第1567話 演習開始。(序盤は相手の動きを封じ込めよう。)
いつの間にかハロルドがお互いの中間地点におり、双方の開始の準備を見ている。
「そろそろか・・・タケオも兵士達も整列したか・・・」
ハロルドが双方に手を振ると武雄と兵士の先頭の者が手を振り返してくる。
「よし・・・演習を開始する!状況始め!!」
ハロルドの大合図と共に第10小隊と第15小隊、騎士団の2小隊の兵士が事前の作戦内容の通りに魔法を練る。
「ストーン」「ブリザド」今回はこの2つを集中運用するようだ。
各々が単発攻撃を用意し始める。
「目標!前方3名!放て!!」
兵士長の号令が響くなり、魔法師達が撃ち始める。
ちなみに隊列は各小隊は5人4列を基本とし横一列に各隊が整列、その後ろに第10・15小隊と騎士団2小隊がいる形を取っていた。
そして前回と同じように前面の兵士達に当たらない様に一度頭上に打ち上げてから標的に向かう様、調整する。
魔法が打ち上げられたのを武雄とアリス、ビエラは見ていた。
「タケオ様、始まりましたね。」
今回はアリスは前の通りなので驚きはせずに見ている。
「あー♪」
ビエラは「綺麗だねー♪」と同じく見ている。
「若干、前よりも多いですね。」
「魔法師が増えた・・・採用は3名でしたので騎士団から援軍が来たのでしょうか?」
「そう捉えるのが妥当でしょう。
さ、2人共私の後ろでしゃがんでください。」
武雄はアリスとビエラから一歩前に出る。
と、半身の体勢をとり、しゃがみ込んで左手をかざす。
「シールド×5枚ずつ 1m先 縦2列横2列+下部に1つで重なれ 発動。」
50cm四方の壁を縦横5枚で厚さ5枚の四角で作った大き目の盾をイメージさせる。
右手には予備として同じ物をすぐに発動出来るように準備する。
発動してすぐに魔法が到達し始める。それこそ雨のように。
前回同様、武雄達の横にも着弾し、土埃を立て始める。
「今回も上手くいきましたね。
前よりも少し余裕を持って発動も出来ますが・・・慣れですかね?」
と、武雄が言葉を発しながら土埃の隙間から次が撃ち出されるのが見えた。
「先ほどより若干少ない?・・・これも以前と同じだが、少し多いですかね?」と思いながら武雄は先ほどと同じように。
「シールド×5枚ずつ 1m先 縦2列横2列+1個で重ね」と発動し直す。
すぐに先ほどより少ない数が着弾し始める。
そして次弾を待ち構える・・・この繰り返しだ。
武雄は間断無く「シールド」を発動して魔法の雨を耐え凌ぐのだった。
------------------------
城門の上では。
「ふむ・・・今日の魔法は数が多いの。」
「騎士団からも魔法小隊が参加していると報告がされております。
相手に当たる精度が今一つでしょうか?」
エルヴィス爺さんが酒を片手に武雄の防御と兵士達の攻撃を見ている。
フレデリックは武雄達の心配はせずに兵士達の練度を評価している。
「ま、このぐらいが精々じゃろう。
これ以上精度を上げても使う頻度は少ないじゃろうし、そもそも3人に向けるような量でもない。
もう少しタケオ達側に人数が居れば全体に満遍なく当たるのじゃから良しとするべきじゃ。」
「確かに。
なら魔法師達の練度は及第点としましょう。」
フレデリックが何やらメモを取り始めるのだった。
「あわわわわわ・・・」
「なんていう数の魔法が・・・」
「これを受けているのがキタミザト様とアリス様。」
「これが軍事演習なんだね!」
「「ええ・・・」」
「「まぁ・・・」」
ルフィナ、セレーネ、ルアーナ、ヴィートの子供達も今日は主達の演習という事で指導員達と見学している。
子供達は楽しそうに見ているが指導員達は顔が引きつりそうなのを我慢し、無表情で見ている。
「これは・・・これが戦場。」
「私達も闘技場で戦ったけど・・・凄まじいわ。」
「「・・・」」
「はぁー♪」
「わー♪」
ベルテ一家は顔を引き攣らせながら呆れ、ニルデとジルダは素直に楽しんでいる。
「これが普通なんだぁ・・・」
「ただ者じゃないね・・・」
ウカとダキニも呆れている。
「・・・ヴィクター様。」
「アスセナ、私達の仕えている家の偉大さの片鱗が見えていますね。」
「はい、改めて国内最強というご夫妻の肩書の凄さがわかります。
キタミザト様が防ぎきっているのが・・・人間種を超越している感もございますが。」
「似たような事は試験小隊の方々も出来るでしょうが・・・3名で・・・実質1名で成し遂げているという点で防御力特化と自ら言っている意味がわかりますね。」
「この後は奥様の攻撃力特化ですか。」
「はぁ・・・超越者というのは居る所には居るのです。魔王国のヴァレーリ陛下然り。
今は主達が無事に演習を終えるのを見届けましょう。」
「はい。」
ヴィクターとアスセナは姿勢を正して見守っている。
「・・・ひでぇ戦いだ、これはやりたくはないな。」
「はぁ・・・このような演習は王都でも出来ないですよ。」
「普通こういった防御演習って2分隊合同でやりませんでしたか?」
「近衛は合同でやっていたな。
あそこは陛下を守る事が主命だし・・・だが、1人でする事じゃないな。」
「これで魔法師専門学院に入れないっていうんだから・・・基準が間違っていると皆が思うのも無理はないかぁ。」
試験小隊のベテラン達が呆れながら見ている。
「「・・・」」
アニータとミルコは口をあんぐりと開けて呆けている。
「どうしたの?アニータ、ミルコ。」
「ブルックさん・・・あれなんですか?」
アニータが指を指しながら聞いてくる。
「所長と奥様・・・違うか、今の所、所長の特性を十分に発揮しているわよ?」
「とてつもなく凄いんですけど!」
「そうよ、所長はとてつもなく凄い方よ?」
「そうじゃなくて!んー!んー!」
アニータが言葉にできない感情をブルックに伝えたくて身悶えているのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




