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第1605話 もうすぐ出来上がり。(取り分けは楽しいよね。)

「上手く焼けてね!お願い!」

料理人1人が付き添ってヒルダが窯の前で焼き具合を見ている。


「ん~・・・ちょっとまだ固いかも。」

「ちょっとだけ入れますね。

 量が怖いですね。」

「なったらなった。

 やるしかないですよ、平気平気。」

シュー生地作り班はコノハと実作業をしている料理人、武雄がとろみの確認をしている。

「ん~・・・こんな物かなぁ。

 初めてだとこれで良いかも。

 もっと良い感じのとろみがあるかもしれないけど、後は数を熟していかないとわからないだろうね。」

「これは経験則ですからね。

 よし、ここまでにしましょう。

 コノハ、どうやって焼きます?」

「鉄板か・・・フライパンで焼くわ!」

「いや、普通に鉄板で良いでしょうに。

 用意は?」

「はい、こちらに。

 コノハ殿の事前レシピでバターを塗っておく事との事で塗ってあります。」

「うんうん、そうね。

 本当はオーブンシートも欲しいんだけどね。」

「コノハ、それは無理ですよ。」

「ない物強請りか・・・しょうがない。

 アップルパイは60分くらいよ。

 こっちは25分程度だからあっちが終わって総評している間に焼いちゃおう。」

「そうですね。」

「はい。」

コノハの言葉に武雄と料理人が頷く。

「さて・・・シュー生地をどうやって丸くするか・・・」

「あ、ペイトーが紙で作ってくれたわ。」

コノハがペイトー作の円錐形の筒を出す。

「斬新な。」

武雄が呟く。

「これしかないのよ。

 やってみてよ。」

「了解。」

武雄がシュー生地を入れて絞り始めるのだった。

・・

「ダメですね、これ。

 力加減が難し過ぎです、出過ぎたり出なさ過ぎたり・・・

 素人の私だけでなく、料理人がしても不均一になってしまいますね。」

武雄が絞り終わりグシャグシャになった円錐形の絞りを指さして言う。

「うん、何となくわかってた。

 革製品にしようかとも考えたんだけど、良い素材が無くてね。

 プラ系の素材の有り難みがわかるわ。」

「あの~・・・布とかはどうですか?

 あれなら柔らかいですし、使い捨てても問題ないと思いますが。」

料理人が言ってくる。

「「それだ!」」

料理人の言葉に武雄とコノハが同時に答える。

「いや~何で気がつかなかったんだろう。」

「本当ですね。

 次回からは事前に煮沸して乾かした布でしますか。」

「となると先端に固めの投入口が必要かな?」

「あ~・・・ん~・・・厚手の紙か何かで代用しますかね・・・」

「当分はそれしか方法が無いかもね。

 慣れてきたら金型作って貰えば良いんじゃない?

 ステノ技研だったらちょちょいのちょいで作りそうよ?」

「・・・そうしますか。

 1点ものだと高いから何個か作りますかね。」

コノハと武雄が考えを巡らすのだった。

・・

「1枚の正方形の中心に穴を開けて、穴より少し大きめの円錐形の厚紙ですか。」

「タケオ、それだとシュー生地を押し出す時に抜けない?」

「なら布から出ない内側に返しを作らないといけないですかね。」

料理人とコノハ、武雄は今後の課題を洗い出していた。

「キタミザト様、焦げ色が付いてきました。」

ヒルダが窯前で武雄達に言ってくる

「お、ついに来ましたか。」

「アップルパイね。

 どんな感じかしら。」

武雄とコノハがヒルダの下に行く。

「料理長!こちらが焼きあがるようです!」

「ちょーっと待ってくれ、夕食の最終確認中だ。

 俺が行くまで出すなよ!」

「じゃ、私は手が空いたからこっちに行こうっと。」

「「お前はこっちを手伝え!」」

「さっさと終わらせるよ!」

料理人達がアップルパイ目当てで夕食の準備が高速化するのだった。

・・

フレデリックは、厨房にもう少しの所に来ていた。

「「おおおおお。」」

どよめきが厨房から聞こえてきた。

「今回も間に合ったようですね。」

フレデリックは厨房に入って行く。

「あ、フレデリックさん。お疲れ様です。」

武雄がフレデリックを見つけ声をかける。

「はい、皆さん、お疲れ様です。」

「試作が丁度、出来ましたよ。」

と、厨房の調理台の上にこんがりと焼けたアップルパイがある。

「ふむ・・・リンゴを使ったと聞いているのでリンゴが入っているのでしょうが。

 何も言われないと何が入っているかわからないですね。」

フレデリックが素直な感想を言う。

「まぁそうでしょうね。

 ヒルダ。」

「はい?」

ヒルダが武雄に呼ばれた意味がわからず聞き返してくる。

「取り分けてください。」

「私で良いのですか?」

「ええ、これがヒルダの発想した物の一端ですよ。

 皆に取り分けて皆で食べましょう。」

「はい!では。」

ヒルダが包丁を持ってパイに刺すと。

サクッ

「!?・・・キ・・キタミザト様!サクッてなりました!サクッて!」

ヒルダが驚いた顔を武雄に向ける。

「ええ、でしょうね。

 そういう風に作ったんですから。」

武雄が笑いながら言う。

「そ・・・そうですけど!

 え?なんで?・・・なんでサクッてなるの!???」

ヒルダは笑っていながらも混乱しながら取り分けていく。

その様子を見て他の面々もが笑顔になる。

「タケオ、ありがとう。」

料理長がコソッと武雄に言う。

「いえいえ、さらに難しい課題を出してしまったかもしれませんが。

 家に帰ったら大変そうです。」

「あぁ、だが良い勉強になっただろう。

 もちろん俺にも良い勉強になったぞ。」

「その辺は試食しながら聞きましょう。」

武雄達が試食に臨むのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] さくっ!てなりました。 そう、そうなんですよね。あの感覚を味わっちゃうと男でもスイーツにはまっちゃいますよねぇ笑
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