第1625話 177日目 1日の終わりは2。(試験小隊の飲みとアリスのお願い。)
エルヴィス伯爵邸がある街の居酒屋。
「あの子達上手くやっているかなぁ?」
ブルックが白ワインを飲みながらボソッと呟く。
「いや~・・・まだ1日目だぞ?
そんなに心配しなくても平気だろう?」
オールストンが言ってくる。
「そうだ、大丈夫だろうよ。
ケードもコーエンも魔法師専門学院卒業なんだし、訓練には慣れているだろう。
アニータとミルコは・・・あれ?大丈夫か?」
ベイノンが最後は心配している。
「そこは信じてあげなきゃダメですよ。
あの子達は良くやっていますし、人間種に何か思ってもいません。
向こうが変な態度をしなければちゃんと人付き合い出来ますよ。」
アーリスが言ってくる。
「そうだな。
信じるのも俺らの仕事と割り切るしかないだろう。」
マイヤーが頷きながら言う。
「・・・そういえば・・・卒業後の進路で地方貴族軍に行った人います?」
トレーシーが皆を見ながら言う。
「「「「・・・」」」」
皆がトレーシーを見ている。
「あ~・・・流石、元王都守備隊員・・・長い間、王都勤めご苦労様です。」
トレーシーが苦笑している。
「お前も王家専属魔法師部隊だろう?」
アンダーセンが言ってくる。
「うん、そうだよ。
まぁいろいろ渡り歩いているけど。
という事は、実質貴族領の新人教育の実態は知らないんだね。」
トレーシーが呆れる。
「そうなるな。
第1騎士団も第2騎士団も入った時には同期は魔法師専門学院卒業生か地方から推薦された数年の兵士経験を積んでいる猛者。
新人教育と言っても地方貴族の新人教育と同じ枠ではないな。」
ブレアが難しい顔をさせながら言う。
「・・・地方貴族領だと現地採用の13、4歳の者達と一緒ですよね?
魔法師専門学院での4年の差は大きいなぁ。」
オールストンが言う。
「逆に魔法なしで卒業生に僅差で訓練を終えられるような者がいたら相当な逸材ではあるな。」
「ただ、そういう奴は近々王都へ編入する可能性は高い。」
ブレアとベイノンが言う。
「自分の可能性を試したいなら王都に行きたがりますよ。
立身出世が望めますしね。」
アーリスが言ってくる。
「あの子達大丈夫かなぁ?」
ブルックが再び呟く。
「やり過ぎなきゃ良いがな。
あの4人は最下位争いをしていると思っているが・・・相当高い能力持ちだからな。」
アーキンが言ってくる。
「そうなんだよね~・・・アニータとミルコなんて魔法師専門学院に入ればトップで卒業するだろう人材だし。
ケードはそもそも7位、コーエンは順位は低いけどそれは成績での話で身体能力等々は高いわ。
研修に行って周りとの違いに驚くんじゃないかな?」
ブルックが言う。
「驚くだけで済めば良いが・・・」
「帰って来た時に腑抜けてたら特別訓練だな。」
「そうですね・・・徹底的に訓練しましょうか。」
試験小隊の面々達が悪い顔をさせている。
「まぁ、皆ほどほどにな?」
マイヤーが皆に注意を促すのだった。
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エルヴィス伯爵邸の武雄達の寝室。
皆の湯浴みも終わり寝る前ののんびりタイム。
「タケオ様、明日は実弾演習なのですよね?」
「そうですよ。
私と鈴音が指導する事になるでしょうけど、朝から私は試験小隊の訓練場で各的までの通路作りをしますけどね。
何かありますか?」
「皆さん来る前に私も久しぶりに撃ちたいなぁと思いまして。」
「そう言えば最初の時しかしていませんでしたね。
小銃くらいアリスも使えれば万が一の際は対応出来るでしょうね。
コノハ、どう思います?」
「ん~??・・・特にないわよ。
アリスがそもそも魔法が撃てないからやっておくのも良いかもしれないね。
選択肢に飛び道具があると便利よ。」
「ならしてみますか。」
「はーい、よし!明日は久しぶりに撃てるんだ!」
アリスがやる気を出す。
「ほどほどにね。
朝からやるにしても通路を作るのにそれなりに時間はかかるでしょうからね。
10時過ぎくらいに来てください。」
「わかりました。
コノハもする?」
「私?私は精霊だもの、した所で・・・あ、しようかな?」
コノハが少し考えて答える。
「ふふふ、なら明日は私とコノハで勝負ですね。」
「アリス、私精霊よ?アリスより確実に当てるわよ?」
「コノハ、そんな必ず当てるとかの特技ありましたか?」
「ないけど・・・流石に兵士じゃないアリスに負けはしないわよ。」
コノハが呆れながらアリスに言う。
「そこまで豪語するのですね。
まぁ明日が楽しみです。」
「アリスの悔しがる顔が見ものよ。
あ、タケオ、的はどうするの?
円を描くんじゃないの?」
「三重丸くらい描きますかね・・・」
コノハの指摘に武雄が考える。
「・・・少なくない?五重丸は欲しいわよ。
あ、紙だと飛ばされるかもしれないから布で作って縫い付ける?」
「あ~・・・そうですよね。
取付方法を考えないといけないですよね・・・・木枠とかは作っている余裕はないでしょうし・・・
どうやるかな。」
「土手を作って直接貼り付けちゃえば?」
コノハが言ってくる。
「確かにそういう方法もありですよね。
・・・長めの釘を持って行って土手に貼りつけましょうか。
となると的の準備かぁ。
今回はどのくらいの大きさにしますかね。
あ、まぁ今回は50mでしょうからね。30㎝角の的でも作りますか。
必要なら業者に頼めば良いんですし。」
「そうね。」
「楽しそうですね。」
明日の事を3人は思いながらまったりと過ごすのだった。
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