第1564話 171日目 エルヴィス家にて。(知将に挑戦。)
エルヴィス伯爵邸の玄関。
「ただいま戻りました。」
「戻りました。」
武雄と初雪が玄関に入ってくる。
「キタミザト様、初雪様、おかえりなさいませ。
夕食は準備中です。」
メイドが出迎えてくれる。
「はい、ありがとうございます。
皆の仕事も終わった感じですか?」
「はい、客間で将棋をされております。
少し見た限りでは夕霧様が勝っておいでです。」
「あまり勝ちすぎてもいけないでしょうけど楽しんでいるのなら問題はないですね。
なら、私は着替えてから客間に向かいます。」
「はい、畏まりました。
着替えましたら制服はお預かりして洗濯しておきます。
明日は大演習との事で使わないでしょうから洗濯出来るでしょう。」
「あ、お願いします。
明日は朝から作業服の方を着ます。
お金もまだあるので制服も作業服も追加で頼んでおきます。」
「はい、あと追加で頼まれるのでしたらシャツの方も少し多めにお願いします。」
「わかりました、明日にでも頼みに行ってきます。」
「よろしくお願いします。
また明日は埃が付きそうですので、お戻り次第、アリス様のお召し物もすぐに洗いますのでアリス様にご伝達をお願いします。」
「伝えておきます。
何から何までありがとうございます。」
「いえいえ、問題ございません。」
「それでは一旦部屋に行きます。
初雪は客間に行っていなさい。」
「はい。」
「畏まりました。」
武雄が初雪とメイドと別れて寝室に向かうのだった。
・・
・
客間では。
「あ~・・・」
「そうくるなら、ここです。」
「あ!?・・・あ~??」
「ならここでしょう。」
ビエラと夕霧が将棋をしているのだが、ビエラは考えながら打っていて対する夕霧はすぐに打っている。
なのでビエラはどんどん思考が狭まってきているようだった。
「夕霧ちゃんのこの即打ってくるのは精神的に良くないですね。」
「本当、こんな打ち方をされたらまいってしまいますよ。」
「きゅ。」
クゥを抱いているアリスとお茶を飲んでいるエリカはビエラと夕霧の対局を苦笑しながら見ていた。
客間に戻って来た初雪は夕霧の肩に触れながら対局を見ている。
「うむ・・・これもなかなか全体が荒れておるの・・・どこかで見た気もしないでもないが。」
エルヴィス爺さんが盤面を見ながら言う。
「伯爵、これは12日前に伯爵がした指し方です。」
「そうじゃったかの?」
「その際は伯爵は負けましたが。」
「・・・ビエラ殿、敵討ちお願いするのじゃ。」
「はい!あー!」
ビエラがエルヴィス爺さんの応援を受け、駒を進める。
「ここですね。」
「あ・・・あ~・・・」
夕霧が動じる訳もなく直ぐに打つとビエラが再び考え始める。
客間の扉がノックされエルヴィス爺さんが返事をすると武雄が入ってくる。
「エルヴィスさん、アリス、エリカさん、戻りました。」
「うむ、仕事ご苦労じゃったの。」
「「おかえりなさーい。」」
「タケオ、おかえり。」
エルヴィス爺さん、アリス、エリカ、夕霧が言葉をかけてくる。
「夕霧勝っているそうですね。」
「ん、連勝中です。」
「あー!」
ビエラが「絶対負かすんだー」と意気込んでいる。
「ビエラ、意気込んで勝てたら苦労はしませんよ。
じっくりと全体を見ながらしなさいね。」
「はい!」
武雄の言葉にビエラがやる気の顔を向けて返事をする。
武雄は頷くと自分の分のお茶を淹れてソファに座る。
「主~、おかえりなさい。」
ミアが武雄の肩に乗ってくる。
「ミア、一旦帰宅した際に別れてからビエラ達とコラの所に向かったのでしょう?」
「はい、主。
とりあえず、コラ達も出来る事からするとの事で了承済みです。
自分達の住み家を中心に街道の監視を行っていきます。」
「それで良いでしょう。
夕霧は忙しそうですが、初雪、夕霧とやり取りはしましたか?」
「しました。
御用ですか?」
初雪が夕霧から離れて武雄の下に行く。
「お仕事ではないですよ。
コラ達の行動範囲が町を線で結んだ内側に決まりました。
今の所様子見も兼ねて自身の棲みかを中心に行動させますが、その間にスライムの情報網の整備をしないといけません。」
「はい、それはユウギリとのやり取りでわかっています。
後で伝えておきます。
・・・」
初雪が言い終わってから少し首を傾げる。
「ん?どうしましたか?」
「ユウギリ、伝えますか?」
初雪が夕霧を見る。
「ん、まだ先で問題ない。
もう少し待ってみましょう。」
「わかりました。
以上です。」
初雪が武雄に言う。
「なんか嫌な面接をされた気分ですが・・・夕霧と初雪がまだだと言うならそれで良いでしょう。
夕霧、初雪、何かあったら報告してください。」
「ん、わかりました。」
「はい。」
夕霧と初雪が頷く。
「主はあの後何をしていたんですか?」
ミアが聞いてくる。
「何もしていませんよ。
強いて挙げるなら戦闘ベストと小銃が研究所に納入されたので検査や改造をしていただけです。」
「タケオ様、また何かしたんですか?」
アリスが呆れながら聞いてくる。
「何もしていませんよ。
黒スライムの体液に戦闘ベストを漬けてから乾かして固くなるか試したぐらいです。」
「はぁ・・・十分に何かしていますね。
成果はあったんですか?」
「ちょこっと固くなりました。
基本は変わりませんよ。
明日はそれを着て大演習に臨むだけですね。」
「あ~・・・私は前の時のように旅支度で戦いますかね。
念のために胸当てくらい付けますか。
ビエラちゃんは動きまくるようなのでこちらも革の胸当てです。」
「子供用ありましたか?」
「そこは何とかしますよ。」
「アリスがそういうなら問題ないでしょう。
はぁ・・・明日も忙しそうです。」
「そうですね~。
今日は早めに寝るしかないですかね。」
「ええ、まぁ今はビエラと夕霧の勝負を見てまったりですかね。」
武雄がビエラ達を見ながらお茶を飲むのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




