第1583話 なーんか問題ごと。7(スミスの思考。)
エイミーとドネリーがジーナの部屋を去った後。
ジーナは時雨達を連れてスミスの部屋に来ていた。
「ジーナ、上手く説明出来ましたか?」
「はい。
スミス様には言い辛いのですが、正直に申し上げまして今回の事でスミス様が女性の裸程度ではときめかないという事実が発覚しました。
ですのでエイミー殿下方は方針を変えるようです。」
「ジーナ・・・別に僕は女性嫌いな訳ではないよ?
ただ恋人とか友人とかの概念がわからないんだよ。」
ジーナの言い分にスミスが呆れた顔をさせながら言う。
「恋人等の概念がわからない・・・女性に興味が無いわけではないのですね?」
「あたりまえだよ。
僕は男子で女性が居ないと子供は作れないでしょう?
ちゃんと子作りの仕方は知っていますよ。」
スミスが苦笑しながら言う。
「・・・子作りの知識が頭に入っておいでなのはご立派です。
それにしては性的な欲求が低いように思われますが?」
「ん~・・・性的な欲求・・・そこがいまいちわからないね。
体の機能や目的があっての行為というのはわかるんだけど・・・欲求かぁ~・・・
それが僕以外の4人にはあるんだね?」
「正確には目覚めたという事かと。
とりあえずスミス様が知識のみ持ち合わせているのはわかりました、今後の学院内等の経験で女性にときめきを覚えられたらよろしいと思います。
ちなみにウィリアム殿下方に確認した所、王立学院内の授業の一環としてその辺は体験されるようです。
ですので、逸って他人に見聞きされませんようお願いします。
下手をすると友人関係だけでなく王立学院生活に影響を及ぼしかねません。
最悪の場合、孤立してしまうかもしれません。」
「入ったばかりで孤立化は嫌だね。
ならこの件は誰にも聞かない方が良いね?」
「はい、極身内のみの会話でされるべき事かと。
それと王立学院内ではスミス様からこの手の話題を振る必要はありません。
話を振られたとしてもわからない事をわかったような振りをする必要もありません。
わからないならわからないと言っておけば良いでしょう。」
「それで良いのかな?」
「はい、どちらにしてもいずれは学院の行事として学ばれます。
早ければ良いというものではありませんのでそれ以外で皆と友好を育んで頂ければと思います。」
「うん、わかった。
今、学院として体験させないでいるなら何かしら理由があるんだろうね。
性的な欲求や友人、恋人とか自分なりに考えてみるよ。」
「性的な欲求を勉強される必要は今の段階ではないとは思いますが・・・
エルヴィス家もキタミザト家もその辺は自由ですのでご自身で適時学ばれますように。」
ジーナはスミスの言動に疑問はあるもののスミスの意欲を肯定する。
「うん、それで紫雲が来たのなら手紙が来たんだね?」
「はい、アリス様よりキタミザト家の人事について報告がありました。
こちらになります。」
ジーナが先程読んでいた手紙をスミスに渡す。
「えーっと・・・新しく4名を採用。
キタミザト家のメイドと執事になるべくエルヴィス家で研修中。
出自につい・・・また?」
スミスが手紙を読みながら眉間に皺を寄せて呟く。
「はい、またです。
ゴドウィン伯爵領で採用した幼年の者のようです。
立場的には私の部下になるとの事です。」
「キタミザト家の家令がヴィクター、その下に補佐でジーナ、商売や金銭関係でアスセナ、農業関係がベルテ一家だったよね?」
「はい、そのとおりです。」
「となると・・・ジーナがメイド長なのかな?」
「まだお仕えして数か月です。
些か早いと思われますが・・・立場上そうなってしまいます。
それにご主人様とアリス様はエルヴィス伯爵家屋敷に住まわれていますので基本的にはエルヴィス家のメイド長の下に付くと思われます。」
ジーナが考えながら言う。
「まぁ、そうだね。
ジーナは昇進かな?」
「家令補佐兼メイド長でしょうか。」
「凄い肩書だね。」
「肩書だけ見れば相当上なのでしょうけども・・・どうなのでしょうか?」
「良いんじゃない?
タケオ様とアリスお姉様の挙式の進行を取り仕切ったし。」
「メイドとしての実績はそれだけなのですが・・・まぁ部下が出来た事には驚きと感謝ですね。」
「感謝?」
「はい、お父さまの下にアスセナが居ますが、2人でキタミザト家と研究所の両方の資金を見るのは辛いかと。
すぐにどうこうなるわけではありませんが、これから試験小隊の人員が増えていくのに従ってメイド兼事務員が増やせる当てがあるのは良い事です。」
「なるほどね。
僕の場合はもう既にいるからその辺はあまり考えてなかったけど、始まったばかりの家や組織だと人員の配置には苦労しそうだね。」
「はい、キタミザト家の貴族報酬も限界が来ています。
今回の4名の登用でもしかしたら赤字になっている可能性すらあります。
そこはキタミザト家の動産収入を当てにすれば良いだけなのですが・・・まだ始まったばかりですので収入は少ないと考えられます。」
「タケオ様は子爵だけど貴族報酬ってそんなに低いの?」
「少ない感じですね、なので領地持ち以外の各貴族が副業のようなものをしていると考えられます。
でなければあの規模の人員配置は出来ないでしょうからね。
あ、ロロの部下が各貴族会議議員の屋敷に入って情勢の報告なのですが、文字が読めないので些か人員配置ぐらいしかわかりません。
そこから私が収入を予測しています。
この結果はもうしばらくお待ちください。」
「ジーナ、やり過ぎないようにね。
そういった事まで調べる必要は必ずしもないし、急を要してはいないからね。」
「はい、心得ております。
私の暇つぶしの1つにしているだけです。」
「女性らしからぬ趣味のようですけど・・・まぁジーナが気晴らし出来れば良いですか。
さて・・・では王都での雇い主である僕は部下の昇進祝いをしないといけませんかね。」
「何か買ってきましょうか?」
「祝われる側のジーナが買いに行ってどうするの?
僕が買いに行くよ。
といっても学院を出てすぐのスイーツ屋さんだけどね。
ジーナ食べたい物はありますか?」
「ご主人様のプリンを。」
「流石にそれは無理だね。
何か甘そうなものを買ってくるよ。
宿題も一段落しているし、夕飯までには戻るね。」
「ご一緒しなくてもよろしいのでしょうか?
大丈夫ですか?」
「近所だし、マリもいるから大丈夫だよ。」
「では、部屋で期待しながらお待ちしております。」
「そこまで期待されると困るから普通に待っていてね。
マリ、行くよ。」
「うむ、ジーナ美味しそうなのを見繕ってこよう。」
「スミス様、マリ、ありがとうございます。」
ジーナが礼をするのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




