第1577話 なーんか問題ごと。1(ジーナ、頑張る。)
王都の寄宿舎。
「はぁ・・・今日は昼までの授業だったね。」
「はい、スミス様、宿題がたくさん出ております。」
スミスとジーナが玄関から入ってくる。
「なんで授業は短いのにたくさんの宿題が出るんだろう?」
「・・・自習という意味では?」
「王立学院の意味が少しわからなくなったよ。
まぁそれ以外にも意図はありそうだね。」
ジーナの言葉にスミスもそう思うのか疲れた顔をさせて頷く。
「はい、私見ではありますが、教師の方々はアルダーソン様とボールド様の勉強の度合いを見ていると思われます。」
「あの2人かぁ・・・お付きと一緒に毎日頑張っているみたいだね。」
「夜遅くまでとは言いませんが、それなりの時間まで勉学をされているみたいです。
同時に息抜きもされておいでのようですが。」
「しかたないよ。
ずっと勉強ばかりだと疲れてしまうからね。
ちなみに何をして息抜きをしているんだろうね?」
「・・・。
私の口からは憚れるかと。」
ジーナが首を傾げて少し考えてから答える。
「え?嘘。
何してるのあの4人。」
スミスが少し驚く。
ジーナはこの寄宿舎のみならず宿舎、王立学院内の情報を集めているのはスミスとエイミー、ドネリーは周知しているし、咎めもしない。
3人的には「咎めた所で止めさせる事も出来ないし、何か犯罪をしていると立証も出来ない」と諦めている。
但し、あまりその情報を使って脅したりしない事は言い含めているし、ジーナも「念の為ですよ」と言い放っているので問題視していない。
そして情報通のジーナが口に出せないとなると余程言い辛い事なのだ。
「・・・ん~・・・深夜ですし・・・男の子ですし致し方ないのですけど・・・男子の尊厳に関わるような・・・ですが、男性特有という訳ではないのですが、ある程度のご年齢の男子の恥部というか・・・あまり異性がこういう情報を漏らすのは、万が一、知った時にご本人様達にショックを与えると申しますか・・・」
ジーナが珍しく困った顔をさせて言い淀んでいる。
「??
わからないけど、とりあえずジーナが言い辛い事なんだね。」
「はい、私の口からは如何とも言い辛い事です。」
「勉強で疲れた深夜の男子の尊厳かぁ・・・僕にはわからないなぁ。
エイミー殿下ならわかるかな?」
「え゛・・・んー・・・
わかるかわからなかいかで言えばわかられるとは思うのですけど・・・エイミー殿下もそのような話をスミス様には説明し辛いのではないかと思われます。
こういうのは同性で話さないといけない事ではないかと。」
「そうかぁ・・・エイミー殿下は年上だけど異性としてそういった事は言い辛いんだね。
・・・でも深夜に訪問して『何しているのか』なんて聞けないよね?」
「それはご本人様達の心臓が止まる可能性がありますのでやめて差し上げてください。」
「心臓が?そんなに危険な事を?」
「・・・危険・・・危険といえば危険。
一生の不覚になるかもしれない程の試みをされますから・・・それにスミス様、夜9時以降は他者の部屋には行かない事がマナーです。
私もスミス様の部屋には余程でない限り行き来しませんよ。」
「そうだったね。
夜は皆がリラックスしている時間だから邪魔しては悪いものね。」
「はい、親しき間にも礼儀は必要です。」
「そうだね。
でも寄宿舎内で僕だけわかっていないような感じだからもやもやするね。」
「いえ、スミス様も何れはご理解するでしょう。
今ではないと言うだけですし、早ければ良いという事ではございません。
ある程度時間が経てば周りから教えられるでしょう。」
「なんとも微妙な言い回しだね。
・・・んー・・・教室内でも聞かない方が良い?」
「そうしますとスライム達を使っているのがバレてしまいますし、何より自分の深夜での行動を聞かれるのは恥ずかしいと思われます。
スミス様もアルダーソン様やボールド様から『昨夜、こんな本を読んでいたね』といきなり言われたら気分がよろしくないと思われますが?」
「確かにそうだね。
うん、そうだ。
ならこの件については皆に聞かない事にしようかな。」
「はい、それがよろしいかと。」
「あ、もう部屋だね。
ジーナ、今日もお疲れ様、夕食までは自由で良いからね。
それとまぁ当分考えてわからなかったらタケオ様が王都に来た際に聞く事にするよ。」
スミスが部屋に入って扉を閉める。
「・・・はい?」
ジーナがスミスの部屋の前で固まる。
「あれ?ジーナ?
スミスも戻ったのね、貴女達いつも通り寄り道しないわね。
もう少し街中でも見に行ったら?」
エイミーとドネリーが戻ってくる。
「エエエエエエ・・・エイミー殿下。」
ジーナがゆっくりとエイミーを見る。
「え?なに?緊急事態?」
エイミーがたじろぐ。
「いつも冷静沈着なジーナ様にしては貴重なお顔ですね。」
ドネリーは少し驚きながら言う。
「ご主人様にご迷惑をおかけする可能性が・・・」
「タケオさんに迷惑って・・・何?大事件?嘘でしょう?」
エイミーが顔を引き攣らせている。
「とりあえず、エイミー殿下、ジーナ様も一旦部屋でお着替えを。
その後にエイミー殿下の所に集合で。」
「はぁ・・・あとでお伺いします。」
ジーナが頷く。
「・・・わかったわ。
気構えだけは整えておくから。」
「では、また後程。」
エイミーとドネリーがジーナの横を通って自室に向かう。
2人が部屋に入ったのを確認してジーナが自室に入る。
「ジーナ、早かったっスね。
王立学院はこんな早くに帰ってくるっスか?」
いつもは居ない部屋に来客が居るのだった。
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