第1619話 小銃講義開始。3(フリーな時間。)
今は講義が終わり、自由に皆が今習った事を確認している。
「ん~・・・スズネ殿、こうですか?」
アンダーセンが清掃をした小銃を鈴音に見せる。
「はい、そうです。
もう少し力を入れて磨いても問題ないですよ。
先端は土とかも入り込みますから、出来るだけ綺麗にしてください。」
「ええ、わかりました。」
「スズネ殿、清掃する際の柔らかめの布とはどんな物が良いのですか?」
ブレアが今までの講義内容を書いた資料を片手に聞いてくる。
「出来れば衣服に使われる・・・柔らかめの布が一番でしょうね。
無かったら割とツルっとしたのがお勧めです。
羊毛とかだと逆に異物として不具合が生じかねませんからね。」
「なるほど、となると実弾演習前に用意しておいた方が良いですね。
明日の朝一にでも買いに行きますかね。」
「あ、スズネ殿、この清掃の周期の確認となにか油分は必要ですか?」
オールストンが質問してくる。
「そうですね・・・」
鈴音は小銃清掃の復習をしている面々を見ている。
「所長、こうですか?」
トレーシーが伏せ撃ちの姿勢を取りながら言う。
「さっきよりは全然良いですよ。
ただ、実弾だと撃った際に反動があるのでしっかりと握っていないと大変ですね。」
「反動かぁ・・・」
「実際に撃ってみればわかりますよ。」
「はい。」
「所長、今回の講義のこの肩に付けるという撃ち方は伏せ撃ち以外でも使えるのですか?」
アーリスが聞いてくる。
「伏せ撃ち、膝立ち撃ち、立ち撃ち。
どれも基本は同じです。
肩に銃床をしっかりと据えて、顔を傾けずに狙い、撃つ。
どの撃ち方も上半身の関係性はそのままです。
伏せ撃ち、膝立ち撃ち、立ち撃ち、これは先の講義で利点を説明しましたが、基本は同じなんですよ。
用途に依って撃ち方が変わるだけです。
今から始めるのは一番安定して狙える伏せ撃ちを主にしますが、慣れてくれば膝立ちや立っての射撃訓練もしていくべきでしょう。
なんなら騎乗しての射撃もしても良いかもしれませんね。」
武雄が楽しそうに言う。
「騎乗しながら・・・となると馬が小銃の音で驚かないようにしないといけませんね。
王都守備隊も定期的に魔法を騎乗しながら発動させます。
戦場に来て動かなくなってもいけませんからね。」
アーリスが考えながら言う。
「へぇ・・・馬かぁ・・・毎回エルヴィス家の馬を借りているからなぁ・・・
今すぐという事でないなら何頭かお借りして慣れさせてみた方が良いかな?」
武雄が首を傾げながら言う。
「まぁこう言っては何ですが、研究所もキタミザト家もまだまだ余裕がないので専属の軍馬を持つのは先になるでしょうかね。」
マイヤーが苦笑している。
「お金がない組織は大変ですね。」
ベイノンも苦笑しながら言う。
「そう言わないでください。
当分はエルヴィス家やローチさんの所に借りに行きましょう。
急ぐ旅でないなら皆で幌馬車でも良いんですし。」
武雄が「ごめんね~」と笑っている。
「馬はなくとも戦闘ベストに01式小銃、スコープそして盾。
最新の武具が揃っているなんて豪勢だと思いますけどね。
先行偵察なのですから森の中でとかもありますし、常に馬が必要とも言い切れませんよ。」
アーキンが言ってくる。
「お、アーキンさんが擁護してくれました。
まぁどちらにしても当分は飼えません。」
「そうですね。
それに飼ってしまうと馬の世話をする小屋や従業員が必要ですからね。
馬代、餌代、世話役代・・・結構かかるものですよね。
それなら金銭を払って借りた方が安く上がりそうです。」
ブルックが言ってくる。
「そう考えると貸し馬業や商隊は結構な資産家ですね。」
武雄が言う。
「元手がかかるという所ではそうでしょうし、需要もありますからね。
まぁでも常に動かしていないと商売にならないとなると馬の調子で売り上げが変わってしまうという事でもありますよね。」
アーキンが言ってくる。
「なるほどね。
馬も年を重ねますしね。」
「ええ、そこが生き物を扱う商売の難しさでしょうね。」
「ちなみに働けなくなった馬は?」
「ほとんどは肉になりますね。」
「うん・・・世知辛い。」
「あとは安く農家に売るようです。
農作業や荷馬車というよりも少量の荷を運べますし。」
「それも毎日ではないでしょう?
裕福な農家や集団で購入する農家以外は手が出せないか。」
「まぁそうですね。
所長には何か考えがありますか?」
「ないですよ。
そういう社会の営みだと割り切るしかないでしょう。
愛着が湧いたからといつまでも何も出来ない馬を置いておくというのも感情的にはわかりますし、費用がかかるからある程度生きながらえさせたら処分するというのも組織を任されている者の立場からわかりますからね。
どちらが良いかではない、どちらも間違いでもない答えのない問題でしょう。」
「そうですね。
まぁいつもお願いしている馬が居なくなると寂しくはなりますが。」
「そういう感情は大切です。
だからこそ感謝し、慈しみ、そして次に来た馬をまた大切に扱う事しか出来ません。
あ、そろそろ終わりにさせますか。
ブルックさん、鈴音達の方が終わったら講義終了です。
各自詰め所に戻って復習等々をしてください。
保管庫は勝手に作ってくださいね。」
「わかりました。
一旦、下に行って小銃を入れる棚の確認をしてきます。」
ブルックが会議室を出て行くのだった。
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