第1592話 173日目 試験小隊の特別訓練。1(ほふく前進訓練開催間近。)
朝食後の9時半頃の試験小隊の訓練場横の小道の入り口。
武雄を筆頭に全研究室メンバーが揃っていた。
「さ!やりますよ。」
「「はーい。」」
「「「・・・はい。」」」
一部を除き元気がない。
「・・・やりますよ!」
「「「はい!」」」
全員が返事をする。
「さて、改めて今回の訓練の説明です。」
武雄がアーキンに貰った紙を見ながら説明を始める。
「今回はほふく前進訓練となります。
想定としては敵地情報を入手し追手に接近され山中の移動を実施するという事ですね。
小道の横にある体が入る分だけの窪みがありますので、出来る限り低姿勢で進む事を推奨します。
やり方としてはこうです。」
武雄はその場で腹ばいになり自衛隊で言う所の第四ほふくの姿勢を取る。
「で・・・これで移動します。」
武雄がゆっくりと蹴り上げながら前へ進む。
「「「・・・」」」
皆が真面目に聞いている。
「タケオさん、なんだか情けない恰好ですけど。」
エリカがいつぞやのアリスと同じ感想を述べる。
「自分の生命がかかっているのに情けないも何もないですよ。
それに見つからない事を重視するなら低い姿勢をするのは当たり前です。
私達は最前線で先行偵察なんです、やれることは何でもしなくてはいけませんよ。」
エリカの言葉に武雄が立ちながら答える。
横に居るアリスは「私も同じ事言われた」と苦笑している。
「まぁ・・・そうですね。」
エリカがとりあえず納得したのか頷く。
「説明の続きです。
ただやるだけでは戦場の臨場感がないので、小道周囲への魔法での攻撃を実施します。
担当者はアーキンさん、ブルックさん、アニータ、ミルコの4名と・・・あれ?マイヤーさんこっちなの?」
「はい、私は実動部隊ではないので今回はこちらでアーキン達の補助をする事にします。」
マイヤーがそういうと試験小隊の面々が恨めしい目をマイヤーに向けている。
「そうですか。
いつか必要になる事もあるかもしれないので時間が空いた時にでも真似事でもしておく事を推奨します。」
「わかりました。」
マイヤーが頷く。
「魔法攻撃についてはさっき言ったように周辺のみになります。
とは言っても土やらが舞い上がる事もありますので砂等が飛んでくる事もあります。
少なくとも窪み内に居れば怪我の心配は低いですが、万が一もあるので緊張を切らさないようにしてください。
わかりましたか?」
「「「はいっ!」」」
「では、アーキンさん達は前回同様の事をするので訓練場の下見と試射を、マイヤーさんはアーキンさん達の補助なので内容に不備がないか客観的に判断をしてください。」
「「了解しました。」」
アーキンとマイヤーが返事をする。
「試験小隊の面々は私と小道の入り口に行ってほふく前進の練習をしましょう。」
「「「はいっ!」」」
武雄達が小道の入り口に向かうのだった。
・・
・
小道の入り口付近にて。
ほふく前進の練習は3人1組で開始線から20mくらいあるかないかの所を順次させている。
皆が真面目に訓練している・・・のだが。
「ほら!また上がってる!地面にお腹を付ける!やりなおし!」
「あああぁぁぁぁ・・・」
武雄がパメラの両足を脇に抱えて後ろに引っ張ってくる。
「ん?ブレアさんも!お腹も上がってる!やりなおし!」
「ああぁぁ・・・」
武雄は容赦なく皆を後ろに引っ張ってやり直しをさせている。
「ほら!進む!敵の情報を持ち帰るのが役目でしょう!
貴方方が捕まれば全軍に関わるんですよ!
ほら!進む!」
武雄が催促してくる。
「うぅぅ・・・キツイ・・・」
パメラが歯を食いしばってほふく前進をしている。
「これは・・・なかなかキツイな。」
「全身の筋力を使うからまたとないメニューになったな。」
「これは日常とまでは言わなくても定期的にした方が良いな。」
一旦終わった組が休憩をしながら今している組を見ているのだった。
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一方の攻撃組はというと。
「窪みの確認終了!
木の根っこや石は排除しておいたわ。」
「了解。」
「所長がやった時と変わらずに残っていたわ。」
「なるほどなぁ、あの窪みを通ってあっちの広間までか・・・長いな。」
「ええ、前回は4人がかりで所長1人相手にアニータとミルコは全力に近い魔力を使いましたからね。
今回は7名ですから・・・どう配分したものか・・・」
「そこは魔法ポーションをご用意をいたしました。」
「「!?」」
全員が声の方を向くとヴィクターとアスセナが居た。
「ポ・・・ポーションあったんですか?」
「はい、皆さまが研究所を出た後に施錠し、買いに行っておりました。
一応、38本を用意出来ました。」
「魔法ポーションは結構お高かったのでは?」
ブルックが聞いてくる。
「いえ、主がポンと金貨10枚出しましたので、買い占めてまいりました。
昨日結構売れたそうで。
残りは主に返却いたしますが。」
「大演習で在庫がなかったんですね。
38本かぁ・・・アニータとミルコには1人終わるごとに2本ずつ渡した方が良いわよね。」
「そうだな。
最初は別として6人分として24本か。
俺とブルックが1人終わってから1本ずつ飲むか。」
「そうね。
予備は終わった後にアニータとミルコに与えましょう。」
アーキンとブルックが話をしている。
「ん~・・・これはこっち側も精神力の鍛錬になりそうだな。」
マイヤーがアーキン達を見ながら呟くのだった。
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