第1576話 演習中。9(ミア達の雑談。)
試験小隊の訓練場。
ミア、ビエラ、クゥ、コラと狼、鷲の主達が先程の演習の話をしていた。
「ニャ!」
「ええ、コラの言う通り、あれがこの地域の人間種の戦い方ですね。
やりたくないでしょう?」
「ニャ・・・」
「ガウッ!」
「クルッ・・・」
「ガウッ・・・」
コラ、狼、鷲達が首を振りながら肯定する。
「あー♪」
「ニャニャ!?」
「「ガウッ!」」
「クルッ!」
ビエラの呟きに魔物達がツッコむ。
「ビエラ的には楽しかったで済むでしょうけど、普通あれほどの魔法を浴びせられれば良くて半数、下手したら全滅というのが普通ですよ。」
ミアが呆れながら言う。
「あー?」
「ニャ。」
「あ~・・・あ?」
「まぁそうでしょうね。
あれでやる気になるのはビエラ達ぐらいです。
普通はあのように兵士達に並ばれれば引くのが普通でしょう。
クゥはどう思いましたか?」
「きゅ?・・・きゅ~・・・」
クゥは首を振っている。
「あ?あー!」
ビエラがクゥの言葉に若干声を荒らげて威嚇する。
「ビエラ、クゥはまだ幼いのです。
あのような人数に囲まれればひとたまりもないですよ。
かと言って、最終手段として成獣になれるビエラとは違いクゥは一時的にしか成獣になれません。
難しいというのは通常の判断です。」
ミアがクゥを擁護する。
「ん~・・・あ~・・・」
ビエラは腕を組んで悩む。
「姉ドラゴンはもう成獣でしょう?
それに幼き間は人里や他種族を・・・避けていませんでしたか。
クゥは思いっきりエルヴィス家と王都の間に居ましたものね。」
「あ。」
「きゅ。」
「まぁ観察する事が大事というのはわかりますが・・・はぁ良いです。
ドラゴンの生態についてあれこれ言いません。
クゥも出来る事がわかっているなら無理はしない事です。
ビエラもまずは文字覚えるのでしょう?そちらに注力を。」
「はい!」
「きゅ!」
ドラゴン2名が返事をする。
「とりあえずコラ達は引き続き棲みか周辺の調査と間引きと討伐出来るように訓練をしておく事です。
万が一多めの魔物が発見されたら今日見た人間種達に報告し、討伐を依頼する方向で行きます。」
「ニャ!」
「「ガウッ!」」
「クルッ!」
皆が返事する。
「はぁ・・・西側はユウギリ達と兵士達に任せるしかないですかね。
主や伯爵様が冒険者組合と話し合って町と街の間では狼と鷲の討伐はさせないとは言ってもそれを破る者達は少なからず居るでしょう・・・当分は様子見として用心しておきなさい。」
「ニャ!」
「「ガウッ!」」
「クルッ!」
皆が頷く。
「・・・主の下で通訳をする役目から結構変わりましたね。
もっと楽して過ごせるかと思ったのですが・・・」
「あ~♪」
「ビエラ・・・『貴女も一軍の将だね』とは私にとってあまり良い言葉ではないですよ。
はぁ・・・私達妖精がこうも組織の上に立つなんて誰が予想します。」
「タケオ!」
ビエラが即答する。
「主は別です、主は天才で異才で変人で変態です。」
「・・・あ~・・・」
ビエラが「いや、そこまで言わなくても」とちょっと武雄に同情する。
「・・・変態は主の為に無かった事にしましょう。
ともあれ主はこの国や魔王国の人々の感性から離れているのです。
普通の者達にとっては組織の上に立っている知の上位者か武の上位者、古来からの血縁ぐらいでしょう。
非力な妖精が組織上のトップとは・・・いやはや時代が変わったのですかね。」
ミアが難しい顔をさせて首を傾げる。
「きゅ?」
「『時代の変革期』とはクゥも難しい言葉を知っているんですね。
はぁ・・・これは魔王国内の両親達にも伝えた方が良いのかなぁ?」
「あ?」
「きゅ?」
ミアの呟きにビエラとクゥが即座に首を傾げる。
「いや、私の両親を亡き者にしないでください。
妖精は逃げ足と隠れるのは割と上手なのですよ。
うちの両親が後れを取るわけないでしょう。」
「あ!」
「きゅ!」
ビエラとクゥがミアを指さす。
「ええい!私が捕まった事を指摘するんじゃない!
隠れるのが割と上手なのは両親もですが妖精の種族としてですよ。
・・・両親にはまだ報告は良いか・・・面倒になりそうだし。
ビエラ達はするんですか?
確かドラゴンの顔役が居るんでしたよね?」
「きゅ?」
ミアの質問にクゥがビエラを見る。
「・・・あ~・・・あ!」
ビエラが腕を組み思案するが、面倒な顔をさせて返事をする。
「そうですか。
ならお互いにこの地が安定するまではもう少し様子見ですね。」
「あ。」
「きゅ。」
ミアの言葉にビエラとクゥが頷く。
「あー・・・そういえば姉ドラゴンが引っ越しをするとかしないとか言っていませんでしたか?」
「・・・あ~、あ?」
「ええ、現状を見るにこのエルヴィス伯爵家領内では土地は余っていても受け入れる余裕はなさそうですよね。
人々が怖がりそうですからね、今は始まったばかりですからこれ以上の新しい魔物の受け入れは難しいでしょうね・・・」
「あ?」
「『勝手に来ちゃったら?』って言われても・・・そこは主や伯爵様が何と言うか・・・
事前にすり合わせておかないと無用な軋轢になります。
本気で来る気なら主と伯爵様に言って適切な土地を用意して貰うしかないでしょう。
いきなり来るよりかはマシな程度でしょうけど。
それに現状の王都の西側でも十分に居心地良いんでしょう?」
「あ~?」
「きゅ?」
「・・・知りませんよ、そんな事。
安心な場所がこの地というのはわかる気がしなくもないですけど・・・話をするならビエラがしてください。
私は私情を挟まず通訳はしてあげます。」
「あ~・・・あ。」
「そうですね。
とりあえず姉ドラゴンとはそれとなく話をして情報を聞いてください。
はぁ・・・絶対これ労働契約違う気がする。」
ミアが愚痴をこぼすのだった。
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