第1613話 ここからが本編?(慰労会。)
エルヴィス伯爵邸の食堂。
武雄達だけでなく、ほとんどの従業員・・・メイド、執事、料理人達が集まっていた。
「さ!慰労会を始めましょうか♪
皆さん!今日はありがとうございました。
そしてご苦労様でした!」
「「「キタミザト様、お疲れさまでした!」」」
武雄の言葉に皆が返事をする。
「では、最初にエルヴィスさん、お願いします。」
「うむ、今日は研究所の面々との食事会の対応ご苦労じゃった。
さて、折角タケオが作り出した数々の料理を来客だけに出すのはもったいないという事でこのまま皆で慰労会じゃ!
そういえば今日は新しいメニューも出ておったの。
まずはそちらをしておこうかの。
ヒルダ、おるかの?」
「は・・・はい!」
一番遠くに料理長と居たヒルダが大声で返事をする。
「今日のアップルパイ、なかなか好評じゃったぞ。
良くタケオを動かしてくれたのじゃ。
皆にエルヴィス家として新しい物を与えられた事は喜ばしい限りじゃ。
で、タケオ。」
「はい、ヒルダ、前に。」
「はい?」
ヒルダが頭を捻りながら武雄の前にやってくる。
「こちらが今回のご褒美です。」
武雄がノートを差し出す。
「はぁ・・・」
ヒルダはとりあえず受けとる。
「これはの。
エルヴィス家の料理人達のレシピ本の写しじゃ。
さっき料理人に書いて貰っての。」
「え!?」
ヒルダが驚く。
「全料理というわけではありません。
約3割程度ですし、エルヴィス家とキタミザト家のみで出される料理は書いていません。
ですが、それ以外のプリン、ショートケーキ、バターサンド、各出汁の取り方、茶碗蒸し、それに今日試作したアップルパイとシュークリームも記載されています。」
「そ・・・そんなにですか。」
ヒルダがノートをジーっと見ている。
「他のも料理長は知っていますが、私達に黙ってご家族に教えるような方でもないでしょう。
今後は少なくともこれに書いてある事は家でも実践出来ますよ。」
武雄が言ってくる。
「よろしいのですか?」
ヒルダが恐る恐る聞いてくる。
「はい、このレシピを元にいろいろな料理を作りだして欲しいと願っています。」
「うむ、これからも研鑽をしていくのだろうからの。
有効に使って、また行き詰まったらタケオに相談すると良いじゃろう。」
武雄とエルヴィス爺さんが朗らかに言う。
「はい!ありがとうございます!」
ヒルダは礼をして料理長の下に戻っていく。
「うむ、では、皆の日頃の仕事に対する姿勢に感謝して。
慰労会を始めようかの。
皆、今後ともよろしく頼むの。」
「「「はい!伯爵様!」」」
「よし、食べようかの!」
「「「はい!」」」
メイドと執事達が料理に殺到し、料理人達が対応するのだった。
・・
・
料理長とヒルダは食堂の隅で立ちながら食堂を眺めていた。
「お父さん!ノート貰ったからこれでいろいろと作ってみるね!」
「あぁ、これで家でも作れるな。
それに派生の料理がヒルダによって出来るかもしれない。
その時は言ってくれよ。
タケオや伯爵様に出して確認はするからな。」
「うん♪
家に帰ったらじっくり読もうっと。」
ヒルダはノートを大事そうに抱える。
「料理長、ヒルダお嬢様、ありがとうございました。
アップルパイ美味しかったです。」
メイド長が料理を盛った皿を持って料理長の所にやってくる。
「皿の上にアップルパイが無いようだが?」
「ええ、出ている分は若い子達に取られましたよ。
厨房で試食しておいて良かったです。
料理長は食べないので?」
「ああ、料理人達は皆、今日出た物から少しずつ持って帰る事になっている。
バスケットには詰め込み終わっている。
研究所の面々の時は見れなかったが・・・こんな風だったのか?」
料理長が食堂内を見ながら言う。
「ええ、大変でした。
特に今回はお子様もいらっしゃいましたから縦横無尽に動き回っておいででしたよ。」
「あっちもこっちも食べたかったんだな。」
「はい、そのようです。
ですが、それほどに今回の料理は良かったという事でしょう。
ヒルダお嬢様のアップルパイも人気でした。
良くぞ、このスイーツを考え出してくださいました。」
「ありがとうございます!でも発想だけで形にしてくれたのはキタミザト様で。」
「いえいえ、その発想こそが素晴らしいのです。
むしろそれを形にしてしまうキタミザト様の方が異常なのでしょう。
今後とも何かございましたら料理を披露して頂けたらと思います。」
「はい!わかりました。」
ヒルダが頷くのだった。
・・
・
「美味ち♪」
「きゅ♪」
ビエラとクゥはアップルパイとシュークリームを堪能していた。
「ビエラちゃん、さっき食べていましたよね?
飽きないのですか?」
アリスもアップルパイを食べながら聞いてくる。
「はい!大丈夫!
アリス、美味ちい?」
「ええ、とっても美味しいです。
ヒルダちゃんの発想は素晴らしいですね。」
「はい!」
「きゅ♪きゅ♪」
アリスの言葉にクゥが頷く。
「うっ・・・食べすぎてしまいました。」
ミアが最初にシュークリームを食べ今はアップルパイを半分まで食べたが流石にお腹に溜まったようだ。
「あ~ぁ、ミア殿、食べすぎですよ。
体が小さいのですから少量ずついろんな料理を食べないと。」
エリカがシュークリームを堪能しつつ苦笑しながら言う。
「いけると思ったんです・・・ホイップクリームめ・・・こんなにお腹に溜まるとは。」
「あ~♪」
ビエラがミアの残りのアップルパイをひょいっと取り上げ食べる。
「いつもなら悔しいのですけど、今は他の料理が食べられない事が悔しいです。」
ミアが口惜しそうに言うのだった。
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