第1626話 178日目 訓練場整備。(排水計画と的作り。)
朝食後の試験小隊の訓練場の射撃場。
「~♪」
作業服でリュックを背負っている武雄が鼻歌交じりに幅2m、深さ1.5mの通路を両脇に作っている。
武雄が作っている通路の先端から後2mの所をスライム達が関の強化のように土を固めてゆっくりと進んでいる。
ちなみにスライム達は底の50㎝程を削って両脇の壁の補強をしている。
「タケオ様、スライム達一生懸命ですね。」
アリスも朝から一緒に来ていて武雄の後ろを歩きながらスライム達の進捗を見ている。
「ゴドウィン伯爵領の関で今も作っているはずですが、この子達は知識を共有して作っているのでしょうね。
・・・関よりも早い気がしますが。」
「高さがこっちの方が低いからじゃないですかね?」
「なるほど、高さが低いから重なる数が少なくて良いからと。
・・・となると塹壕を作る際はスライム達に一度頼んだ方が良いかもしれませんね。」
「でも、こんな通路を作った方が良いんですね。」
「小銃の弾丸はほぼ直線で飛んできますからね。
前に人が居ないと思って撃って、万が一居た場合は致命傷になる可能性があります。
なので射撃場に入る場合は、万が一、撃たれても当たらないようにしておかないといけません。
となるとこうやって撃つ所よりも低い所に通路を作って歩いていけば割と安全でしょう?」
「確かに。
・・・でも地面より低いと雨が降ったら溜まりませんか?」
アリスが素朴な疑問を呈してくる。
「・・・排水計画かぁ・・・」
武雄が「あ、忘れてた」と思う。
「何か考えているのですか?」
「アリス、近くに小さくても良いので川がありますか?」
「えーっと・・・時雨ちゃーん!」
アリスが森に向かって呼びかける。
・・
・
「はいっス!
アリスに呼ばれたっスよ!」
時雨が小屋で着替えてからやってくる。
待っている間に武雄は両脇の通路を完成させていた。
「居てくれた。
時雨ちゃん、この近くに小さくて良いので川はありますか?
ここに入る水を出したいのです。」
アリスが射撃場を指さす。
「川っスか?
あっちに小さい川があるっス。
深さはそんなにないっスね。」
時雨が射撃場から自分達の住み家とは反対の方を指さす。
「時雨、どのくらいの距離ですか?」
「300mくらいっスかね。
・・・タケオ、この溝と同じ深さで川に繋げるっスか?
あっちの川の方が浅いからここ湖になるっスよ。」
「アリスの言うようにそうならないようにここに降った雨水を川に流したいんですよね。」
「この周辺は高低差ほとんどないっスけど?」
「ほとんどという事はあるんですね?」
「あるっスよ。
ここより低いのはあっちの川っス。
深さは2.5m程度っス。」
時雨が射撃場の奥を指さす。
「距離は?」
「2kmくらいっスかね。」
「下流までに村や町はありますか?」
「あっちの川は東町まで村は無いっスね。
流れは緩やかっスよ。
あ、こっちの川と途中でぶつかるっス。」
「ふむ・・・なら深い方と繋げるか。
時雨、今日の試験小隊の訓練後にここから排水路を繋げます。
深さは1mで繋ぎます。
向こうの水面がこちらの深さと同じくらいになる場所まで一直線になるようにします。
時雨はスライム達に言って通せる場所を調査してください。」
「わかったっス。
すぐにやるっスよ。」
時雨がすぐにスライム達を出して射撃場の奥に向かわせる。
「タケオ様、ここは2mの深さで川には1mの深さなのですか?」
「ええ、こちらの位置よりも低い位置に流れるようにしたいのですが、逆流されると危ないですからね。
こちらの奥に小さな溜池を作って、深さ2.5mの溝を作ります。
で緩やかに浅くして行き川に接続する。
そうすれば向こうからの流入は最小限で済むでしょうし、排水路に水が溜まり辛くなるでしょう。」
「時雨ちゃんは2kmと言いましたけど結構な距離になりそうですね。」
「それは致し方無いでしょう。
それにしても水準器が欲しいなぁ・・・皿で代用しながら傾斜を見ていくかな。」
「水準器?」
「平行に物が立っているか測定する器具ですよ。
ちゃんとした物は出来ないでしょうし、今は少しの傾斜があれば良いので長い平皿を買って来て傾斜をつけていきますかね。」
「それで上手く行くのですか?」
アリスが首を傾げる。
「行かなかったら別の事を考えますよ。」
武雄が笑って答えるのだった。
・・
・
射撃場の通路がとりあえず両脇と1200m地点と600m地点、100m地点と50m地点に両脇へ横断する通路が完成していた。
「はぁ・・・結構しましたね。」
武雄が射撃場を見ながら頷いている。
「タケオ様、もう10時30分ですよ。」
アリスが懐中時計を見ながら言う。
「結構時間が取られましたね。
おさらいも兼ねて今日は50mにしましょうか。
的は・・・何します?」
「タケオ、布ある?あとインクも。」
作業服姿のコノハが武雄に言ってくる。
「えーっと・・・こんなのしかないですよ?」
武雄がリュックからいつか使った毛布とインクと太めの筆を取り出す。
「タケオ、小太刀貸して。」
「はいはい、どうぞ。」
コノハが小太刀を使って毛布を50㎝角に数枚切り取る。
「よし、じゃあ、今回は適当に丸を書いて・・・どうだ!」
コノハが切った毛布に5重丸を書く。
「コノハ、意外と歪ね。」
「え~?・・・アリスも書いてみなさいよ?」
「・・・こう?ん~・・・私も歪ですね。」
「こんなもんじゃない?」
「はい、コノハ。」
いつの間にかパナも実体化し毛布に5重丸を書いていた。
「げっ!上手っ!」
「パナ上手いわね。」
コノハとアリスがパナが書いた丸を褒める。
「とりあえず的を取り付けられるように小山を作ってきますね。」
武雄が3人が書いた的を持って50m先に用意をしに行くのだった。
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