第1544話 エリカの勉強意欲。(コラ達の活動を了承する為には。)
「それとエリカさん、5月半ばの予定で王都で招集がかかるのでそれに向けて移動をします。
詳しい日程は後日ですね。」
「わかりました。
カサンドラ、ペイトー、それに合わせて帰りますよ。」
「「はい。」」
「エリカさん、結構王都を空けましたけど平気なんですか?」
「私がやる事は実はもうないんです。」
エリカが苦笑しながら答える。
「そうなのですか?」
「ええ、例の卸売市場関係が一段落してまして、今は新たに任命した局長達が領内の整備に動いているんです。
政策として今は調整期間で新たに何かを提案する時期ではないんです。
なので、私は知見を広める為にタケオさんやエルヴィス伯爵達の動きを見て、領地移動後に何か提案出来ないかの外部研修みたいな物なのです。」
「へぇ~。
うちに来て勉強になっています?」
「なっていますよ。
例のお城兼宿もそうですが、エルヴィス家では当時の情勢下では不採用になった案も今なら出来そうな物も見せて頂いて・・・王都だけだと各地方の成功のみが記録されていて、不採用になったり成果が芳しくない政策は書き止められる事が少ないんですよ。
来て正解です。
本当は他の貴族方にもお願いしたいですが、他家・・・それも王都の人間が気軽に頼めないのでエルヴィス伯爵が了承してくれてありがたいです。」
「うむ・・・まぁレイラが居るからというのも許可した理由じゃが・・・見られて困るような事はしておらんからの。
エリカ殿のように、友好があったりする者なら読んでみると良いと思っただけじゃよ。
失敗を他家の人間に見せるのは恥と捉える事も出来るがの。
孫が嫁いでいる地で同じ失敗はして欲しくはないからの。
それに我が領では不採用でもウィリアム殿下領では出来る事もあるだろうしの。
それにしても、エリカ殿は我が家に来た時よりも迷いが吹っ切れているの。」
「伯爵様・・・私、そこまで顔色悪かったでしょうか?」
「いや?悪くはなかったがの、思い詰めておったようじゃ。
最近は幾分笑顔が見えるからの・・・滞在中に吹っ切れたかの?」
「まぁまだ少し考え込んでしまいますが・・・エルヴィス家の歴代の政策案を勉強させて頂いて、政策に必要な幅と深さを思い知りました。
私の悩みは浅かったです。
ああいった細やかな事を気にするよりももっと長期視点でみたり、予算の大枠の考えを持って臨む事が大事だと思いました。」
エリカが良い顔で頷く。
「うむ、エリカ殿が満足なら良いの。」
「お爺さま我が家としてはどうなのですか?」
「フレデリック。」
「はい。エリカ様には申し訳ございませんが、ある意味外部からの監査として昨年実施していた政策の案や実施経過報告書、予算振り分け等を最初の頃に見て頂き、指摘等をして頂いております。」
フレデリックが言う。
「大きな間違いはなかったと思いますが。」
エリカが思い出しながら言う。
「はい、少々計算を間違えていた所を発見頂きました。
全体的には軽微な指摘のみとなっております。
また最近のエリカ様は過去20年程度を遡っての政策案の確認をされております。
資料を集める若手達もエリカ様に触発され、仕事の合間に古い政策案を見始めているという報告もあり、若手の意識改革が出来て感謝しております。」
「いえ、こちらこそ古い資料を持って来て貰ってありがたいです。」
フレデリックが頭を下げるとエリカも頭を下げる。
「ふむ、なのでアリス、エリカ殿が資料を見る事は文官達に良い刺激になっておるの。」
「そのようで。
古い政策案を見て新しい事を提案してくれれば良いですね。」
「そうじゃの。
じゃが、すぐにどうのこうのではないのは確かじゃの。
フレデリック、良い風が吹いているの。」
「はい、エリカ様のお陰です。」
「私が役に立ったのなら嬉しい限りです。」
武雄達は楽しそうに話すのだった。
「主・・・ちょっと相談なのですけど。」
ミアが机に座りながら言う。
「うん?どうしましたか?」
「はい、コラを頭にして東と南西の狼と北の鷲でこの街周辺の監視をするじゃないですか。」
「そうですね。」
「私達が考えたのはこの街と東町、南町、西町、北町を繋ぐ街道を守り、さらに他の魔物の調査と管理をしようと思っているんです。
それでこの街を中心に考えて、各町から内側での鷲と狼の討伐禁止をして貰えないですかね。」
「・・・冒険者組合ですか。
エルヴィスさん、どうでしょうか?」
「ふむ・・・依頼は出来るだろうの。
じゃが、反対に言えばその範囲で狼や鷲が原因で何かあった場合は問答無用でわしらが非難されるという事じゃの。
ミア、ちゃんと管理は出来るかの?」
「はい!・・・としか言えないです。」
ミアが微妙な顔をさせながらエルヴィス爺さんに答える。
「タケオはどう思うかの?」
「領内全域ではなく町と街の間だけとなると範囲が限定出来ますから問題ないのではないでしょうか。
その部分の治安が良くなれば人の移動も良くされるでしょうから活性化にもつながるかと思います。」
「フレデリック。」
「私としても問題ないと思われます。
狼や鷲達が町の周囲にも居てくれるのであればオーク等が侵攻して来る事もなさそうですし、万が一、魔物が大量に発生した場合でも早い段階で対応が可能でしょう。
それとタケオ様、夕霧様に頼んで各狼と鷲にスライムの同行は出来ないでしょうか。
そうすれば何か狼達が原因として問題が起きた際に夕霧様達が同行したスライムを吸収して状況を確認し、公正な判断が下せると思いますが。」
「確認します。
ただ、スライムが狼に乗って同行は難しいかもしれません。
なので各所に配置しておいて狼や鷲が攻撃を受けた、もしくは攻撃をした等の状況を遠くから監視するようにする事ならこの場で実施出来ると言えます。
例の情報網の話ではありませんが、スライム専用通路を少し細やかに配置してみましょう。
そこは夕霧達に依頼しておきます。
そうすれば何かあった際に見ていなかったという事にはならないと思います。」
「うむ・・・ならタケオ、ミア、冒険者組合向けに依頼状を書こうかの。
タケオが交渉して来る事。」
「はい、ミアの頼みです。
何とかしてきます。」
「主~!ありがとうございます!」
ミアが嬉しそうに武雄に抱き着くのだった。
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