第1614話 客間でのんびり醤油の将来。(例の報告がやってくる。)
慰労会後のエルヴィス家の客間。
皆がのほほんとしていた。
「改めて食べるといろいろと作ったの。」
「そうですね。
タケオ様、まだあるのですよね?」
「あると言えばあるし、ないと言えばないですが・・・
コノハがやる予定の大豆と米関連で新しい調味料が加わるとまた増えるのは確実ですね。」
「それは楽しみなのじゃが・・・エリカ殿どうしたのじゃ?」
エルヴィス爺さんがエリカに聞く。
「いえ、タケオさん、新しい調味料を作って卸売市場に限定で卸してくれるという話でしたよね?」
「ええ、納得のいった物が出来たら領内以外の正規販売は卸売市場を通すという事は言いましたね。
ウィリアムさん達の事ですから何かしら動いているとは思っていますが、何かありましたか?」
武雄が聞き返してくる。
「実は第3皇子一家の料理人の募集は王家2つと王城からにしているのです。
その募集説明の中にぼかしながらもその調味料を入手する旨の話が入っているのです。
一早く試せますよ的な感じで書いてあります。」
「え?エリカさん、まだ完成していない調味料ですよ?
そこを売りにしたのですか?」
エリカの言葉にアリスが驚く。
「はい、タケオさんがコノハ殿と一緒に作るのですよね?
ちょっと期間は長くなっても出来る物と思っています。
なのですが・・・調味料だけを手に入れても調理方法が浮かぶかという素朴な疑問が今出まして。
ちょっと不安に。」
エリカが言ってくる。
「あぁ、その心配はないですよ。」
武雄が即答する。
「え?どういう事ですか?」
エリカが顔を上げる。
「醤油ですからね。
今のウスターソースと同じ感じで使えば良いんです。
野菜炒めだったり肉にも使えますし、出汁に入れて米と炊くという方法もあります。
今回狙うのは癖のない・・・私や鈴音は少ないと思っているけど癖があるかな・・・まぁ良いか。
癖が少ないという特徴の魚醤と考えれば良いです。
コノハ、どう思いますか?」
「魚醤に癖がありすぎるというのは置いておくとして。
概ね今の状態での考え方としてはそうだろうね。」
お腹がパンパンのチビコノハが武雄の肩に座りながら言う。
「・・・コノハ、いつの間にそんなに食べたの?」
アリスが呆れながら聞いてくる。
「アリスの見ていない所で。
いやぁ~・・・ミルクレープを心の底から堪能したわ。
・・・まぁエリカの心配はもっともね。
知らない調味料を何に使って良いかわからないというのはあるし、それで文句が出たら集めた料理人が辞めちゃうかもしれないとでも思ったのでしょう?」
チビコノハが指を立てながら言う。
「ええ。」
「たぶん問題ないわよ。
心配なら新しいソース教えてあげるし。」
コノハがそう言い放つ。
「あ・・・新しいソース!?」
「うん、醤油バターよ。」
「あ、それ前にコノハが奇跡のソースと言っていましたよね。」
アリスが考えながら言う。
「そ、まぁ名前からして察するだろうけど、醤油とバターを軽く火にかけ一緒に混ぜるのよ。」
「それだけですか?」
「うん、それだけ。
でも奇跡に近い美味しさよ。」
「そうなのですか?」
エリカが回りの人達に聞くが。
「ええ、結構な数の料理に合いますよ。」
「わしもわからんが、期待はしておるの。」
「私も期待しています。」
「きたい!」
「きゅ!」
「どんな感じなんですかね?」
武雄以外の面々は楽しみにしているようだ。
「私も期待して待っていれば良いのですね?」
エリカが首を傾げながら言う。
「うん、期待しててね!」
チビコノハが返事をするのだった。
と客間の扉がノックされエルヴィス爺さんが許可を出すと夕霧、時雨と初雪に抱えられて彩雲、紫雲が入ってくる。
「伯爵、厨房の片付けは終わりました。」
「うん、夕霧達もご苦労じゃったの。」
「ん、今日は大量に食べれました。
定期的にしてくれると私達は喜びます。
それと時雨と紫雲がジーナの所から戻ったので報告に来ました。」
「うむ・・・紫雲はわかるが・・・時雨がの?」
「そうっス!私も王都に行ってきたっスよ♪
スライム専用通路に問題はないっスね。」
時雨が嬉しそうに言う。
「はは、最近見なかったのはそういう事ですか。
ジーナ達は元気でしたか?」
武雄が苦笑しながら言う。
「病気もなく元気に毎日王立学院に通っているみたいっス。
あ、スミスはアリスの言う通り友達出来ていなかったっスよ。」
「ほら、私の言う通りです。」
アリスが得意げな顔をする。
「うむ・・・出来ぬか・・・」
「大体1か月ぐらいでグループは固定してしまうと思うので・・・失敗したんですかね・・・」
エルヴィス爺さんと武雄が心配そうな顔をする。
「ジーナの部屋でエイミーとドネリーに会ったっス。」
「うん?エイミー殿下と?」
アリスが首を傾げる。
「そうっス。
ドネリーはエイミーのお付きと言っていたっスよ。」
「・・・ん~・・・それは・・・
タケオ様、エイミー殿下は・・・」
「エルダームーンスライムの事を知っているんでしょう。
まぁジーナの傍には磯風が居ますからね。
どこかの段階で知ったのでしょうけど・・・エイミー殿下なら口は固いでしょう。
ジーナとスミス坊ちゃんが居るんですから早々口走るような事もしないと思いますし。」
武雄が事後承諾する。
「むしろエイミー殿下も加わってスミスとジーナちゃんの3人で謀してそうですけどね。」
「まぁその王家の姫が居るのなら3人で普通に楽しんでそうで良いがの。」
アリスとエルヴィス爺さんも「別に良いんじゃない?」と放任する。
「あ、そうだ、シウンがジーナの手紙持っているっスよ。」
時雨が言うと武雄の前に紫雲がやってくると小瓶を取り出す。
「はいはい。
何か報告でもあるんですかね?」
武雄が小瓶を開け中身の手紙を確認する。
「・・・は?・・・」
武雄が手紙を読みながら変な声を出すのだった。
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