第1589話 魔王国の進捗。(特別出張が入ったようです。)
魔王国王城の大会議室。
「皆!戻ったぞー!」
扉をバーンと開けて、ヴァレーリを先頭に第2軍指揮官や幹部達が入ってくる。
第1、第3、第4、第5軍の軍指揮官他、幹部達がすぐに席を立ち最敬礼をして出迎える。
「いやー、すまなかったな。
ブリアーニ王国の滞在が延びてしまってな。
何をしていたかと言うと向こうの民と話し合っていた。」
「ブリアーニ王国の民とですか?」
第1軍指揮官のフレッディが聞いてくる。
「ああ村長達や文官達だな。
まだ内々での話ではあるが・・・領地替えに関してだ。
結論から言うと村長達は意外と乗り気というのがわかった。
まぁ・・・子供の誘拐が頻発しているみたいでな・・・不安の方が大きいようだ。」
「それはそうでしょう。
・・・予定の変更はないと考えてよろしいですね。」
第3軍指揮官が聞いてくる。
「ああ、早くも遅くもしない。
我としては当初の発案通りだ。
工程の調整はどうなっている。」
ヴァレーリが幹部達を見る。
「はっ!第1軍より報告します。
現在8月のアズパール王国ゴドウィン伯爵領にて慣例の戦争を実施する為にパーニ伯爵を頭にファロン子爵とベッリ男爵とで手紙等による打ち合わせを実施しているとの報告が来ております。」
第1軍の幹部の1人が立ち上がり報告を始める。
「うむ、それで?」
「8月の慣例の戦争時において各王軍はこれに呼応し、王城を出立。
慣例の戦争の観戦を実施します。」
「・・・ん?・・・うん。」
ヴァレーリが「いや、その規模で観戦したらアズパール王国に対して不必要な圧力になるんじゃ」と思っている。
「慣例の戦争を9月までに終結させ、終結と同時に各軍は南下を開始。
一旦、ブリアーニ王国に蟲退治の為の招集という名目で駐屯し、最終確認を実施。
10月初めにデムーロ国に宣戦布告、全軍同時に攻め入ります。
開戦と終結までは5日を予定しております。
終結後は即時パーニ伯爵がデムーロ国に入国し同地を魔王国に統合を宣言、統治を開始して貰います。
パーニ伯爵領にファロン子爵、ファロン子爵領にブリアーニ王国を異動して頂きます。」
「・・・まぁ細かい所はこれから詰めるだろうが、概ねその工程で動こう。
だが・・・アズパール王国との戦争の観戦をこの規模でとなると流石に向こうに悪いと思うんだがな。」
「ですが、王軍内でも慣例の戦争を見た事がない者もおりますし研修にはもってこいなんです。
それに一応は敵対国ですのでこちらの総力を見せておくことも必要かと考えました。」
「ん~・・・いや・・・言っている事は凄く真っ当だし、魔王国としてもそれはやった方が良いという判断になるのもわかる。
だが、向こうの立場になって考えるとな。
いきなり皆がパーニ達の後ろに現れると偶発的な戦闘に発展する可能性も高いと思うんだ。
破れかぶれに突っ込んで来られても困るしなぁ。」
ヴァレーリが考えながら言う。
「はっ!確かに。
でしたら観戦する規模を少なくしましょうか。
新人達と希望者のみとしておき、本隊は観戦するのではなく。ブリアーニ王国の蟲退治の為の招集という名目は変えずに早めにブリアーニ王国に駐屯させて頂くという事になりますが。」
「実際に部隊教練として蟲相手に実地訓練をしてくれても構わないがな。
まぁ日程等はブリアーニ王国と話合いを実施してくれ。」
「はっ!了解しました。
工程は以上です。」
第1軍の幹部が座る。
「以上が現状の工程だ。
各軍は密なる会議を実施し、抜けの無いよう準備を始めろ。」
「「「はっ!」」」
ヴァレーリの言葉に皆が返事をする。
「さてと・・・第1軍指揮官。
取り調べはどうなっている?」
「はっ・・・陛下や第2軍、第4軍方が入手したリスト以上の積み荷のリストはわかっておりません。
現在は積み荷を確保する者達のアジトをリスト化しております。」
「吐いたのか?」
「ええ、割と協力的に情報を教えて頂きました。
現在第3軍が裏を取りに行っていますので正式な報告書は第3軍の報告を待ってからいたします。」
「そうか。
・・・今回の旅での疲れもあるから第1軍との訓練は止めるか。」
「ゆっくりお休みください。」
フレッディが安堵のため息を皆にわからないようにつくのだった。
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デムーロ国の奴隷船もとい輸送船船着き場。
「・・・乗船か・・・」
イグノトは自分が乗る船を見上げながら呟く。
「いや~、俺らも乗船許可が下りて良かった。」
「まったくまったく。」
「イグノトさん、様様ですよ。」
護衛3人が許可書を見ながら言う。
「・・・本当に来るんですか?
人間至上主義国家群ですよ?」
イグノトが呆れながら言う。
「見聞を広めたいのですよね。」
「問題ないですよ、旅がしたいんですよ。」
「ウィリプ連合国からカトランダ帝国、アズパール王国を通って魔王国。
1か月はかかる旅、良いね~。」
「これこそ冒険者の醍醐味だね。」
「冒険者組合にも寄ってその辺の事は連絡済みだし、向こうも問題ないと言ってくれていますから。
奴隷船内で売られない為に向こうの冒険者組合員が出迎えてくれると言ってくれているし。」
「人間の国に行くの初めてだよ。」
「何か面白い事あるかな?」
「楽しみだなぁ。」
3人がお気楽で答えるのだった。
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