第1600話 雑貨屋での打ち合わせと喫茶店での雑談。(嵐の前のなんとやら。)
表通りの雑貨屋にて
「これを・・・4つ・・・ですか。
製作をされるのでしたら納期が1か月近くかかってしまいます・・・」
店長がカウンターで汗をかきながら答える。
「はい、このタイプの卓上スタンドを4つです。
在庫はありますか?」
トレーシーがカウンターで店長と話をしている。
「当店では1つです。
この街でも探せば・・・何とかあるかもしれません。
ですが、卓上スタンドは手作業で作る為、完全に同じのはないと思われます。」
「ん~・・・調べるのにどのくらいかかりますか?」
鈴音が聞いてくる。
「そうですね・・・」
店長が考え始める。
「スズネさん、どちらにしても研究室の区分けはこれから作りますから逸らなくても平気ですよ。」
「でも早めに見たいですよね。」
「気持ちはわかりますよ。
ですが、すぐに集めるなんて無理ですよ。」
「武雄さんに『買ってきます』と意気込んでしまいましたし。」
「所長は気にされないですよ、たぶん。」
トレーシーと鈴音が話している。
ヴィクターは後ろで待機して成り行きを見守っている。
「・・・研究室・・・所長・・・研究所!?
あ・・・あの・・・貴方方は・・・キタミザト様の?」
「ええ、第二研究所の者ですが。」
店長が恐る恐る聞いてくるが、トレーシーが普通に答える。
「そ・・・そうでしたか。
あ、次の鐘までには探せるとは思いますよ?」
「え!?早いですね!?」
鈴音が驚く。
「キタミザト様にはご贔屓にしていただいていますし、仲間内に聞けばあるなしがわかりますからね。
それに卓上スタンドは基本一般の方は買われませんので。」
「まぁそうですよね。」
トレーシーが苦笑する。
「鐘1つですか・・・今日は夕方に予定もありますし・・・
トレーシーさん、調べて貰っておいて後日各店を見に行きますか?」
「そうですね。
今すぐ欲しいという訳ではないですし、明日までにどの店にあるのかの確認だけして貰った方が良いでしょう。
それでお願い出来ますか?」
「わかりました。
なら、明日の13時、あ・・・6時課の鐘以降でお願いします。
それまでにリストを用意しておきます。」
「店長さん、その言い方だと懐中時計ですか?」
トレーシーが聞いてくる。
「ええ、やっと手に入りました。
ちなみにお客様は?」
「私達は全員所持していますよ。
そもそも所長が誘致した工房の物ですから言えば必ずではありませんが、割と優先的に渡されます。」
「それは羨ましい。
あの工房ももっと作り出せる日が来るんですかね。」
「あ~・・・人員を増やすような事を言っていましたよ。」
鈴音が答える。
「それは良い情報ですね。
出回る量が増える前に皆に見せびらかさないといけません。」
「ははは、あまりやりすぎると不興を買いますよ。」
「チラリと見せる分には問題ないでしょう。
その優越感はなんとも言えません。」
「懐中時計もあまり早く皆さんが買えるようにしなくても良いんですかね。」
店長の言葉に鈴音が微妙な顔をさせるのだった。
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研究所の1階 喫茶店。
試験小隊詰め所側の扉から武雄が入ってくる。
「いらっしゃいませ~♪」
メイド姿のフローラが出迎える。
「・・・え?今日からなの?」
武雄が少し驚いたように言う。
「はい、日替わりで私、エンマ、ボーナの順です。
キタミザト様、席にご案内します。」
「え・・・ええ。」
武雄が「知り合いの姪っ子がアルバイトしている店に偶然来てしまった感があるね」と予想外の出来事に驚いている。
「注文はどうされますか?」
席に着いた武雄にフローラが聞いてくる。
「昼食はまたあとで来ますけど、ダンディ茶をください。
ポットで作ってくれれば所長室に戻ります。」
「わかりました。
厨房に言ってきます。」
フローラが武雄の下を離れる。
「・・・人来るのかなぁ。」
武雄が店内を見ながら呟く。
「お、タケオ、来たか。」
エルヴィス家の料理長が武雄の席にやってくる。
「料理長、今日はこっちに?」
「ああ初日だからな。
今日の入りを見て明日からは昼に手伝いと監督に来る予定だ。
今日の試験小隊の家族との準備も問題なくしているぞ。」
「ありがとうございます。」
武雄が頭を下げる。
「今日から文官達にお披露目ですよね。」
「本当は昨日だったんだがな。
ちょっと食材の搬入予定が狂ってな。
今日からだ、昨日は皆の動きの最終確認となった訳だが・・・まぁ何とかなるだろう。」
「食券の売り上げは聞きましたか?」
「聞いたな。
結構な量が売れたそうだな。」
「そう言えば朝もやると言っていませんでしたか?
今日は朝は開いていませんでしたよ。」
「結局、最初の2週間は文官達の昼のみとなったよ。
慣れていないだろうからという配慮からと朝職場近くで食べる事に慣れていないそうだ。」
「どちらにしても慣らしが必要なのですね。」
「配膳する俺らも客である文官達もだ。
今日の日替わりメニューは鶏のトマト煮だな。
タケオ達も食べに来るんだろう?」
「ええ、ヴィクター達が戻ったら食べに来ます。」
「ああ、忙しくなる前に来てくれ。」
「わかりました。」
「キタミザト様、ダンディ茶、ポットに入れましたよ。」
フローラがポットを持ってやってくる。
「ええ、ありがとうございます。
フローラも初日だから気を付けて。」
「はい、わかりました。」
「おう、タケオ、あとで。」
「はい、では~。」
武雄が席を立ち、ポットを持って喫茶店を出て行くのだった。
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