第1549話 冒険者組合での打ち合わせ後。(やるならやろう。)
武雄とヴィクターは冒険者組合を後にして伯爵邸を目指していた。
「ミア。」
「はい、主。」
ミアが武雄のポケットから顔を出す。
「冒険者組合に宣言をしてしまいました。
各町の内側では鷲と狼の事件は無くさないといけません。
町に近付き過ぎないように徹底させなさい。
オーク等が町に近付きすぎて手を出した場合、住民に危険が及ぶと思うなら手を出さないという判断もありとします。
信頼が築けるまでは監視と報告、自分の縄張り内なら討伐を許可します。」
「はい、徹底させます。」
ミアが頷くのだった。
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冒険者組合の会議室。
「以上がキタミザト子爵とエルヴィス伯爵からの依頼だ。」
事務所長が組合員を前に武雄との話した内容を説明する。
「・・・画期的と評すれば良いのでしょうか?」
「魔物に警戒を依頼する・・・本当に出来るのでしょうか?」
「だが、キタミザト子爵の言う通り、魔王国の次期国王がどうなるかによっては即戦闘になりかねない。
我々としてもどう警戒させられるか王都で検討しているという話でしたが、何も良い案がないと小耳に挟んでいます。」
「事実戦力差がありすぎる。
キタミザト子爵がする事はその場しのぎなんじゃないのか?」
「しないよりはマシだ。
上手く行けば長期戦に持ち込めて王国を守り切れるかもしれない。」
「確かに今のままでは負けが確定だからなぁ・・・」
「試験的であるのは子爵も伯爵もわかっているのでしょう。
なのでこの街を中心に町までなのでしょう。
範囲が限定的ですから。」
「だが、鷲と狼かぁ・・・」
「鷲と狼以外は討伐依頼を受け付けられるという事なら問題はないんじゃないか?」
「むしろ鷲と狼に関わるなというお触れでも出しますか。」
「それにどうやって事件の調査が完璧に出来るのか・・・だな。」
「鷲が常に監視している・・・とか?」
「こっちで報告書の真偽の確認も大変そうですね。」
組合員がワイワイ話している。
「とりあえず、不安はあるが実施に向けて動こうと思う。」
「王都の冒険者組合にも報告と類似依頼の照会ですね。
もしかしたら他地域でもしている可能性もありますし。」
「・・・どこが?」
「魔王国かウィリプ連合国ではしている可能性は高いと・・・状況が違うか。」
「よし・・・不安はあるがやらない事には始まらないだろう。
どちらにしても伯爵家と子爵家は動くんだからそれに対応してこっちも動かないと不都合が起こるだろう。
まずは、各冒険者組合事務所に掲示、街や町の入り口に立て札で周知だな。」
「受付達にも説明が必要です。
虚偽の際の対応も説明出来るようにしないとですね。」
「・・・あぁ・・・多分、見つけ次第兵士達が問答無用で捕まえるか・・・
この街を出た瞬間に仲間の狼が襲うんだろうな。」
「・・・というより集団で動く狼達を冒険者達が襲うんですかね?」
「わからんが・・・狼と鷲と見るから混乱するが、一兵士が貶められたと考えるなら・・・」
「エルヴィス家の兵士ならまだ穏便ですが、キタミザト家はドラゴンも飼っているという噂でしたよね。」
「匿った者達も一緒に・・・だろうな。
この世は死人に口なしだ。」
「どちらにしても冒険者組合に被害がないようにしないといけませんね。」
「あぁ、それにこれが上手く行けばアズパール王国全土で協力的な魔物との共存体制が確立されるかもしれない。
我々が先んじて規則を作ると考えよう。
さぁ仕事だ。」
「「「はい。」」」
組合員が席を立つのだった。
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軍務局内。
「・・・んん~・・・」
兵士長がリストを見ながら悩んでいた。
「兵士長殿、どこに悩み事が?」
「それはもちろん大演習に参加する小隊ですよ。」
「4小隊は確定なんだが・・・ほぼ100名だよな。」
「現状4小隊で84名です。」
「・・・抜けたからな。」
「ええ、となると参加はあと5小隊100名でしょう。
どうするか・・・」
「巡回組で街にいる小隊も組み込むか?」
「んん~・・・それも良いんですけど・・・騎士団長、騎士団から回復役を回して貰えませんかね?」
「魔法師も抜けただろうからな。
2小隊回せるぞ、今回は3人相手だから回復役は多い方が良いだろうしな。」
「そうですね・・・2小隊でもありがたいですね。
だが、攻撃に移るのは5小隊と新兵小隊2小隊でしょうね・・・足りるのだろうか。」
「なんとかするしかないだろう。」
ハロルドが兵士長に同情しながら言うのだった。
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エルヴィス家。
「ただいま戻りました。」
「キタミザト様、おかえりなさいませ。
昼食は準備中です。」
玄関に入るとメイドが出迎えてくれる。
「昼食は私の分はないでしょうから、気にしなくて良いですよ。
それよりも伯爵は執務室ですか?
冒険者組合に行ったので報告に行きたいのですが。」
「はい、では先導いたします。」
メイドと一緒に武雄とヴィクターはエルヴィス伯爵の執務室に向かうのだった。
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