第1538話 終業時間です。(飲み会するよ。)
「ほら!定時です、仕事終了!
早く帰って!お風呂入って!家族団らんして!ゆっくり寝なさい!」
帰り支度をした武雄がマイヤーと鈴音、ヴィクターとアスセナと初雪を伴って1階の試験小隊詰め所に来ての第一声だった。
「「!!?」」
皆がバタバタと帰り支度をし始める。
「所長、このあとどうしますか?」
マイヤーが聞いてくる。
「ふむ・・・皆にああは言いましたけど、開所日ですし軽くどこかで飲んで帰りますかね。
それで家族持ちはさっさと帰しますか。
あ、アニータとミルコとは食事してきますかね。」
「私もアニータ達に付き合いますか?」
「そこまで無理はしなくて良いですよ。
アーキンさんとブルックさんも居ますから平気ですよ。
軽く・・・本当に軽く飲みましょう。」
「わかりました、少しお付き合いさせて頂きます。」
「皆が深く飲まないように注意しなきゃいけませんね。」
「はははは・・・平気ですよ?多分。」
マイヤーが苦笑してくる。
「よし!ほら!飲みに行くよ!
支度まだですか?」
「もうちょっとです!」
武雄が皆を急かす。
「所長が奢ってくださるそうだ!」
「え?・・・まぁしょうがないか。」
マイヤーの一言に武雄が諦める。
「本当ですか!?ちょーっと待ってください!」
「戸締り戸締り!!」
「各棚の鍵確認は!?」
「しました!」
「よし!廊下側のロッカールームは?」
「これからです!」
皆が慌ただしく帰り支度をするのだった。
・・
・
なんだかんだと皆が集まる酒場にて。
「~♪」
武雄がワクワクしながら席に着いている。
「所長、楽しそうですね?」
ブルックが聞いてくる。
「実は私、こういった場に来るのほぼ初めてなんですよ。」
「そうでしたっけ?」
「ええ、中々来れなかったんですよ。
連れがいつも私の料理を期待しますしね。」
「ああ~・・・そうでしたね。」
ブルックが頷く。
「それにしても所長、あの料理の頼み方はなんですか?」
ブレアが苦笑しながら言ってくる。
「ん?・・・やってみたかったんですよ♪
ある意味夢が叶った感じです。」
「ですけど・・・メニューを持って『ここからここまで1品ずつ』なんて初めて見ましたよ。
良くやりましたね。」
「やる人居たんですね。」
「やってみたいけど怖いよなぁ。」
「ちょっと格好良かったです。」
ベテラン組4名がある意味尊敬の眼差しを武雄に向けてくる。
「ははは、まぁ気持ちはわかります。」
「気持ち良いんですよね。」
アーキンとアンダーセンが言ってくる。
「おっ、アンダーセンさんはあるんですか?」
「私も若かりし頃あります。
注文している時は気持ちが良いんですけど、懐に大打撃です。」
「お~ちゃんとお金は持って来ていますよ~。
料理は頼みましたし、お酒もボトルで頼みましたし・・・大丈夫!」
武雄が軽く懐具合を見てから答える。
「そう言えば所長は何の酒を頼んだんですか?
すぐに決めちゃっていましたけど。」
トレーシーが聞いてくる。
「ウォルトウィスキーですよ。
10本入れましたけど?」
「え??1人、2人、3人・・・10本?」
トレーシーが皆の人数を数えて武雄に聞き返す。
「足らない分は皆で均等割りですよ。」
「「「「足りますよ!」」」」
「あ、そうか、軽く食べて終わらせるから残るかもしれないのか・・・
アスセナさん、残りはベルテ一家に土産で持って帰りなさい。」
「わかりました。
向こうで処理させます。」
アスセナが頷く。
「えええーーー!?ウォルトウィスキーですよね!?」
「手に入らない可能性が高いウォルトウィスキーですよね!?」
「この間普通に東町に持っていきましたけど。
流通量が少ないと言われているウォルトウィスキーですよね!?」
ベテラン組が驚く。
「あれ?皆さんに飲ませましたっけ??」
武雄が首を傾げる。
「こっちに来てから頼んでも『今日は入荷してません』と言われているんです!
最初の1回しか飲んだ事ありません!それもコップでです!」
オールストンが言う。
「ん???・・・・毎月200本は街中に出る予定なんですけ・・・あ、商店数からすれば足らないか。」
「なんで所長が来たら10本もあるんですか?」
「さぁ?入店した時に『ウォルトウィスキーありますよ』と言われましたけど?
ウォルト社長さんを応援する立場から『あるなら頼まないといけないなぁ』と思っただけなんですけど。
確かに流通量が少ないのになんで10本もあるんだろう?」
武雄が悩む。
「料理と酒をお持ちしました!!」
店員が4名がかりで持ってくる。
「お~♪良いですね。
細かい事は後で考えますか。
さ、皆お酒を個人で作って、あ、ミルコ、アニータ、リンゴのジュース来ましたか?」
「「来ましたー。」」
「よしよし。」
「所長、私作りますよ?何作ります?」
「あ、各作り方のメモ書きが添付されているのですか。
私は水割りで。」
「はい、わかりました。
えーっと・・・水とウォルトウィスキーの割合が・・・」
ブルックが手慣れた手つきでメモを見ながら作っていく。
「あれ?皆さんロック?
というより氷あるのですね。」
武雄が皆が各々に持っているグラスを見ながら言う。
「氷は自前です。」
「というより私が作っています。」
アーキンとブルックがブリザドで器用にグラスに入れていく。
この集まりではアーキンとブルックが下なので忙しそうに作っていく。
「所長、作りました。」
「ブルックさんありがとうございます。
アーキンさんもご苦労様。」
「「はい。」」
「さて、行き渡りましたか。
訓辞は昼したので、長々とは言いません。
開所日です、今後の研究所が大きくなるのも小さくなるのも私達次第です。
ですが、仕事のみに囚われず、家族との時間、自分の時間を大切に過ごしていって欲しいです。
そして皆さんのご家族が健康にそして笑って過ごしていける日々が続く事を望みます。
ご唱和ください。
いざ!」
「「「いざ!」」」
研究所の面々がグラスを傾けるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




