両手剣と片手剣では威力が違いますからね。
歴史を見れば紆余曲折あったのでしょうが・・・結果、アズパール王国のほとんどの兵士は盾専門の兵士と攻撃専門の兵士に分けた方が防御も厚く、攻撃が強いので標準的にそうなったと言えます。」
マイヤーが説明する。
「・・・ふむ・・・
ならこの盾を拠点防衛時には大きくしておき、攻める際には分割し、小さめの盾に出来るようにするという考えはどう思いますか?」
「それが第2弾ですか。
・・・需要はあるでしょうが・・・結合部分に剣が当たって強制的に分割されるという事は・・・まぁ所長は考えているでしょうね。」
「まぁそこはね。
騎士団や領主軍には改良した強化版の第1弾の1m×1.5mの盾、警備をする者達向けに通常は0.75m×1mの片手で持てる盾で、防衛時には結合させて1m×1.5mの盾に代わるようにしてみるのもいいかなぁと。」
「売り込み先はどちらに?」
「王都の警備局、地方貴族の捜査系小隊。」
「それでしたらある程度は需要がありそうですが・・・本当にある程度だと思います。
彼らは通常の業務中では別に結合する必要性があまりないのですから。」
マイヤーが考えながら言う。
「・・・ある程度なら良いでしょう。
これもトレーシーさん行きと。」
武雄がノートを前のページを数枚捲り丸をつける。
「・・・売れますかね?」
「別にそこまで売れなくても良いんですけどね、少なくとも利便性はあると思うんですよね。
それに通常は0.75m×1mの盾を使っておいて、暴動とかで盾を2枚連結させて大きい盾として使ってもいいですし、道を塞ぐ際に数個を連結しておけば簡易壁になる可能性もありますし。」
「・・・あぁ全く盾として考えていないやり方もあるのですね。」
「いろんな使い方をしてくれると面白いと思っていますけどね。
それと武具といえばステノ技研で作ったジーナに持たしている3段伸縮式警棒を改造しようかと。」
「あれをですか?」
「ええ、まぁ簡易的な強化の魔法を組み込みたいなぁと。
剣と打ち合っても折れない曲がらない物を用意したいのですよね。
そうすれば正式採用をしてくれる軍や局がありそうですし。」
「・・・確か所長は魔法の適性が無い兵士向けの武具をとの先ほどの言葉でしたが?」
「ええ、魔法の適性が無い人達も使える強化が出来る警棒を作ってみようかと。」
「・・・?」
マイヤーが首を傾げる。
「これの動力源の改良ですよ。」
武雄が懐中時計をマイヤーに見せるのだった。
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