第1556話 ジーナとスミスの訓練。2(エイミーとドネリーの進路。)
「・・・総長・・・あの女性隊員なんですか?」
チビッ子精霊達が談笑しているのを気にせずエイミーが隣に座る総長に聞く。
「第二近衛分隊の隊員ですね・・・よくもまぁ上手く打ち合っていますね。」
「それはどちらへの賛美ですか?」
「もちろんうちの隊員ですが?
ジーナ殿は・・・あれでお付きだというのですから他の貴族のお付きが見たら交代を申し出るのではないですか?」
「ジーナは逸材だからね。
スミスは?」
「隊員相手に良く剣を打ち合えています。
なかなかのものでしょう。」
「そういう物ですか。
ドネリー、やらないの?」
「この若さで死にたくありません。」
エイミーが後ろに立っているドネリーに声をかけるが、ドネリーは真面目顔で答える。
「・・・ジーナもああやって頑張っているのよ?やりなさいよ。」
「嫌です!絶対に嫌です!
最高峰の部隊員がああなのですよ?
私が相手になる訳ありません。」
「・・・ジーナとやれと言ってないわよ?」
「どちらにしろ嫌です。
私は分相応を知っています。
王都守備隊に勝てる訳もなく、ジーナ様に勝てもしません。
平々凡々ですから。」
「ドネリー・・・貴女、魔法師専門学院で卒業時9番だったのよね?」
「ええ、卒業と同時にエイミー殿下に付きましたが・・・何か?」
ドネリーが飄々としている。
「はぁ・・・エリート街道だったのを王立学院に入る私付きにしたのは本当に申し訳ないんだけどね。」
「いえ、エイミー殿下に拾って頂いて感謝しております。
あの中に入る気概は持ち合わせておりませんので。」
ドネリーがジーナ達を指さす。
「はぁ・・・流石ね、普通王都守備隊に入れるなんて言わないわよ。」
「おや?そんなつもりはありませんが。
なぜ今それを?」
「私の王立学院卒業後、貴女のお付きの任務は終了します。
その後の任官は思いのまま・・・私の権限が及ぶ限りにおいてね。
今なら王都守備隊にだって貴女を送り込めますよ。」
「・・・無用ですね。」
ドネリーが少し考えてから答える。
「これでも私は顔が広いのよ?
父上の騎士団にだって、他家の貴族家・・・は少しですけど。
出来る限り推薦状は書きますよ?」
「いやですから無用ですって。」
「卒業後どうするのよ?」
「私はエイミー殿下のお付きですよ?
エイミー殿下がご結婚するまで傍にいるつもりですので卒業後の進路は気にされなくて問題ありません。」
「くっ・・・」
エイミーは勢いよく顔を逸らせる、不覚にもジーンと来てしまった。
「早くスミス様を娶って・・・違うか、嫁いでください。」
「・・・ん?・・・そこでなんでスミスが出るの?」
「聞いた所によるとエルヴィス家は楽しいらしいです。」
「うん、そこは何となくタケオさんとアリス様がいるからわかるけど・・・
なぜに私の嫁ぎ先を?」
「私もエイミー殿下に付いて行きますから。
ついでに向こうでメイドか執事に入れて貰って過ごす気満々ですが?」
「んん??・・・ん~・・・メイドか執事が良いの?」
「今さら後輩達と席を並べるのも・・・兵士として今から上を目指すのも大変ですしね。
私の婚期の事も考えるとエイミー殿下付きのメイドで通った方がお相手は見つかりそうですし。」
ドネリーが考えながら言う。
「はぁ・・・とりあえず現状のままね。
私がスミスとどうなるかはわからないわよ。」
「全力で後押しします。」
「余計な事はしないでね!」
「今までだって余計な事は1つもしていません!
例を挙げるならいつスミス様と同衾しても良いように下着の手配からパジャマの手配までつつがなく!」
「全部寝間着じゃない!
そこは全力じゃなくて良いの!」
「ついでにジーナ様を通じてエイミー殿下が無防備な時間帯をスミス様にお知らせするべく日中の行動をメモしております!」
「余計な事をするなと言ってるだろうが!」
エイミーが怒りながら言ってくる。
「・・・これは失礼、今後とも頑張ります。」
「・・・気が抜けないじゃない。」
「人間1日中緊張は出来ません。
どこかに緩む所があります。
そこを突いて頂こうかと。」
「スミスがそんな事する訳ないでしょうが・・・」
エイミーがガックリしながら言う。
「男は時に獣になるとかならないとか、この間読んだ専門書に書いてありました。」
「それなんの本?」
「この間立ち寄った本屋の隅の薄暗い箇所にありましたが。
そういえば成人未満立ち入り禁止とかなんとか立て札があったような・・・」
「あっそ、まぁ私の知らない世界があるのはわかったわよ。
余計な事はしないでね。」
「努力はします♪」
ドネリーが良い笑顔で言う。
「はぁ・・・総長。」
「エイミー殿下・・・お幸せになってください。」
総長が目元にハンカチのような布を当てて泣いている。
「はぁ・・・そういう訳でもないんだけど。
総長は私がエルヴィス家に行ったとしたらどう思いますか?」
「まぁ環境は断然良いと言えます。
幸いにも向こうにはキタミザト家配下の・・・違いますね、王立研究所にはうちの元部下達が大勢いますので、色々とやりとりは出来る環境ですから王都の情報はエイミー殿下も知っておいた方が良いとは思います。」
「王都守備隊からの王家の情報が来やすいかぁ。
アンとクリナの事を考えると王都との繋がりは維持したいわよね。」
「そうですね。
それにエルヴィス家の繁栄がこれから始まろうとしています。
私達の代は問題なくともエルヴィス殿の代では王都との絆が試される可能性があります。」
「政治的な思惑も合致しているのね。」
「エイミー殿下でなくてもという話はちらほらとありますが。」
「次期王位の事と繁栄する貴族とを繋ぐ力を考えればアンが一番でしょうけど、第1皇子一家がどう出るかね。」
「その前にエイミー殿下を入れましょう。
我が国は重婚も認められていますし。」
「王家から2名も嫁ぐなんて・・・前例がなさそうね。」
「エイミー殿下達が作れば良いだけですよ。
アン殿下はキタミザト殿に懐いていますし、エイミー殿下も問題ないですし。
どこぞの貴族にやるよりは・・・とは思いませんかね?」
「その時の情勢により・・・ね。」
「まぁそうでしょう。」
エイミーと王都守備隊総長が雑談を繰り広げていた。
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