第1553話 武雄作業開始。(定期メンテナンスは当然です。)
研究所の3階 所長室。
「3回目~♪」
武雄が試験小隊詰め所から持ってきた戦闘ベストを桶に入れた黒スライムの体液に漬け、持ち上げていた。
「・・・所長、楽しそうですね。」
作業服姿のマイヤーがソファから呆れながら見ている。
「さて、乾かしますかね。」
武雄がマイヤーの呟きに負けずに戦闘ベストを軽く絞り、木製ハンガーにかけコート掛けに吊るし、エアロとファイアで温風を出して乾かしていく。
「いまさらですが、毎回乾かすのですか?・・・3回目で言う私もなんですけど。
それに下に敷いたシーツも結構濡れましたね。」
「垂れるのはしょうがないじゃないですか。
要は膜を作っていく感じですよ。
液体は浸み込みますからね、回を重ねればその分だけ厚くなると・・・思います。」
「元液体だと乾かしても体液に漬けたら溶けだすのではないですか?」
「・・・あ~・・・そういう考えもありますかね。」
武雄が乾かしながら呟く。
「まぁその辺は漬けた物と漬けない物で比較するしかないですかね。
これで防御力が高まると戦闘ベストの価値が上がりそうです。」
「作業服用に作った物ですからね・・・王都に売り出して売れるかは微妙ですけど。
王都守備隊や第1騎士団の制服ってあれだけでしょう?」
「まぁ2種類持っている試験小隊が稀でしょうね。
ん?誰か来ましたか?」
マイヤーが階段を登ってくる足音に気が付く。
・・
・
「では、ここに置いておきます。」
テイラーが所長室の片隅に木箱群を置いて武雄に言ってくる。
「小銃と弾丸・・・もう出来たのですか・・・」
「正確には元々出来ていたんですよ。
いつまでも店内に置いておきたくないので納入しただけです。
あ、それと小銃改シリーズはもう1組作る事はステノ技研から聞いていますから出来次第ご連絡します。」
「ええ、そちらもお願いします。
請求書はヴィクターに渡して処理してください。」
「はーい、了解しました。
では、またのご利用を・・・そう言えばさっき1階の人達に呼び止められたのですが、なんですか?」
「・・・知りません。
テイラーさんに聞くなら何かしら武具が欲しいのでしょう。
商談でしょうから親身になってくださいね。」
「わかりました。
またのご利用をお待ちしております。」
テイラーが所長室から出て行く。
「・・・小銃も揃いましたね。
これで頼んでいた装備一式が納入されましたか。」
マイヤーが積まれた木箱を見ながら言う。
「元々から動きが早い人達ですから・・・早すぎるよなぁ・・・」
武雄が自身の執務机に着きながら呟く。
「半分くらいは所長の所為だと思うのは私だけでしょうか。」
「本人もそう思っているので反論は出来ません。
マイヤーさん、一番上の箱を・・・いや、全部空けて全品検査しますよ。
鈴音を呼んできてください。」
「わかりました。」
マイヤーが席を立つのだった。
・・
・
「・・・清掃が必要なのですね。」
マイヤーが小銃1丁を見ながら言う。
「はい、剣も日ごろのメンテナンスが重要でしょう?」
「まぁそうですけども。」
「して頂くのは弾丸が通る場所の銃身内と弾丸を入れる場所・・・ここの清掃です。
小銃には細い棒が取り付けてありますので、柔らかめの布を付けて銃身内と弾丸を装填する部分を拭いて頂ければと思っています。」
鈴音が小銃のレバーを引き、弾丸を入れる場所を見せながら言う。
「引き金部分は分解はせず、外からこういった少し柔らかいブラシで清掃して頂ければ構いません。」
「鈴音、分解清掃は普通引き金の部分もするのではないのですか?」
「本心では部品全部と言いたい所ですが・・・野外ではそこまで出来ないでしょう。
弾丸を使用する小銃は埃や砂利の影響を一番受けます。
最低でも暴発しない為に弾丸が通る場所の清掃はして頂きます。
引き金部分は2か月に1度程度でメンテナンスに出していただければ分解・清掃をしてご返却します。
それと長期出張に持っていく際や戦争時は持っていく前、帰った時にもメンテナンスに出してください。」
鈴音が言ってくる。
「ここでもメンテナンスですか。」
武雄が「費用がかさむ」と難しい顔をさせる。
「武雄さん、これでも親方達と議論はしたんですよ。
でも現段階では完全な分解・清掃をさせては時間だけが食うし、戦場に持って行って部品をなくされると意味がないという事になって。
最低限の清掃のみで使って貰おうという事になりました。」
「初期段階だからなぁ・・・まぁ下手に中を見て復元出来ないのでは意味がないでしょうかね。」
「はい、それとステノ技研には常に5丁分の全部品が用意してあります。
メンテナンス時に不良部品が見つかったら即時交換する予定です。」
「はぁ・・・定期メンテナンスは了解です。
試験小隊の面々は日常の清掃と取り扱いの方法の習得に全力で取り組んで貰いましょうか。」
武雄が諦めながら頷く。
「そうですね。
スズネ殿、それは事前講習でも説明するのですか?」
「はい、その予定です。
あと小銃の各部の説明と照準の仕方の講義になります。」
鈴音がマイヤーの質問に頷くのだった。
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