第1587話 農機具の話。(脱穀機とな。)
「あ!キタミザト様!」
「アリス様!エリカさん!いらっしゃい!」
ジルダとニルデが玄関から入ってくる。
「お邪魔していますよ。
2人ともご苦労様です。」
「お疲れ様。」
「お疲れ様、農作業終わったの?」
武雄達が顔を向けて言う。
「うん、種まき終了!」
「とりあえず与えられた所は全部終わりました。」
「順調そうですね。
ウカとダキニはちゃんとしていますか?」
「タケオ、問題は起してないわ!」
チビダキニがニルデの肩に現れ不貞腐れながら言ってくる。
「・・・まだセーラー服なの?」
チビコノハがアリスの肩に乗り呆れながら言ってくる。
「楽なんだよね。
それにコノハと被るでしょ?」
「いや・・・被っても良いんだけど・・・まぁうーちゃんとだーちゃんがそう言うなら良いんだけどさ。
悪さしてないようで何より。」
「午前中のタケオとアリスを見たら悪戯する気にもならないわよ。
あれは異常よ!異常!」
チビダキニが武雄とアリスを指さしながら言う。
「ニルデちゃん、ジルダちゃん、お菓子買ってきたわよ。
エンマさんとフローラさんを呼んで来て一緒に食べなさい。」
アリスがニルデ達に優しく言う。
「あ!行ってくるー!」
ジルダが玄関に走っていく。
「アリス!綺麗だし皆に優しいし流石この領内で1番の令嬢ね!
タケオも良い女性を捕まえたわ~。」
ダキニが褒め始める。
「はぁ・・・いきなりおべっか使うんじゃないわよ。
掌クルクル回り過ぎよ。
それにアリスがそんな事でへそを曲げてお菓子をださないとかするわけないじゃない。
ちゃんとうーちゃんとだーちゃんの分もあるわよ。」
「ほんと?やった♪
ウカ、まだかなぁ~。」
ダキニが相方の到着を待ちわびるのだった。
「ボーナお母さん、今回の成果物がこれです。
試験で出来た外皮を取った状態の小麦です。」
武雄が試験から出来た外皮が取れた小麦が入った小さい小袋を出す。
「はい、ありがとうございます。
ん~・・・意外と言っては失礼かもしれませんが、意外と外皮が取れていますね。
これならふるい分けの工程が少なそうで便利ですね。」
ボーナが空いた皿に小袋の中身を出しながら吟味する。
「ここから石臼で粉にするが、工程が少ないというのは良いな。
購入するか?」
「一般家庭ではそこまではね。
レストランや酒場とかなら需要はありそうですね。
その辺はキタミザト様の胸の内でしょうか。」
ドナートとボーナが武雄に言ってくる。
「ふむふむ、なるほど、私達以外にも用途がありそうですか。
これはステノ技研とサテラ製作所で打ち合わせかな、一定数が出るならラインナップに並べそうだし。
あ、それと今後何か農機具が欲しいなら要望を出してくださいね。」
「農機具ですか?」
ドナートが言ってくる。
「ええ、米だと脱穀作業があるじゃないですか。
確か・・・釘よりも太い鉄の棒を備え横に10本程取付けてある角材に稲を通す器具があったと思うんですよ。」
「え?なんですかそれは?」
ドナートが聞いてくる。
「あれ?」
武雄が「ないの?」という顔をする。
「タケオ、それは千歯扱きと言うのよ。
乾燥させた稲を束ねて、稲穂を先にして刈った方を持ってね。
手元を釘部分に刺して引き抜くのが一般的ね。」
コノハが言ってくる。
「あ~、なるほど。
私も資料館や本でしか見た事ないんで名前まではわからないですけど・・・
稲を束ねて引き抜くかぁ・・・重労働だなぁ。
釘の部分回転させれば楽になるのかなぁ?
あ!ミシンの駆動部使えば楽ですよね。」
「それは・・・脱穀機の原型よ。
ちなみにミシンを組み込んでしまうと足踏式脱穀機って言うのよ。」
「ほぉ。
割と簡単に発想出来るものですよね。」
武雄が言う。
「タケオ、今の話だけで最低でも100年程度脱穀機の歴史が進んだわよ。」
コノハが呆れている。
「へぇ~。
まぁでも私や鈴音の経験はもっと先ですしね。」
武雄が気にしないという顔をする。
「そう言われるとそうだけどね。
ま、これ以降の技術はもっとかかるか。それよりタケオ、脱穀機作るの?
ベルテ一家は女性が多いからあると便利よ。」
コノハが聞いてくる。
「なら作ってみますかね。
ですけど、ベルテさん達用に作るのは問題ないですけど、何かに転用出来れば良いですよね。
出来れば1品物にはしたくないしなぁ。」
武雄が考える。
「あの・・・高価な物は・・・」
「ええ、費用がかさむのは・・・」
「あ、費用はこっちで持ちますから気にしなくて良いですよ。
収穫までには作らせますから待っててください。」
「「ええぇぇぇ・・・」」
ドナートとボーナが「これ以上期待されると困る」と顔で言っているのだった。
「「ただいまぁ~。」」
「タケオ、来ているんだってー?」
「戻ったー!」
エンマ達が帰ってくる。
「お邪魔していますよ。」
「「おかえり~。」」
武雄達がにこやかに出迎える。
「ほら!皆、手を洗ってらっしゃい。
お菓子はそれから。
あ、ニルデも洗いに行きなさい。」
「「はーい。」」
エンマ達が手洗いをしに行くのだった。
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