第1629話 武雄と初雪の射撃訓練。(ハツユキ初めての攻撃。)
「パン」
「うっ!
・・・レバー引き、弾丸装填、狙い・・・よし。」
「パン」
「うっ!」
初雪が1発撃つごとに肩への衝撃で声が漏れている。
「ん~・・・衝撃が直に当たって痛いですか?」
武雄が初雪の横について初雪の射撃を見ている。
「痛い??
それはどういった感覚かわからない・・・でも撃った際に全身に振動が響く。」
初雪が武雄に顔を向けて言ってくる。
「それが痛みの1つだと思いますけど・・・
撃っていて体に不調があるならやめた方が良いですよ?
大丈夫ですか?」
「体調に不具合はない。
思考も問題ない。」
「では・・・続けて2回撃ってみましょうか。
レバーを引いた時の顔の位置に注意して。」
「はい、タケオ。
レバー引き、弾丸装填。」
初雪が01式小銃のレバーを引き薬きょうが飛び出すと新しい弾丸を入れレバーを閉める。
「最初は当たらなくても良いですからね。
落ち着いて。」
「はい、撃ちます。」
初雪は引き金を引くのだった。
「なぁ・・・」
「ええ、初雪殿ですね?」
オールストンとブレアが今は皆の後ろで休憩している。
そんな2人は初雪と武雄組の射撃を見ていた。
「エルダームーンスライム・・・まぁスライムが小銃を使うという事はどういう事なんだろうな?」
「最弱の魔物が私達と同等の攻撃力を有するという事でしょう。」
「だよなぁ・・・
スライムのあの情報収集能力と01式小銃があればこの威力の飛び道具を・・・脅威だな。」
「この地のスライムに喧嘩を売ったら反撃されるでしょうね。
唯一良い事は小銃の運搬は人型しか出来ないという所でしょう。」
「体内に格納が出来ない・・・のか?」
「それは誰もわからないので、あくまで人型が持って歩くしかないと私達の常識で語ったまでです。」
「所長が規制したくなる理由が本当の意味で認識できたな。
だが、頼もしくもあるか。」
「ええ、ある意味初雪殿達は自衛の力を手に入れようとしています。
そして小銃と弾丸の製造はキタミザト家が保有しているような物です。
初雪殿達は増々キタミザト家に協力を惜しまないでしょうね。
結果的にこの地での生活が安定するという事ですからね。」
「そうだな。」
「これは種族に囚われず友好な関係が結べる者達を庇護下に置く事がどれだけ重要かという事ですね。
所長はその先頭に立っているのでしょう。」
「俺らは所長について行って各魔物を見聞きしたり、奴隷とかも会ったが・・・
所長の考えは革新的過ぎるきらいもあったが、結果を見れば・・・正しい行動だったんだな。
それにしても魔物の中でスライムが一番優秀なのかもしれないな。」
「それを王都で言えば頭が狂ったと言われかねませんね。
優秀かそうでないかは他より力か知識があるかないか。
ヴァンパイアとかドワーフ、エルフ、魔人・・・スライムはその一角には居ないですからね。」
「エルダームーンスライム自体が知られていないんだったか。
マイヤー殿はどう考えているのか。」
「王都に報告するにしても今すぐとは考えていないでしょう。
少なくとも夕霧殿達がキタミザト家に従順であるうちは控えるのではないですか?
発覚すればスライムを手に入れたい方々は多いでしょうけど、スライムが皆夕霧殿達みたいに人に友好的とも考えられないですしね。
強引に自陣に組み込みたいとか強硬手段に出てもどうせ手に入らないでしょうからね。
無用な混乱を招くだけですから。」
「それもそうだな。
なら初雪殿が訓練しているのは自衛の為で俺達が何か言う事もないと。
と・・・他の面々は・・・400mに挑戦しているのがいるが?」
「あそこ通路ないんですけどね・・・
まぁやっている者達に通路を作らせますか。」
オールストンとブレアが皆を見回している。
400mの的を狙っているアーリスとアーキン、補助にベイノンとアンダーセンが居る。
「・・・当たらない。」
アーリスが数発撃って射撃体勢を崩し、安座をしながら言う。
「手前に当たっているからもう少し上を狙うしかないんじゃないか?」
ベイノンがスコープで覗いていたが、覗くのを止めアーリスに言う。
「これ以上に上を狙う・・・怖いなぁ。」
「パン」
「・・・当たりましたよね?」
アーキンがアンダーセンを見る。
「あぁ、当たったな。
だが、円から外れている。
的の毛布に当たっただけだ。」
アンダーセンがスコープで的を見ながら言う。
「この距離を当てるようにするのって至難の業じゃないのか?」
「流石に400mは遊びで数回やった程度ですからね。
200mですらほとんど当たらないですから400mで当てたアーキンは凄いでしょう。」
ベイノンとアーリスが隣のアーキンを見ながら言う。
「・・・確かに訓練が必要なんだろうな。
弾丸の納入の多さも納得だな。
常に練習をしておかないと当てられなくなる。
まぁその前に皆でこの距離を当てないといけないんだが。」
アンダーセンが考えながら言う。
「弾丸装填・・・とりあえず的に当てられるようにしないといけないですよね。
多分この距離で数回しておけば200mで撃つ時はもっと的に当てられるでしょう。
慣れないといけないですよね。
撃ちます。」
アーキンが長距離に慣れて短距離を克服するように訓練をするのだった。
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