第1573話 演習中。6(通常業務に移行しよう。)
ジーニー達エルヴィス家の新人兵士は終了の号令がかかったら城門を後にして皆の下に来ていた。
「先輩お疲れ様です。」
ジーニーが新人小隊の先輩に声をかける。
「ジーニーか・・・どうだった?」
「徹底的にしごかれたんですね。」
「あぁ・・・そうだ・・・これが特別演習だ・・・
これが名物になりそうでな・・・ジーニー、皆の成長を期待してるぞ。」
「そんなやつれた顔をされて言われましても・・・」
「総員整列!兵士長より訓辞を行う!整列せよ!」
号令がかかり皆が小走りに整列を始める。
・・
・
「諸君、今回の演習ご苦労・・・良く戦列を保たせた。
だが、今回もやはりキタミザト様、アリス様を取り押さえられなかった。
今は演習だから負けでも構わない、だが、最大級の魔物が現れてこの結果では住民に被害が出てしまう。
いつまでもキタミザト様!アリス様が居ると思うなかれ!
皆!肝に銘じて反省を行うように!
・・・次回がいつになるかわかないが・・・いつ行われても良いように各自訓練に励む事。
各小隊長は今回の皆の動きを思い出し報告書の作成を、また次回へ何が出来るかの小隊内で検討をし、思いついた事があれば書き溜めておいてくれ。
以上。」
「兵士長に対し敬礼!直れ!
連絡!第7、第8、第13、第14小隊は演習場の整備を実施、他小隊は通常業務に移行。
以上、解散。」
皆が一斉に動く。
「はぁ・・・終わったんだね。
それにしても・・・」
ジーニーが呟く。
「第16新人小隊集合!駆け足!」
号令がかかりジーニー達は呆ける事も許されず集合場所に向かうのだった。
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城門の上の端では。
「えーっと・・・アンダーセンさんの報告はわかりました。
目の前の小さくなっているトレーシーさんの言い分もわかりました。
で?」
武雄がアンダーセンからは報告をトレーシーの言い訳を聞いていた。
「はい、何か良い罰則がない物かと思いまして。」
「罰則・・・威力は最小限にしてくれたと言ってくれていましたし・・・驚きはしましたが、被害もありませんでしたよ?」
「ですが、所長、あれは友軍にそれも上司についでに個人に使う物ではありません。
次に誰かが同じような事をしでかさない為にも何かしら罰則を周りに見せておかないといけません。」
「なるほど、予防の為の罰則ですか、確かにそれは必要なのでしょう。」
武雄がアンダーセンの言葉に頷く。
「所長・・・」
トレーシーが涙目で訴えてくる。
「罰則については保留ですかね、あとで考えます。
ちなみに・・・説明からするとあの魔法って王都で使用しているんですよね?」
武雄がアンダーセンに聞く。
「ええ、王都守備隊と王家専属魔法師部隊で使用しています。
集団で行う魔法砲撃を単独もしくは少人数で実施します。
結果は先ほどの通りです。」
アンダーセンが頷く。
「威力のあるファイアを辺り一面に降らせるか・・・
ちなみにこの魔法の対処方法はなんですか?」
「そうですね・・・所長がされたようにシールドを展開して防ぐというのが1つ、あとは盾がある場合は強化をかけて耐えると言ったところでしょうか。
本来なら分隊単位でするのですけどね。」
「・・・上空からの攻撃を防ぐと?」
「はい。」
「・・・」
武雄が首を傾げて考えている。
「所長?」
「・・・いや、ちょっと・・・ね。
まぁ知られていない珍しい魔法という事でしょうけど、自国の兵士が使うなら他国も使う。
これが軍務を預かる者の常識です。
魔法師ならシールドで歩兵なら盾で防御というのが防御方針であれば盾の性能を上げておかないとあれは防げないかもしれませんね。」
「性能を上げる方が良いと?」
「ええ、知っての通り私はシールドを重ねて運用していますが、そのシールドが4枚まで削れた感じでしたよ。
ちなみに正面には8枚を重ねていましたけどね。
・・・あれを本気でされたら8枚でも厳しいでしょう。
トレーシーさん、やった方の感想としては?」
「あの魔法は一気に魔力を消費します。
直後は少し気怠さがありますね。
少しすれば慣れますが。」
トレーシーが言ってくる。
「戦場で、というとその気怠さが万が一を引き起こす可能性もありますか・・・
運用方法は策定されているのでしょうけど、些か不安ですね。」
「だからこその緊急時のみ使用するのですけど。」
アンダーセンが呆れながら言う。
「あ~・・・そうでしたね。
アンダーセンさん、次期採用隊員ですが、これ条件に入れますか?」
「となると王都守備隊の隊長格とベテランですね・・・第1騎士団、第2騎士団についてはなんとも言えません。
能力要件は満たしていても存在を知っているのか・・・」
「ふむ・・・なしですね。
でも、数個をまとめて外皮で覆って・・・こう?」
武雄が掌にファイアを5個程作りまとめて1つのファイアで包み、ポイっと城門外に投げて・・・弾ける。
「なぜに出来ますか?」
「魔法って便利ですね。
イメージした通りにしてくれる。」
武雄が笑いながら言う。
「これ・・・難しいんですよ?」
「あの魔法は難しいんでしょうけど、なんの威力も無い手遊び程度なら疑似的に出来るというのは当然でしょう?
ウォールシリーズだって単発を壁のように置いてくことを1つの魔法にまとめたと考えれますし。
そもそも手遊びを一連の流れにまとめ、使えるまで昇華させたのが上級魔法なんでしょうから。」
「まぁそう言われるとそうなのですけど。
・・・まぁ良いです、とりあえず我々は研究所に戻ります。
今日の感想はまとめておきます。」
「ええ、私達の動きの反省点もよろしく。
やっている側ですとなかなか細部まで見れていませんしね。」
「了解しました。」
アンダーセンが頷くのだった。
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