第1621話 小銃講義開始。5(復習と準備。)
研究所の1階 試験小隊詰め所。
「報告、各位の小銃を棚にしまい施錠完了しました。」
「同作業、確認しました。」
アーキンとベイノンがアンダーセンに鍵を渡す。
「はい、了解。
弾丸はもう既に私の下に来ています。
こっちの棚だな。」
アンダーセンが違う棚の施錠を解除し開けると小さい木箱が複数個あった。
「・・・もう来ているんですか?」
「ああ、500発来ている。」
「いきなり1人に約50発・・・多くないですか?」
「そう思うだろ?俺もそう思う。
だが、研究所では毎月2000発調達するようだからな。
・・・これならみっちり訓練出来るな。」
アンダーセンがアーキンの言葉に頷きながら言う。
「逆に言うとそのぐらい撃たないと慣熟訓練にならないという事ですか。」
「生産限界が2000発なんじゃないか?
所長の事だから精一杯の数を発注しているんだろうな。
来年、人が増えたら倍の数の発注がかかるんだから・・・ステノ技研も大変だな。」
「協力工房が潤ってくれるのはありがたいと思っておこう。
明日の午後からは訓練場で実弾演習だから今日の講義の復習を怠るな。
以上、こっちも施錠をしておく。」
「「はい。」」
アンダーセンの言葉にアーキンとベイノンが返事をして自席に戻る。
「ん~・・・」
ブルックが講義の復習をしながら唸っていた。
「ブルック、どうしましたか?」
アーリスが聞いてくる。
「いえ、見返しているんですが、割りと簡単だなぁと。」
「小銃が?」
「はい、取り扱い方法もメンテナンスの仕方もです。」
「そんな事を言ったら剣や防具だって簡単です。
剣なんて触れれば切れますからね。」
「まぁ、そうですけど。
でも剣で攻撃するとなると多少剣技を身に付けないといけないじゃないですか、この小銃は剣で言えば正面や上段に構えるといった最初の段階のみしっかり覚えれば良いだけなんですよ。」
「覚える数が少なければ熟練が多くなるでしょう。
それに力任せではないというのも万人向けの武器という考えに沿っているのでしょうね。」
「・・・所長達が極少数の配備に留めたい理由がわかります。」
「まぁそうですね。
だが、発祥地という点で見ると他国だからな。
いくら生産者をこっちに引き入れたからといってカトランダ帝国で生産出来なくなった訳ではない。
それに報告書を見たが、先に実戦配備したのはウィリプ連合国の者らしいしな。」
「まぁ私もその場に居ましたけど・・・
それにしても注意点に『レバーがロックされた状態で銃口を向けた時点で戦闘の意志ありと捉えられる』とは・・・」
「剣だってそうだろう?
構えたら戦闘意欲ありと取るのが普通だと思いますが。」
「いや、所長が・・・一番最初、そのウィリプ連合国の者に銃口向けられていたんですけどね・・・」
「・・・これ書いたのはスズネ殿ですが、所長が見ないという事はないでしょう。
ということは・・・」
「知っていて銃口を向けられても平然としていたという事ですよね。
所長、危ない事をしていたんだ。」
「だからこそ今の結果ということでしょう。
今後は注意していけば良いと思う事にしましょう。
あと・・・射撃訓練時の注意点の確認も念入りにした方が良いですね。」
「そうですね、2色の旗を用意して射撃場所の両端に置き」
ブルック達が復習を始めようとした時。
詰め所の入り口の扉がノックされ人が入ってくるのがわかる。
そして内側の扉が再びノックされ。
「すみません、ハワース商会の者です。
研究室の内装の工事に来ました。」
と告げる。
「あ!はーい、少々お待ちください!
トレーシー殿!お客さんです!」
ブルックが席を立ちトレーシーの方に行くのだった。
・・
・
研究所の3階 所長室。
武雄とマイヤーが訓練場内の幅20m、奥行1250mの射撃場の的の位置を検討していた。
鈴音はトレーシーに呼ばれ2階の研究室に行っている。
「左端から50mが2的、200mが2的、100mが2的、400mが2的、1200mが1的、600mが1的・・・
段違いにしているのですね?」
「近い距離が並んでいると間違えそうですし。
他だと左右端から50m、100m、200m、400m、600m、1200mと中央に近くなるほど遠くなる風にも出来ます。」
武雄が紙の両端をトントンと交互に指しながら話している。
「どっちが良いのでしょう。
所長がやりやすい方で構いませんが。
それと所長が事前に『ストーンエイク』と『エクス』で掘った通路を作るのですよね。」
「ええ、いくら注意をしていても人が居ないと思って撃つ時もあります。
的の方に行くのなら両脇に1250mの位置まで行ける溝を掘り、各的まで行ける横溝を作っておきますからそこを通って行くのが安全でしょう。
ほら、ビエラとした時に塹壕というのを作りましてね。
それを通路にしようかと。」
「ブルックとアーキンからの報告を読みましたが・・・
まぁこれも所長頼りになってしまいますか。」
「皆には的の作成を頑張って貰いますけどね。」
「わかりました。
指示頂ければお手伝いをしましょう。」
「お願いします。
で、的の配置はどうしますか?」
「ん~・・・所長はどちらが良いと?」
「どちらも良いかなぁと思っています。」
「私が判断ですか。
どっちの方が良いのかなぁ?」
マイヤーが悩むのだった。
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