第1588話 農業の話。(現状問題なし。)
皆が揃って。
「ぎょうのざぎょうでばがったのはね。」
ウカが武雄達が持ってきたお菓子を頬張りながら話す。
「いや、うーちゃん、口の中の物を飲んでから話しなさいよ。
誰も急いでないし。」
コノハが呆れながら言う。
「んんっ・・・ズズーッ・・・はぁ。
今日の作業でわかったのはこの土地は問題ないという事。
地方都市内にある事を考慮するなら結構良いと判断するわ。
養分もちょっと少ない感じはするけど、今のままでも陸稲は問題ない。」
ウカがお菓子をお茶で流し込み、そう言ってくる。
「うーちゃん、土の養分までわかるの?」
「わからないわよ。
でも雑草の根の太さ、長さ等を見ればその土地の養分はわかるわよ。
今年の米の刈り取り後にちょっと土壌改良しないといけないかも。
緑スライムの水性肥料や腐葉土や残飯と合わせての高性能肥料についてはエンマ達から聞いたわ。
これは現状の様子を見て行く事になるでしょうね。」
「そう・・・ね。」
コノハが難しい顔をさせて頷く。
「うん、エンマ達の方でやる所とやらない所も分けているからね。
まずは与える事によって成長具合がどうかわるのかを記録していく作業が必要よ。
領内全域にはすぐにとはいかないかもね。」
「そうですか。」
アリスが少しがっかりしながら言う。
「まずは試験よ。
ドナート達に聞いたけどエルヴィス家の方も実施するみたいね。
総合的に与えた際の育成状況、収穫物の安全性の確認をしないと市販は出来ないでしょうからね。
まぁ野生のスライムという訳でなく、ハマカゼ達エルダームーンスライムが協力してとなると安全性は高いと思うけどね。
最低でも秋以降にならないと許可は下りないかな。
まずは野菜関係から始まって小麦や米と主要穀物に使って行けると思われるわ。」
ウカがアリスに説明する。
「すぐには実施出来ませんか・・・」
「その様子からして食の確保は悲願なんだろうけど、安全は確立しないといけないからね。
それも今回はスライムと言えど魔物産の肥料を使うのだから時間はかかるわよ。
他に肥料をというなら既存の物を組み合わせるとか・・・堆肥や牛糞や鶏糞やらが一般的でしょうね。
ただこの時代は大量に確保するというのは難しいはずよ。
領内全てのという事になるとそこも課題かもね。」
「あ、今後各町で養鶏場を実施するんですよ。」
「ふむ、なら鶏糞は出回りそうね。
どんな肥料も与えすぎというのはダメだから徐々に実施していくしかないかな。
あとは各々の農家で試行錯誤して行って貰うしか手はないし。」
「そうですかぁ・・・」
アリスが気落ちしている。
「アリス、とりあえず現状よりかは悪くならないわよ。
収穫だって1年2年とか短期では考えない物だし・・・将来性はバッチシなんだから気軽に待ってなさいよ。」
「はい。」
アリスがゆっくりと頷く。
「品質改良はトマトとジャガイモだって、依頼内容的には収穫量の拡大だそうよ。
コノちゃん、これで良いの?」
「私は何もその辺は言ってないわよ。
エルヴィス家の文官達が決めたのならそれが一番じゃないの?
消費量も多いから多少多くなっても値崩れしないだろうしね。
出来そう?」
「そこは掛け合わせの類だからね。
数年単位で傾向を見ていく必要があるわね。
もっとも早く成果を出すなら突然変異種を作るという手があるけど・・・育成環境を変化させるのは結構大変だから無理か。
あとは肥料が良いとジャガイモの収穫量が増えるという話もあるのよね。
でも肥料が良すぎると今度は害虫被害も増えるという話もあるし・・・ん~・・・何か対策があれば肥料が出回った際に注意喚起が出来るわよね。
与える肥料の量を変える実験も必要かもね。」
ウカが悩む。
「農業って職業もかなり考えながらするのですね。」
エリカがウカを見ながら呟く。
「そうですよ。
年中無休で1日中なにかあれば対応する。
気候に左右され、土壌の管理もする。
農業従事者には頭が下がりますよ。
だから食べ物に関しては値下げを強要しない。
市場価値があるので市場性に任せておくのが一番ですよ。
急激に値が下がるようなら補償をしてあげる程度でしょう。」
「値が下がるかぁ。
タケオさん的には下がると思いますか?」
「特には。
領内の食生活全体が変化したなら高くなる品目と下がる品目があるでしょうけど。
現状を見るにそこまで変わるような事は今の所考えられないですし。」
「米は?」
「主食にならない程度の販売を目指していますし、そもそも自給率が低いので米が人気になっても小麦の価格が下がるとは言い辛いですね。
まぁ輸入量という所では若干変わるかもしれませんので、多少周りの地域の価格が下がる恐れはありますが・・・それはその地の領主と文官が考えれば良いんですよ。
エルヴィス家の考える事ではありません。」
「私はウィリアム殿下領を主眼に置くと・・・
どうなんだろう?
当分は輸入が主になりそうですね。
価格上がっちゃうかな?」
「そうなのですか?」
エリカの考えにアリスが驚きながら言う。
「ええ、今まで3万人規模ではなかったところに領地を作るから当面は小麦も野菜も輸入するしかないと思うのですよ。
王都や周辺領から買い入れかなぁ。
予算どう見ているんだろう?」
「タ・・・タケオ様、うちは大丈夫でしょうか?」
「輸入穀物の価格上昇かぁ・・・
ま、たぶんフレデリックさん達が考えていますよ。
ウィリアム殿下達が異動になるのはわかっているのです。
そこからどのくらい上昇するか考えているでしょう。」
「戻ったら確認します。」
アリスが考えながら言うのだった。
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