第1585話 ステノ技研は今日も試作。(さっそく出来た。)
ステノ技研の鈴音の部屋にて。
ヴァイオリンの音が聞こえていた。
「スズネ、そこはラタラタラーラタッタです。
最後のタッタは音が流れないようにしっかりと押さえなさい。」
「はい。」
「では、その1つ前から・・・さんはいっ。」
鈴音がペイトーの指導を受けていた。
鈴音は心の中で「どうしてこうなったんだろう」と思うが「的確な指導者が居てくれて助かった」とも思うのだった。
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1階のテイラーの魔法具商店。
「スズネさん、特訓ですね。
さっきから曲がすぐに止まります。」
「そうね・・・ペイトー達ってこうも音楽に熱くなるのね。
王城のパイディアーも曲を演奏するけど、自身がしているからあの教育の熱さは見た事がなかったわ。」
アリスとエリカがお茶を飲みながら鈴音の特訓の音を遠くに聞いている。
「スズネさん、夕方に気ままに弾いているのですけどね。
特訓されればまた違った感じになるのでしょう。」
テイラーが武雄の装備品をいじくりながら言ってくる。
「特訓というか、しっかりとした教えって大事なんでしょうね。
勉強と一緒かな?」
「コツコツと毎日の練習も必要でしょうね。
エリカさんはするのですか?」
「ん~・・・王都にはヴァイオリンが2挺しかないんでパイディアーとペイトーで終わりですよ。
領地異動してからとなると・・・私は本でも読みながらペイトーに弾いて貰った方が良いですかね。
アリス殿は?」
「私は学ぶ相手がいませんよ。
スズネさんは日中は研究所でしょうし、夕方からはご自身の練習もあるでしょうからお邪魔は出来ません。」
「そうかぁ、お互いに趣味がないですね。」
「ですね~。」
エリカとアリスが自身の趣味がない事に乾いた笑いをする。
「アリス、エリカ、玄米精製機の準備が出来たわよ。
奥に来て~。」
チビテトが奥から飛びながらテイラーの店にやってくる。
「え?本当に試運転するのですか?
皆さん、今日は徹夜だったのでしょう?」
アリスが少し驚きながら言ってくる。
「うん、何か軽く寝たから調子が良いとか言っているわよ。
ちょっと皆がハイテンションだけど気にしないでくれると嬉しいわ。」
テトが呆れた顔をさせながら言ってくる。
「では、私も行きますか。
ニオは皆に付いているのですね?」
テイラーがテトに聞く。
「ええ、パナにも今連絡入れたから直にタケオも来・・・え?タケオが猛ダッシュ???パナが全力援護???何やってるのよ???
アリス、エリカ、タケオすぐ来るみたいよ?」
テトが精霊間近距離意志疎通網を利用したようだが、驚きながら2人に言う。
「タケオ様の依頼ですし。」
「まぁタケオさんならね。」
アリスとエリカは特に驚きもせずに言い放つ。
「とりあえず、奥に来る?
今最終調整しているから。」
「「ええ。」」
アリスとエリカが席を立ち奥に向かうのだった。
・・
・
「おおぉぉぉぉ!!!」
武雄が目の前の幅2m弱、高さ2m程度の玄米精製機を見て目を煌めかせている。
「うむ、タケオ、どうだ?
唐箕に木臼を組み込んだ試験機だ。」
「良いですね。この無骨さがまた良い!」
「必要最小限にしたからな、角ばっているが試験機とはこういう物だろう。
一応、各部毎の動きは確認済みだ。
ちなみに設計図はスズネ達が起こしている。」
「試験機という事ですけど十分に機械になっていますね。
部品点数もそこまで多くなさそうですね。」
「元来そこまでの機械ではないからな。
まぁ今回は動作試験だ。
足踏みミシンの駆動部分の組み込みや細かい調整はこれからという所だがな。
ブラッドリー達も凄まじい執念だった。」
チビニオが胸を張りながら武雄に言う。
「ええ!ええ!これは凄い!
この短期間でここまでとは流石ですね!」
武雄が手放しに皆を褒めている。
「あ~・・・タケオ様が童心に返っています。」
「ふふ、こういうタケオさんを初めてみた気がしますが、子供ですね~。」
アリスとエリカが武雄を生温かい目で見守る。
「では、キタミザト様、実施します。」
ブラッドリーが武雄に言う。
「はい!お願いします!」
武雄が返事をするとバキトが端にある40㎝程度のハンドルを回し始める。
最初は力が必要だったみたいだが、すぐにハンドルを早く回す。
コッ・・・ココッ・・・コッコッコッコッコッ
装置全体がゆっくりと稼働し始める。
「「「おおおお。」」」
ブラッドリーだけでなくベインズやボイドも感嘆の声を上げる。
「やはり装置は起動時に力が必要かぁ・・・
となると始動の際は手動で回してすぐに足踏み駆動にした方が良いかな?
あ~・・・そっか昔の車の始動も手回しだったか。」
武雄が考えながら見ている。
「よし、とりあえず可動したな。
ベインズ、爺さん、確認だ。」
「はい。」
「そうじゃの。」
親方連中が各部の状況を確認し始める。
「風車部は問題なさそうだな。」
「低速だからとも言えるかもしれませんね。」
「じゃが、今の時点で普通に動くならミシンの駆動を入れても問題ないじゃろう。」
「よし、次は木臼か。
サリタ。」
「はい、米は希少価値あるから小麦で代用しますよ。」
「あぁそれで良い。
ちょっと待て移動するからな。」
3人が木臼が見れる位置に移動する。
「じゃあ少し入れますよ。」
「ああ!」
試験機の動作試験が始まるのだった。
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