第1572話 演習中。5(終了。)
「状況終わり!!!!総員解散!」
ハロルドの号令が響き渡る。
と武雄もアリスもビエラも戦っていた兵士達も手を止める。
武雄とアリス、ビエラは、さっさと歩いて後ろに戻る。
兵士達は、そんな3人を見てその場にグッタリと膝をついた。
皆一様に「終わっ・た・・」「今日も・・・長かった・・・」と疲労困憊だった。
一部の兵士は仰向けに寝て息を整えている。
武雄達は城門に歩きながら話をしている。
「ビエラ、どうでしたか?」
「あー?・・・楽しかっりゃ!」
ビエラが良い笑顔を武雄に向ける。
「うん、ビエラが満足したのなら良いでしょう。
アリスはどうでしたか?」
「序盤の魔法は驚きましたし、盾も出してくるとは・・・ここまで盾で近づいてくるとは思いませんでしたが、今日は新しい事が目白押しでしたね。
日々兵士達が新しき事に挑戦しているという事がわかりました。
この流れはタケオ様がもたらしたのでしょうか?」
「さてね。
ですが、いつまでも同じ戦い方をしていてはいけないと思っての動きでしょうね。
・・・その考えはとても新しくとても不安定な物でしょう。」
「不安定ですか?
良い事だとは思うのですが?」
「昔ながらの戦い方というのはある意味で洗練されている為、負けも勝ちも読める戦い方なのです。
一方、新しい戦い方は大勝ちするか大負けするか・・・極端な結果に繋がり、そしてやってみなければ結果はわからないという事なのです。
良く決心したと捉えるべき事ですし、演習だから新しい事を試したのだとも言えます。
それに大きく見た際にはそこまで新しい事ではないでしょう。
盾を全面に出して近づき攻撃する。
戦争時に使いそうです。
ですが、アリスが言っているようにここまで肉薄するのはどうなのかわかりませんが・・・何か他にもしたい事があったのかもしれません。」
「ん~・・・ということは、私とビエラちゃんが飛び出さなければ他にも何かした可能性があるのでしょうか?」
「かもしれない・・・ですね。
終わってからあーだこーだ言っても意味はないですよ。
私達がどう動くのかを兵士長が見誤ったからなのか、私達が兵士長達の思惑を外せたからなのか。
結果として肉薄してもアリスなら何とかなってしまうという結果が導き出されました。
次回があると何をしてくるのかわかりませんね。」
「次かぁ・・・次はいつですかね?」
「いつですかね~?
今回はエリカさんが見てみたいと言ったのが切っ掛けですが、次回は誰が言いだすのやら。」
「あー?タケオ、次回も私する!」
「ビエラは次回までに剣の使い方をもう少し学ばないといけませんね。
途中、殴ったり蹴ったりしてたでしょう?
今回は剣を使う事を学んでいるのですからあれはダメですよ。」
「あ・・・バレた。
タケオ、良く見てる。」
ビエラがバツが悪そうな顔をさせる。
「後ろから見ていたんですよ、しっかりと見ていました。
アリスも剣を大振りにして薙ぎ飛ばしていましたが、あれももっと小回りを利かせて手数で勝負するか、もっと大振りして薙ぎ払う人数を多くしてみる改良が出来ますね。」
「あれ以上の大振りは剣が届かないかもしれないですし、隙が多くなりそうなんですよね。
今日もビエラちゃんがすぐに横に入ったからあまり気にはしませんでしたが、1人だと横から入ってくるかもしれないですね。」
「なるほど、こちらが少人数なら大振りもありと。
対大勢でアリスが隙を作らずに小回りを利かせる方法をとるならやはりビエラの方でもう少し人数を抑えられるようにしないといけないかもしれませんね。」
「あ~・・・マイヤーに・・・する。」
ビエラが考えながら言う。
「試験小隊の訓練に参加も良いですが、ビエラはベルテさん達に文字の勉強もあるので日毎に参加でしょうか。」
「はい!タケオは?どう?」
「私の今日の成果ですか?・・・アリスもビエラも私の指示取りに右に左に動いてくれて防衛が出来たのは楽しかったですね。
有能な部下というのはとても大切だというのがわかりました。」
「タケオ!私ゆうのー!」
「ええ、ビエラは優秀ですよ。
これから先、ビエラも剣を覚え、文字を覚えていくでしょう。
もちろん成獣状態での戦闘訓練もしておかないといけないのでしょうが、そこは対戦相手は出来ませんが、最低限体を動かして鈍らないようにしないといけませんね。」
「はい!」
ビエラが返事をする。
「あ・・・主、コラ達も見に来ていたみたいですね。
私はコラ達と話してから城門の上に行きますね。」
ミアが胸ポケットから出て飛んでいく。
「気を付けるのですよ?」
「あー。」
ビエラもミアを追いかけて一緒に向かおうとする。
「ん?」
武雄が首を傾げる。
「クゥとタマも居るみたいです。
主、またあとで~。
ビエラ行きましょう。」
「あ~。」
ビエラの肩にミアが乗りコラ達の下に向かうのだった。
「・・・コラ達が今回の演習を見てどう思うか・・・」
アリスが考えながら呟く。
「人間種もやるものだと思ってくれれば一興なのですけどね。
私達は城門に向かいましょうか。
あ、アリスは詰め所で軽く湯浴みしてきた方が良いでしょうかね。」
「あ~・・・ちょっと埃まみれですよね。
タケオ様は?」
「私は顔を拭くぐらいで良いです。
帰ったら湯浴みしますから。」
「はーい、なら兵士達が戻ってくる前に詰め所に行ってきますかね。」
武雄とアリスは城門を再び目指すのだった。
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