第1586話 動作試験後。(ステノ技研の反省会とベルテ一家での雑談。)
ステノ技研の食堂にて。
皆が先程の試運転の反省会をしていた。
「ふむ・・・結果としては風車の方は問題ないが、2段目の木臼への投入が少し難しいか。」
ブラッドリーが腕を組みながら言う。
「3割程度2段目の木臼に入らなかったの。」
「組み込む前は上手く行きましたよね?」
「装置に組み込む時に板の幅を変えたのが問題かな?」
「いや、それも組み込む前の試験では問題なかったよ。
木臼自体の個別の問題じゃないんじゃない?」
「となると装置自体、あれに組み込んだからとなるが・・・原因がわからないな。」
「なんだろうね。
図面見ながら考えるしかないか。」
「「そうだなぁ。」」
ステノ技研一同は先ほどの試験を総括しながら問題点を確認し始めるのだった。
ちなみに鈴音は今もだが試験機の起動時も特訓がされているのだった。
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ベルテ一家の家。
「ほぉ、玄米精製機の試験が始まったのですか。」
ドナートが武雄の横でお茶を飲みながら言う。
「あと半月か1か月もすれば1号機が出来るでしょう。」
「キタミザト様、試験機は上手く動いたのですよね?」
ボーナが聞いてくる。
「ええ、動きましたよ。」
「試験機をこの短期間で作ったのに納品までそこまで時間がかかるのですか?」
ボーナが再び聞いてくる。
「ええ、要所要所で不具合がありましたしね。
・・・まぁ精霊の仁王様が居るので最終的には仕上げてくるでしょうが、仁王様はすぐには解決策ださないでしょうしね。
そのぐらいは最低でもかかるでしょう。」
「??タケオ様、何か問題点ありましたか?」
「上手く小麦の殻が取れていましたよ?」
アリスとエリカが聞いてくる。
「いいえ、精製した中に外皮が取れていない物が混じっていましたし、後ろから見ていた感じでは木臼の所に上手く入っていない小麦が見受けられましたからね。
そこの改良をしてくるでしょう。」
「でもそこは誤差ではないのですか?
それに米の時は変わるかもしれませんし。
最終的なゴミと一緒に手作業で籾を取り除けば良いだけだと思うのですけど。」
アリスが首を傾げる。
「ははは、私達に取ってはそうでしょうけど、あそこは技術者集団ですよ。
完璧を求めていく工房なのです。
多分個別の試験では上手く行っていたからアリス達にも見せる気になったのでしょう。
結果はあの通り少し木臼を通らないで出てきてしまう物が発生。
今頃反省会でしょう。」
「そういうものですかね。」
「そういう物ですよ。
装置に組み込んだから問題が出て来るなんて何かしら装置を作る工程では普通に発生する事ですからね。
あって当たり前、なかったら逆に不安になるような事です。」
「「ふ~ん。」」
「キタミザト様が見た感じで原因はわかるのですか?」
「ん~・・・下に取り付けた風車でしょうかね。
多分上から下ってくる滑り板を短くして早い段階から風を当て籾殻や外皮を飛ばそうと考えたんじゃないんですかね。
その風が下から上に吹き抜けて小さい穴に入って少し巻き上げたと思いますね。」
「そうなのですか?」
「いや、私の想像です。
ですが、アリスやエリカさんも見たようにあの装置、密閉されていたでしょう?
本来は横に向けて吹かせる風が気を利かせて真下から当てたとします。
そうすると何割かは木臼の方に向かって流れますけど、抜け先が木臼や籾を投入する所しかない。
なので下からの風は本来スムーズに落ちてこないといけない籾殻や籾に当たり少し舞う可能性がある。
そこで軌道がズレ入らないといけない穴に入らないと・・・これが私の推測です。
まぁ実際はステノ技研の方々が考える事でしょうけどね。」
「教えて上げないのですか?」
エリカさんが聞いてくる。
「今の段階ではしませんね。
米の収穫は秋口ですしね。
それまでに解決しないのなら口を出すかもしれませんが、今は自らで考えていく事が必要でしょう。
技術者とはそういうものですからね。」
「解決策がありそうなのにですか?」
「技術者に限った話ではないですが、人は自らが経験した事には拘り、他人から聞いた事には懐疑的になる物です。
技術者はその傾向が強いとは思いますけどね。」
武雄が苦笑しながら言う。
「そうなのですか?
ステノ技研の方々はタケオ様の言う事は聞いていると思いますけど。」
アリスが聞いてくる。
「まぁ鈴音を擁していますからね。
私の考えも考えの1つであるという認識を前提に置いて自らの経験と照らし合わせてどちらが理に適っているか考える柔軟性は持っているでしょう。
それでも今までの経験を大事にするのは見ていてわかりますよ。
エリカさんだって王都に戻れば武官や文官相手に説明をしたりされたりする立場上、私の言っている意味は分かると思いますけど。」
「ええ、わかります。
卸売市場の説明なんかも文官、領民に事あるごとに説明していますからね。
自らが経験した事には拘るというのはわかります。
こちらも意固地にならずに相手の言い分を聞かないといけないというのも。」
「へぇ~、私はそういう経験はないですからね。
そういう経験はした方が良いんでしょうね。」
アリスが考えながら言う。
「ん~・・・経験はした方が良いとは私も思いますけど、知人があれを経験するのもなぁ・・・」
「気分の良い物ではないですしね。」
エリカと武雄がその面倒さをアリスに経験させるかどうか迷うのだった。
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