第1601話 喫茶店での昼食。(ヒルダの悩み。)
11時ちょっと過ぎの1階の喫茶店。
「いただきます。」
「「いただきます!」」
武雄の掛け声で研究室所属の皆が一斉に食べ始める。
今日の日替わりは牛乳パンと鶏肉のトマト煮、サラダ、スープ。
「・・・いや、皆そんなに急いで食べなくても・・・」
武雄が乗り遅れていた。
「所長、これ美味しいですね!
パンもほのかに牛乳の味がする。
美味しいなぁ。」
「温かいパンがこんなにか。
これは良いな!」
「鶏肉も美味しい!」
「スープは相変わらず美味しい・・・ブイヨンじゃないというんだから不思議だ。」
皆が楽しそうに昼食を取っている。
文官達も客として入ってきているが、その内の3人が武雄に会釈して通っていく。
「・・・」
武雄も軽くその場で会釈する。
「・・・所長、どうしましたか?」
ブルックが聞いてくる。
「うん?あぁエルヴィス家の経済局と整備局と環境局の局長が入って来たのでね。」
「ぶっ!?・・・大物じゃないですか。」
ブルックが驚いている。
「いや・・・まぁここはエルヴィス家の職員達の福利厚生の一環も兼ねた喫茶店ですからね。
来てもおかしくないでしょう。」
「それはそうですが・・・まだ11時ですよ?
早くないですか?」
「そう言うのなら私達も早いんですけどね。」
「今日の夕方からエルヴィス伯爵邸での会食じゃないですか。
早めに食べてお腹を空かせておかないといけないですからね!」
ブルックの目が煌めいている。
「・・・明日の事も考えてね。」
「もちろんですよ。
で、局長ならこんな早くなくても良かったのでは?」
「暇なんでしょう?」
「いや、絶対に違いますよ!
経済局、整備局、環境局とくれば所長が携わっている物ばかりじゃないですか。」
「・・・
ああ!」
武雄が首を傾げるが今気が付いたかのように驚く。
「所長・・・大丈夫なんですか?
良好な関係が結べているのですか?」
「大丈夫ですよ。
今の所問題はないと思っています。
何かしら問題があれば夕食後のティータイムで報告されますからね。
あ~・・・でも王都からの街道整備の依頼が来たから人工湖の方の着工を調整すると言っていましたか。
それにウスターソース関連で南町で新たに村が作られるという話もありますし。
まぁ人工湖はさらに遅れるでしょうけど実質4年後の稼働なんですし、じっくりと検討する時間が出来たと思って焦らなくても良いでしょうね。」
武雄が食事を再開する。
「政策に素人の私でも大事業が目白押しというのはわかりました。
・・・武官で良かったぁ。」
ブルックがスープを飲みながら言う。
「現在進行形で言うなら領内の話だと養鶏場というこの鶏肉と卵の量産計画があるのでそっちでも大変でしょうけど・・・
まぁ皆さんの顔を見れば鶏肉でも美味しく食べて貰えるとわかっているから上手くはいくでしょうね。」
「鶏肉を量産化ですか。
肉が安くなるのですね。」
マイヤーが聞いてくる。
「の予定ですよ。
それと卵の普及はマヨネーズにも関わるのでね。
上手く行って欲しい物です。」
「「マヨネーズ!」」
アニータとミルコが反応する。
「ん?どうしましたか?」
武雄が聞く。
「所長!そういえば今日からマヨネーズの販売ではなかったですか!?」
「ええ、開店前に来た時に入り口の棚にそれらし」
「「見てきます!」」
アニータとミルコが席を離れる。
「ん~・・・ん?ブルックさん行かないの?」
武雄がブルックに聞く。
「わ・・・私は大人ですよ?
食事中に席を立つなど・・・」
ブルックがプルプル震えながら言う。
「「完売していました・・・」」
2人がすぐに戻ってくる。
「そのうち多くなりますよ。
とりあえず食べなさい。」
「「はーい。」」
アニータとミルコが少しがっかりしながら食事を再開させる。
「キタミザト様、ダンディ茶をお持ちしました。」
メイド姿の料理長の娘のヒルダがやってくる。
「はい、ありがとう。
どう?調子は?」
「配膳って大変ですね。
あ、それとキタミザト様、作ってみたいお菓子があるのですが。」
「お、何か考え付きましたか。
失敗しているのですね?」
「はい、お母さんと一緒に作ったのですが・・・どうも思った感じと違うのです。」
「ん~・・・ちなみに何を?」
「リンゴジャムをパン生地で包んで焼いたんですよ。」
「あら、美味しそう。」
ブルックが呟く。
「・・・ん~・・・それジャムパンでしょうからね・・・
ヒルダは何を作りたいのですか?」
「サクサクっとしたビスケットにジャムが入っていたらと思って。
ビスケットでも試したんですが思ったよりも固すぎてしまって、で、パンでしてみたらどうも違って。」
「あ~・・・なるほど。
ならヒルダ、今日の仕事終わりにエルヴィス家の厨房に集合ですね。
私も時間になったら戻りますので作ってみましょう。」
「はい!わかりました!
では!仕事に戻ります!」
ヒルダが嬉しそうに頷き去っていく。
「・・・所長、今の子は?」
「料理長の娘さんのヒルダです、彼女の発想は素晴らしいですよ。
ちなみに彼女の許可がないとエルヴィス家以外で出せない料理が1つあります。
さらに前回の陛下のお忍びの際に作り、大変好評を得ています。」
「げっ・・・あんなに小さいのに・・・料理の天才ですか?」
「さぁ?ですが彼女の発想は豊かなのは確かですよ。
さーって・・・はぁ・・・これでヒルダの許可を貰わないといけない食べ物が増えそうですね。」
「え?・・・所長、もう考えているのですか?」
「ええ、完成形はわかっていますけど・・・今日、出来るかな・・・
あ、コノハの助力頼むか。
パナ。」
「はい、コノハを通じてアリスにヒルダが行く事を伝えておきます。
タケオ、何を作るのですか?」
チビパナが武雄の肩に現れ聞いてくる。
「アップルパイとシュークリーム擬きです。
ジャムと生クリームを使いたいので足らなかったら買って帰るから確認してと伝えてください。」
「了解しました。」
パナが消える。
「・・・所長、それ食べれますか?」
「上手く出来たらね。」
「うふ♪今日の夕食が楽しみです♪」
ブルックが満面の笑みをするのだった。
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