第1539話 一時帰省。(新人教育。)
帰り支度をしたケイとパメラがケイの実家の玄関で話をしている。
「じゃあ、お母さん。
まだ新人だから休みは中々貰えないかも・・・頑張るね。」
「うん、頑張るのも良いけど、兵士は体が基本だから健康管理は注意しなさい。
あと無理かもしれないけどキタミザト様に迷惑かけないようにね。
コーエンさんも体調に気を付けてね。
それと娘が迷惑をかけるかもしれないけど支えてくださいね。」
「いえ!私の方こそケイさんにお世話になってしまっていて申し訳ありません!」
パメラが恐縮する。
「あー、この子は図太いから他人の事には大丈夫よ。
誰に似てんだろうね~。」
「図太いのはお母さんかな?」
ケイが苦笑する。
「こういう子よ。
ま、お父さんの血が入っているなら前線兵士としてよりも犯罪捜査が得意かもしれないし、聞いた感じだとキタミザト様の試験小隊は合っているかもね。
ケイ、お父さんの影は追わなくて良いわよ。
貴女は貴女、目の前の仕事をきっちりと熟しなさい。」
「うん、わかっている。」
「はぁ・・・本当にわかっているんだか・・・ま、辛くなったらまた来なさい。」
「うん。」
ケイが頷く。
「お姉ちゃん帰るの?」
と妹がやってくる。
「うん、また来るわ。」
「へん!お姉ちゃんが王立のそれもキタミザト様の部下なんて大丈夫!?
どんだけ人員が居ないの?」
弟が生意気な事を言ってくる。
「ふふふ、そういう言葉は魔法師専門学院に入って順位1桁で卒業してから聞きたい物ね。
私は7位よ、さぁ抜けるかな?」
「所詮7位でしょ?俺なら5位以内は確実だよ。」
「ははは、まぁ期待しているわ。
私の順位を抜けれたら好きな物を買ってあげるわよ。」
「絶対だからな!」
「はいはい。」
弟の喧嘩腰にケイが適当にあしらっている。
「あの・・・コーエンさん。」
「はい、何ですか?」
ケイの妹がパメラに声をかける。
「姉をよろしくお願いします。」
「はい、ですが、ケイさんは私より優秀ですから話相手にしかなりませんけどね。」
「それでも、よろしくお願いします。」
「ええ、2人で頑張りますよ。」
パメラがケイの妹の頭を撫でながら言う。
「パメラ、行こうか。」
「うん、お食事ありがとうございました。」
ケイとパメラが家を出るのだった。
「・・・陛下直轄の軍務か・・・大出世よね。
お父さんが見たら腰抜かすかな?」
ケイの母親が娘が出て行った扉を見ながら言うのだった。
・・
・
「上位5位以内か・・・」
パメラが呟く。
「パメラ・・・卒業順位なんて関係ない。
私達は学院の物差しで測られたけど、キタミザト様はパメラの素質を気に入ったから雇った。
そして配属されたけど卒業順位なんて関係ないのもわかった。
私達は努力するしかない。」
「うん、そうだね・・・やるしかないよね。
朝から走り込みかぁ・・・」
「・・・早く帰ろうか。」
ケイとパメラが寮に向かうのだった。
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酒場にて。
「えー・・・新人の訓練てこういう事をするんですか・・・」
武雄がアーキンから渡された訓練内容を見て呆れていた。
「それでもかなり絞ったんですよ。
ちょうど良い広さの訓練場ですし。
行きは無魔法、帰りは身体強化、これを全力5本です。
魔法も使用していきますが、基礎体力向上と魔法の短時間での使用方法を学べます。」
「往復2㎞を5本の走り込み・・・大変そうですね。
で朝食取って、実戦形式の模擬戦と省力魔法?」
「あ、それはアーリス殿が考案した最小魔力で発動させる訓練です。
初めての訓練なので新人達も含めて私達の能力が伸びるようなら王都に報告です。」
「へぇ~・・・で、本来ならこの後に小銃訓練と・・・派遣研修まではしないのでしたね?」
「はい、当分は基礎訓練ですね。
小銃訓練がない分だけ模擬戦の密度が上がるかと。」
「昼過ぎが本来は会議や試験、今は基本的な戦闘形式と荷駄の運用といった座学・・・ん?夕方また走り込み?」
「はい。
最後のは時間が余っていれば研究所周りを走らせようかと・・・無理でしょうが。」
「そうなんですね。
・・・密度が濃いですね。」
「本来なら1日毎にやる事を分けて教えたい所ですが・・・
講師を担える人数自体が少ないので、毎日同じ時間に訓練と座学をしないと講師陣の入れ替わりに時間がかかってしまいます。」
「小部隊故の弊害・・・ですかね。」
「そうですね。
王都の第1、第2騎士団なら講師陣が付きっ切りで訓練も座学もしますけど。
研究所の試験小隊だと人数が居ないのでベテラン組と新人組が同じ場所に居ないと移動だけで時間を取ってしまいます。
これでは効率が良くありません。」
「ふぅ・・・任せます。
もし上手く行かないなら日毎に分けた方法も取り入れて行った方が良いでしょう。」
「はい。」
アーキンが頷く。
「トレーシー、筋肉痛どうする?」
「我慢します・・・ケアかけるのを寝る前にします。
それで勘弁してください。」
アンダーセンに聞かれたトレーシーが俯きながら言う。
「可哀想にな。
私もいずれはそうなるかもしれないな。」
「マイヤー殿も日中参加すれば良いのでは?」
マイヤーの呟きにオールストンが聞いてくる。
「朝食後の模擬戦くらいには参加したいが・・・
当分は無理だな。」
「そうなのですか?」
「研究室が出来るまではトレーシーが試験小隊付きだが、同時にスズネ殿が所長付きで講師の演習をするから私はそれに参加だ。
内容はわからないが、スズネ殿の講義を所長と私が聞いて質問する形になるのだそうだ。」
「うへぇ・・・それも大変そうですね。」
「あの2人の話合いに参加だからなぁ・・・どうするか・・・」
「「頑張ってください。」」
ブレアとアーリスが言ってくる。
「たまにはそっちに参加させて貰う程度だろうな・・・」
マイヤーもマイヤーで悩むのだった。
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