第1612話 えんもたけなわではございますが。(参加者は楽しかったようです。)
「うむ、皆と歓談出来て楽しかったの。
これからもキタミザト家をよろしくの。
皆がこの街での生活を楽しんでくれたらそれで良い。
わしからは以上じゃ。」
エルヴィス爺さんが皆の前で話をしている。
「最後に私ですね。
そうですね・・・今回は急遽研究所の開設という事で職員だけでなくご家族もバタバタとしながらの異動になってしまったのは申し訳ないです。
ですが、私が望み、皆が賛同してくれたからこそ研究所が開所出来ました。
今後は着実な実績を残しながらやっていく段階になります。
まだまだ所長としても貴族としても不慣れな事ばかりです。
私一人では出来ない事も職員の皆の力があれば出来る事も多々あるでしょう。
私も含め皆の努力で結果が変わるでしょう。
小さい所帯です、仕事も大切ですが、家族との時間も大事にしながらやっていきましょう。
さて・・・一丁締めでもしたいのですが・・・鈴音、わかりますか?」
武雄が鈴音に声をかける。
「パパパンですよね?」
「それ1本締めですね。
全員知らないという事で・・・良いですか?これからするのは『手締め』という皆でする終了だよという合図になります。
これ多分私が好んでしますので、覚えておいてください。
まず私が皆さんに『お手を拝借』と言います。
そこで手を開いて待機。
で次に『ィヨーオッ』と言いますから、パンと1回手を打ちます。
これでこの場を終えようという物になります。
まぁとりあえずこの場ではそれとなくしてくれるとありがたいですね。
では、いきますよ。
本日お集まりの皆様のご健康と、我が研究所の増々の発展を祈念いたしまして、お手を拝借いたします。
ィヨーオッ。」
パンッ!
皆で手を打つ。
「今日はありがとうございました。」
武雄が軽く礼をして進行をしている執事に向かって頷く。
「エルヴィス伯爵、キタミザト子爵ご夫妻が退場いたします。」
その言葉でエルヴィス爺さんと武雄とアリス、エリカが食堂を後にするのだった。
・・
・
客間にて。
「タケオ、おもしろい事をするの。」
「会社・・・所属先での飲み会とかでほぼ毎回していましたからね。
何となくやらないと気持ち悪かったんです。
ちなみにああいった食事会の際の締める方法とか慣例はあるのですか?」
「これと言ってないの。
王都や陛下関連じゃと『アズパール王に~』がある程度かの?
エリカ殿はどうじゃ?」
「カトランダ帝国だと『帝国の栄光よ~』とかなんとかやりますね。
まぁアズパール王国もカトランダ帝国も兄弟国ですからね。
似ていても不思議はないですかね。」
「ん~・・・どの国でもしていそうですよね。」
「皆の士気向上や団結を狙ってもあるからの。
似たり寄ったりじゃろうの。」
3人はのんびりと話をしていくのだった。
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エルヴィス伯爵邸を後にした面々はというと。
「はぁ~・・・美味しかった。」
「お父さん、料理美味しかった。」
「だろう?
あれを所長は普通に作るからな。」
「所長って凄いんだね。」
「凄すぎだな。
この地では所長はしたい事をしてのほほんとされているが、あれで王都に行けば各局長と連日の打ち合わせ、王家と食事会・・・休む暇がない感じだ。
良く熟している。」
「へぇ~。
お父さんは大丈夫なの?」
「まぁ・・・俺は部下を見ていれば良いし、所長の考えに常識論を言うだけの仕事だからなぁ。」
「・・・所長もアリス様もお父さんの事を頼りにしていると言っていたけど、そうじゃないんだね。」
「うぅ・・・娘の評価が厳しい・・・」
「なーに言ってんの。
エルザ、お父さんはそんな所長と奥様の信頼が厚くて一番に部下にならないかと声をかけられたのよ?
どの隊員よりも一番に声をかけられた。
ここ重要よ?」
「へぇ~?ならお父さんは凄いんだ。」
「そうよ、お父さんは凄いの。」
「おぉ妻の評価が良いぞ。」
マイヤー一家は皆の先頭で家族団らんを楽しんでいる。
「オーラの言っていた通り、エルヴィス領は凄いのね。
大規模な演習も定期的にしているらしいし、街中も活気がある。
最初聞いた時は心配だったけど杞憂だったわ。」
「だ・・・だから言ったでしょう?
エルヴィス領は確かに魔王国との最前線だけど実績が凄いって。
そして今後はあの料理が街中に出回るんだよ?
来て良かったでしょう?」
トレーシーが妻のセシリーに説明している。
「うん、そうね。」
「お母さん、この地の伯爵様、ずっと楽しそうだったね!
安心感があった。」
「そうねぇ、温和なのかもね。
じぃじとは違った感じの豪傑なのかもね。」
「はぁ・・・伯爵様への物言いには焦ったよ・・・」
「何もなかったから良いんじゃない?
それに貴重な情報も頂けたし。」
「それね。
伯爵に迷惑にならないようにね?所長にもだけど。」
「大丈夫よ、お母さんに聞くから。」
「その後が怖いんだけどなぁ。」
トレーシーが目線を下げるのだった。
「・・・やっぱり良い男を捕まえたんだなぁ。」
デリアがアンダーセンを見ながら言う。
「何を唐突に。」
「いや、改めて思うとこんな好条件の軍隊の小隊長。
実働部隊長でしょう?
王都守備隊の分隊長になった時も驚いたけど、こっちの試験小隊長もなかなかになれない役職だと思って。」
「まぁ・・・そうだな。
部下の半数は王都守備隊出身でベテラン揃い。
新人2名は異種族だが魔法の才能は王都守備隊の誰よりもあり、残りの2名も魔法師専門学院の卒業生で7番と魔力量が歴代トップクラスの才女。」
「豪勢な集団ね。」
「まったくだ。
まぁ・・・俺はこの後の人事も考えないといけないんだがな。
どうしたものか。」
「そうね・・・週休制だっけ?
休みが定期的にあるなんて信じられないけど、女性隊員が喜びそうよ?」
「それも含めて勘案するかぁ・・・」
アンダーセン達ものんびりと帰宅するのだった。
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