第1623話 モニカ達との話し合い。2(お、今回は普通の雑談のよう・・・違った。)
「工場見学って楽しそうなのになぁ。」
武雄が笑いながら言う。
「キタミザト様も貴族です。
そう軽々しく店内を見られては職人達が気を使ってしまいます。
来ないでください。」
モニカが若干冷や汗を流しながら「来るなよ!絶対来るなよ!」と言っている。
「・・・前から普通に伺っていますけど?」
「打ち合わせの為ならいくらでも構いませんが、応接室までです。
作業場とか工房内は立ち入り禁止です。
職人達が忙しくない時なら良いのですけど、今は忙しいのでダメです。
事前に言って頂いて来て良い日を確認して報告します。」
「・・・まぁそうですよね・・・皆さんが気を使ってしまうのならお伺いはちゃんと日程を決めてからにしますか。」
「はい、それでお願いします。」
モニカが頷く。
「それはそうと、モニカさんの所で厨房の水回りとか棚とか出来ますか?」
「ええ、やっています。
エルヴィス伯爵邸の厨房のが壊れましたか?
図面も残っているはずですし、最短で1週間頂ければ取り換えられると思いますけど。」
「わかりました。
まぁエルヴィス伯爵邸のは壊れていませんが、個人的にね。」
「新居ですか?」
「お金が溜まっていないので無理です。
いえ、幌馬車に取り付けようとね。」
「???」
モニカが首を傾げる。
「キッチンカーと言って幌馬車の荷台を改造して簡易厨房を備え付けようかと思ってですね。
戦場とか旅の際に重宝しそうでしょう?」
「・・・また変な物を・・・」
モニカが額に手を当てガックリとしている。
「需要自体はあまりないでしょうから今は個人的にしてみようかとね。
ほら、今ローチさんの所で特殊幌馬車を作って貰っているでしょう?」
「黒スライムから作った板を全面に貼るとか言っていましたね。
その中に押し込むのですか?」
「ええ、厨房専用車両です。
戦争とか起こると料理人を連れて行くと言っていたのですが、ついでに厨房も持っていければさらに美味しい料理が出来ると思いませんか?」
「まぁ・・・言っている事はわかります、言っている事は。
でも・・・特注のサイズにしますか?」
「出来れば既製品を入れたいんですよね。
特注は高いでしょう?」
「既製品でかぁ・・・一般家庭用ので奥行きが浅い物はありますけど・・・
かまどとかはどうしますか?
あれ元々石か土ですよね。」
「ですね。
最低限を積んだら周りは耐火板で覆って延焼防止で。」
「なるほど、でも火を使うなら煙突も欲しいですよね。
水回りはどうしますか?」
「屋根部分からかまどの上部まで常設の排気設備と屋根部には後付けで煙突を付けれるようにして、水は桶にというのもありますが、まぁこれも後付けでタンクか何かを屋根部に付けれるようにして魔法師が定期的に水を入れておけば良いでしょう。
落差が作れれば蛇口を開ければ水が流れ出てきますからね。」
「考えなしという訳ではないのはわかりました・・・
いつお作りに?」
「すぐではないです。
ローチさんやキャロルさんの方で上手く行かないとなんともね。
が、やりますよ。」
武雄がにこやかに言う。
「その際にすぐにご作業出来るように図面等の用意はしておきましょう。
ローチさんやキャロルさんにもそれなりに伝えておきます。」
モニカが頷く。
「ええ、お願いします。
正式にはまた説明に伺いますが、それは追々です。
今は依頼品をよろしくと伝えておいてください。」
「はい、畏まりました。
では、また明日。」
「はい、よろしくお願いしますね。」
武雄が返事をするとモニカが席を立つのだった。
・・
・
研究所の玄関前。
「よし!今回はうちに被害が少ないぞ!
ふふふ、どちらかといえばキャロルさんの所が大変そうだけど・・・
ま、私の所は厨房だけで既製品だし。
キタミザト様が作ればあと数台か数十台程度でしょうからちょっとした仕事だね。」
モニカが気分良く帰るのだった。
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エルヴィス邸の客間。
「えーっと・・・この資料は・・・写したわよね。
こっちは・・・うん、平気ね。」
エリカが滞在中に写したり、教えられて資料をまとめていた。
「エリカさん、結構な量になりましたね。」
「うん、かなりの量だわ。
でもそれだけ実りある日程だったという事よ。
・・・帰ってからの報告が大変そうだけど。」
「ウィリアム殿下達にですか?」
「うん、それもあるけど陛下ね。
内々にタケオさんの動向を掴みなさいって指示が来ているし。」
「大変ですね~。」
アリスが他人事のように言う。
「うん、大変~。
アリス殿怒らないの?『王都の間者かー』とか?」
「いえ、誰でもタケオ様の動向は調査しているだろうと思っていますし、陛下は元々そういう契約で研究所を創設していますから。
それにタケオ様も自身の研究所の人員を王都中心に採用しているのは王都に報告させる為ですからね。
特には?
エリカさんなら虚偽の報告はしないでしょうし、むしろタケオ様が説明した知識を他者に説明する立場ですから大変だなぁと思っています。」
「そうなんですよね~・・・
あ~・・・どう説明すれば良いんだろう?
まぁスライム関連は言わないとしても高性能肥料やコンテナもスライム関連だからなぁ・・・
どう・・・はぐらかすかですよね。」
「そこはエリカさんに任せますけど。
お爺さまに投げちゃえば良いんじゃないですか?
エルヴィス家とキタミザト家で開発した高性能肥料の試験を始めたが、少量過ぎて試験しか出来ないと。」
「ん~・・・時間稼ぎにしかならないでしょうね。
でも、まぁタケオさんも一緒に戻りますからね。
タケオさんにお願いするしかないですかね。」
「それが一番ですよ♪」
「アリス殿、お気楽ですね。」
「私はお留守番ですもの♪
あ、王都の美味しい物とかあったら送ってくださいね。」
「エルヴィス伯爵領より美味しい物なんて国中探してもないですよ。」
エリカが苦笑するのだった。
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