第1561話 王城でまったり。2(第3皇子一家とその後の訓練場。)
「貴族として見ると寄宿舎に居る子息が次期当主として見られているという事なんですよね?」
スミスが聞いてくる。
「そうね。
その中でもスミスは領地持ちで卒業後領主と当主になる事がほぼ確定しているわね。」
エイミーが言ってくる。
「僕が領主・・・想像が付きません。
それにお爺さまがすぐ交代するのでしょうか?」
「するわよ。」
スミスの言葉にレイラが答える。
「そもそもお爺さまはお父さまが伯爵家を継いだ際に隠居した身だからね。
お父さまが亡くなってしまったから復帰されたけど、あくまでスミスが成人するまでの代役としてなのよ。
スミスが成人すれば隠居するでしょうね。」
「僕にはまだ早い気がするんですが・・・」
「そうは言っても多分エルヴィス領内では3年後のスミスの卒業を目途に交代するであろうという事を念頭に動いているんじゃないかな?」
「・・・フレデリックとタケオ様が何か言っていたような気がします。
あれは15年後でしたか。
タケオ様に至っては『やることいっぱい、揉め事いっぱいだよ』と言われました。」
「それはタケオさんらしい言い方かもね。
今のタケオさんの政策が上手く回り出せばそうなるだろうという予測は成り立つね。」
ウィリアムがスミスの言葉に苦笑しながら頷く。
「だけど初期の頃の揉め事は収めておいて貰えるんだから良いじゃない。
私達なんか初期の揉め事が領地で待っている感じよ。」
アルマが笑いながら言う。
「優秀な商売人で発起人のタケオさんとそれを上手く回せるフレデリックを中心とした文官達。
今の実家は凄い勢いよね。
ま、当分は忙しいだろうし、落ち着いたら会いに行こうかな?」
レイラがのほほんとしながら言う。
「タケオさん関連で言えば、第1皇子一家領も第2皇子一家領も街中が賑わってきているのは報告されているからね。
それを余すところなく発揮しているエルヴィス領は今、大変なんじゃないの?
処理するだけで大変な思いをしている工房や商店が多いはずよ。
大丈夫かしら?」
エイミーは少し心配しながら言う。
「・・・ジーナはどう思う?」
スミスがジーナに顔を向ける。
「今後としては私はキタミザト家のメイドですから戻れば事務処理やお手伝い程度ですのでそこまで忙しくはないでしょうが、協力工房の悲痛な・・・歓喜の声は聞いてしまうかも知れません。
事実、来る前ですらハワース商会やラルフ様の仕立て屋、ステノ技研辺りから美声が聞こえましたし、今の正式に研究所が稼働した段階ならご主人様は嬉々として動かれているかと。」
ジーナが伏せ目がちに答える。
「・・・僕の時代かぁ・・・どうなっちゃうんだろうね。」
「のほほんと回ってきた来た書類にサインするだけではダメかな?」
「かといって私達のように一から領地を作るわけでもないからどちらかと言えば既存の物に手を入れていく感じだろうね。
タケオさんとアリスが居るからその辺はスミスが当主になる頃には一通り目新しい事が実施されているからその日常の経過報告と何か問題が起こった時の対応のみかな?
あと日々なにか改善点があれば修正の指示をしないといけないかもね。」
「ん~・・・日々の改善点・・・難しいですよね。」
「今、私達が生活している所に不満がないと改善したいと思わないからね。
常に『人々の生活を良くするには』と考えている必要があるかな?」
「んん~・・・」
大人達の言葉にスミスが悩むのだった。
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スミス達が居た王都守備隊の訓練場。
「はぁはぁはぁ・・・」
「今日は一段と厳しい・・・」
ルークとコートニー他スミスの学友であるジーナを見守る会の全員が息を切らしながら訓練に励んでいる。
「せぃっ!」
また1人王都守備隊の隊員に切りかかるが。
「甘いっ!」
「ぐっ!」
難なく防がれ、はじき返される。
「・・・初めは魔法の訓練だけだったような・・・」
「気が付いたら剣技の訓練もだもんね・・・はぁ・・・あ・・・目が合った。」
「次!コートニー!前へ!」
「ルーク・・・逝ってきます。」
「おぅ、皆の為に1秒でも長く持たせてくれ。
お前の次は俺だろう。」
「旦那の為に妻は頑張らないとね!」
「おぅ、世の男性は稼ぎの良い妻が好きだぞ。」
「くっ・・・最近、扱いが上手くなってきている。」
「コートニー!」
「はーい・・・」
コートニーがトボトボと隊員の下に歩いていく。
「はぁ・・・それにしても・・・軒並み皆が集合しての訓練か・・・」
ルークが周りを見るとさっきまで教室で一緒にいたメンバー全員が集合している。
皆、ボロボロだ。
「ルーク君。」
ルークの後ろから同級生が声をかけてくる。
「どうしました?」
ルークが顔を少し横に向けて答える。
「内部情報、どうもさっきまでジーナ殿とスミス殿がここに居て訓練してたらしい。」
「・・・初めて聞いた情報ですね・・・あの2人はここで訓練をしているんですか?」
「どうもキタミザト子爵からの依頼らしい。
・・・この厳しさに繋がっていると予想。」
「王都守備隊も恩があると聞いていますし、断れないでしょう。
了解しました。
情報ありがとうございます。」
「うん、ルーク君も何かあればよろしく。」
同級生が去っていく。
「ルーク・・・ダメだった。」
コートニーが戻ってくる。
「あぁ・・・意外と持ったんじゃないか?」
「ありがとう・・・」
「マイヤー!前へ!」
次が呼ばれる。
「妻よ、逝ってくる!」
「旦那の稼ぎに期待するぅ。」
「期待はするな。」
ルークはそう言いながらトボトボと隊員の下に向かうのだった。
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