第1604話 作業開始。(パイ生地とシュー生地。)
武雄とヒルダ、料理人達はまず小麦粉、塩、バターをボウルに入れて手で擦り合わせ、粒が小さくなったら大さじ2〜3の水を入れ1塊を作り、伸ばす→半分に折る→伸ばすの工程をしていた。
伸ばし棒はないので、似たような棒(煮沸消毒済み)を使って生地に薄生地を乗せ、ギュッギュッと上から押し込む感じで伸ばしている。
「・・・意外と腰使うんですね。」
ヒルダが一生懸命に一連の工程をしている。
「・・・そば打ちに似ている気がします。」
隣で作業をしている武雄がボソッと呟く。
「あ~、似ているかもね。
でもそばは丸める際にもっと大変だからね。」
「工程が似ているだけですね。」
武雄がそう言いながら畳んでは伸ばし、畳んでは伸ばしをしている。
「これは結構大変ですね。」
「こういうやり方もあるんだなぁ。」
「ほんとここに居ると勉強になる事ばかりだ。」
今日の食事会の方で手の空いた料理人達も参加しているが、各々に考えながらしている。
「ん~・・・あと5回くらいにしようか。
はい!皆!あと5回繰り返し!」
「「「「「はい!」」」」」
皆が返事をする。
・・
・
「うん、生地も良い感じね、色も良いし。
皿の大きさはこれ、1人分のグラタン用の皿を使います。
ちょうど今作っているのは2人分になる予定よ。
さてまずは伸ばして貰った生地を半分にしてね。
そこから蓋を作る部分を除いた残りの2/3程使いますからね。
まずは小分けに切って。」
「「「「「はい!」」」」」
皆がグラタン皿を見ながら小分けにする。
「こっちの大きいのをまずグラタン皿に敷くのですが。
ここで注意点!
溶かしバターを用意し、軽く皿の内側に塗ってください。
少量で良いわよ。
溶かしバターは回すから皆使いまわしね。」
「「「「「・・・」」」」」
皆が黙々と作業をする。
「さて、ここで一旦、別作業をしましょう。
中に入れる具材の作成よ!
今回はリンゴ3個使います。
1皿にすれば1.5個ね。
まずは皮をむいて、芯部分の種とかを除いて8等分に。
その後1㎝程度幅に小分けに切ってね。
それをフライパンに入れてリンゴジャムと砂糖140g、バターを少々入れ、リンゴが透き通るまで炒めてね。
砂糖だから火傷に注意!
あとヒルダの分は誰かと一緒にやって。」
「「はい!わかりました!」」
スイーツ担当ともう1人が皆のリンゴを集めてフライパンで調理を始める。
ヒルダは後ろからその工程を眺めるのだった。
「さて、タケオ、シュー生地を作りましょう。」
武雄と残る料理人1人の下にコノハがやってくる
「そうですね。
その為に私は1皿分しか切っていないんですよ。」
「まぁこの方法は邪道と言えば邪道よね。
本来はシュー生地専用でやり方を教えるべきなんだけど。
今回はパイ生地からの転用方法よ。
と言っても上手くいくかはちょっとわからないけど・・・実作業は料理人にさせないとね。
タケオは湯煎の温度維持をお願い。」
「わかりました。
温めながらとなると・・・大き目のボウルに外から小さいファイアで温め続けますね。」
「それで良いわ。
まずはパイ生地を細かく切ってそこにバターを15g投入。
湯煎をしながらなじむまでよく混ぜる。
混ざって来たら溶き卵を入れて緩くするからね。」
とコノハが説明している時に調理人が小さめのボウルと大き目のボウルを用意する。
「パイ生地細かく切りました。
バターを入れて・・・キタミザト様、お願いします。」
「はい、お湯を入れます。」
武雄が指示通り熱めのお湯を入れるのだった。
・・
・
「キタミザト様、何しているんですか?」
武雄と料理人が違う事をしているのをヒルダが見つけ聞いてくる。
「ん?私達はもう1品作っているんですよ。
さっきのパイ生地を更に柔らかくしているんです。」
「いつのまに・・・トロッとしていますね。」
「ええ、これがもう1つの生地になるんですよ。」
「へぇ~・・・わかりません。
あ、リンゴの方はもうすぐ出来そうです。」
「コノハ、あっちの方の確認を。」
「よし!任された。
タケオ、生地をへらで持ち上げた際にゆっくりと落ちるくらいの粘度で良いからね。
シャバシャバじゃダメなのよ。」
コノハがそう言い残しリンゴの出来具合を見に行く。
「・・・ちょっと固いですかね。
追加しましょう。」
料理人がそう言って溶き卵を少し追加し捏ねるのだった。
・・
・
「はーい、アップルパイに戻るわよ。
まずはさっき皿に生地を敷きましたが。
この上に満遍なく具を入れてください。」
「「「「・・・」」」」
ヒルダと料理人達が作業をしている。
「入れたかな?
この上にさっき避けて置いたパイ生地の残りを被せて蓋をします。
縁には溶き卵を塗ってから蓋をして縁をフォークか何かで潰すようにくっつけましょう。
蓋して~。」
「「「「・・・」」」」
黙々と作業をする。
「で、この上に溶き卵を塗ります。」
「溶き卵を塗る!?」
ヒルダが驚く。
「そ!塗るのよ!満遍なく!
塗ったら中央部分に切れ込み入れてね。
中の具材の蒸気で膨らんじゃうから。
これで完成よ!」
「はぁ・・・出来た。」
ヒルダが中央に切れ込みを入れて呟く。
「お!良い感じね。
他の人はどうかな~?」
コノハが他の料理人の出来栄えを見に行く。
「うん、問題なさそうね。
料理長!焼きたい!」
「窯は空いているぞ。」
「よっしゃ!焼くよ~!」
アップルパイ作りの大詰めです。
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