第1559話 ジーナとスミスの訓練。5(訓練後とトップの雑談。)
「ジーナ、お疲れ様。」
エイミーがジーナを出迎える。
「はい、エイミー殿下、訓練に付き合わせてしまい申し訳ありません。」
「良いのよ、私も暇していたし、訓練を見るのも楽しいしね。」
エイミーが答える。
「ありがとうございます。
スミス様は訓練どうでしたか?」
「僕は」
「主はまだまだですよ。
王都守備隊の方に胸を借りているのに1度も有効打を打ち込めていません。
主は基礎をもっとみっちりしましょう。」
スミスに代わりマリが今日の訓練の成果を言う。
「僕の精霊はなんか僕に強く当たるんだよね・・・
確かに良い打ち込みは出来なかったけどさ。」
スミスが若干不貞腐れる。
「まぁスミスもマリの剣術だったかしら?これをやり始めたばかりなのでしょう?
ジーナが異常に上手いだけでスミスはこれから頑張れば良いのよ。」
「ありがとうございます、エイミー殿下。」
「じゃあ帰りましょうか。」
「「はい。」」
「2人とも汗だくね、王城の湯浴み場借りる?」
「「・・・」」
エイミーの言葉にスミスとジーナが顔を見合わせる。
「僕は平気ですが、ジーナに着替えをさせないといけないので貸していただけるとありがたいのですが。」
スミスが言う。
「平気よ、王城内にはいつでも入れるようになっている湯浴み場があるわよ。
といっても来客用ではない所のだけどね。」
「私達が使っても平気なのでしょうか?」
「平気よ、受付はあるけど私も使ったことあるし。
なら、王城に行きましょうか。」
エイミーが席を立ちスミスとジーナの前を歩いて王城に向かうのだった。
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王城の一室・・・陛下の執務室では。
「ふむ・・・ジーナの状態は良いようだな。」
アズパール王がお茶を片手にスミス達を見ていた。
「・・・なんでしょうね・・・王都守備隊の隊員と互角とは・・・
あれでお付きなのですからエルヴィス家とキタミザト家は人材の配置を間違えているのではないですかね?」
オルコットも同じようにお茶を片手に見ている。
内容は非難だが、顔は笑っている。
「人事配置は我らが言う事ではない、各々でやりくりすればいいのだ。
まぁ結果としてはタケオの引きは凄いという事になるんだろうがな。
で?」
「人事局からの要望書が上がってきました。
追加の購入案が来ております。」
「まだ初回導入から1か月弱なんだが・・・検討するなら今が適切ともいえるか。
それで何名だ?」
「追加で最大5名となっています。」
「・・・ふむ・・・5名か・・・総監局としてはどう考える?」
「少ないですね。
半個小隊程度の10名ぐらいだと成果が出やすいので提案としては通しやすいと思いますが・・・教育出来ないのでしょうか?
人事局にしては弱気ですね。」
「まずは5名程度を入れて様子見という所か。
だが・・・いや王都守備隊に入れた3名が良い結果を出しているという事が要因と捉えるべきか?」
「要因としてはそうでしょう。
この件は貴族会議に回します。」
「あぁ、不備がなければ向こうで審議をさせろ。
あとは?」
「各方面の他国との状況がまとまりました。
魔王国側はエルヴィス家が米という穀物輸入を開始し、ウスターソースとウォルトウィスキーをお披露目したとの報告があり、ゴドウィン家は通常の交易との事、カトランダ帝国側は向こうの組織改編がなされたようで少量ながら輸出入を開始しました。
ウィリプ連合国は・・・輸入が大半との報告です。」
「うむ・・・外交局の動きは?」
「途中経過のみですが・・・魔王国については現状は打つ手なし、エルヴィス家、ゴドウィン家、キタミザト家頼りでしょう。
カトランダ帝国については東町にて我が国の物産を扱う雑貨屋を潜入拠点に選んだようです。
現在、拠点に入る人員を選定しているとの事です。
ウィリプ連合国についてはファルケ国にて3か所の潜入拠点を確保し、下地作りに邁進しているとの事です。」
「ファルケ国・・・報告では確か奴隷に割と優しい国家だとあったか。」
「はい、キタミザト殿を契機として改訂した奴隷契約条項をもう少し領主側、契約者側に利がある内容のようです。
ウィリプ連合国全体で見れば穏健派となるでしょう。」
「ふむ・・・隣国としては残しておいても差し支えはないか・・・」
アズパール王はお茶を置き、腕を組んで考えながら言う。
「海岸沿いの村や町を接収し、ファルケ国を残す・・・でしたか。」
「軍務局に考えさせているがあの案より良いものはなかなか出てこないな。」
「あれは一応、陛下からの提案でしたが・・・一番現実味がありますね。
無理がない所が良い所ではありますが・・・こちらの被害がどうなるかによっては腹案が必要です。」
オルコットが考えながら言う。
「ある程度の犠牲は覚悟しているが、憎しみを糧にしての侵攻は歯止めが利かないからな。
領民の犠牲をどれだけ抑えられるかが鍵になるだろう。」
「その通りかと。
ですが、全くなしというのも考え辛いですね。
良き撤退案が提案されれば良いのですが・・・」
「王都の我らでさえ嫌な気分になるんだ、当の領主達となると苦渋の選択を強いる事になるな。
それに内応者がいつ動くのかだな。」
「彼らは日和見ですからね。
当分先の事でしょう。
貴族会議の方々には一部を除きギリギリまで教えないよう徹底させています。
外交局には切れ者を配置していますし、王都守備隊の情報分隊や第1騎士団の潜入をする者達には見聞きが上手な者が行くように人事局と軍務局が手配しています。」
「今はそれで良いだろう・・・だが、優秀な者を集めても良い組織となるとは言い難い・・・人事とは難しいな。」
「はい、それと毎年恒例の王立学院と魔法師専門学院卒業生の出自と配属先リストが出来上がりましたが、如何しますか?」
「あれは息抜きにちょうど良いからな。
じっくりと読もう。」
「息抜きならさらりと読んで欲しいのですが。」
「ははは、息抜き程じっくりとしなくてはな。
さて・・・面倒な書類を片付けるかな。」
アズパール王が自身の机に向かうのだった。
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