第1537話 ちょっとブレイク。(例の衣装製作開始。)
ラルフ店長の仕立て屋。
「「キャーーーーー!」」
甲高い声が奥から響く。
只今奥は男子禁制です。
「こここここっ・・・・」
アリスがコノハに向かって慄いている。
「・・・アリス、鶏?」
「違います!コノハ!なんですかその服は!」
「え?」
「ん?」
アリスの指摘にコノハとペイトーが不思議そうな顔をアリス達に向ける。
コノハとペイトーがラルフの仕立て屋の奥で女性店員に指示をして仮縫いしているのは武雄依頼のパナ用罰用衣装「薄ピンクの超ミニスカでブリブリなフリル付き衣装」だった。
マネキンのような物に着付けをしながら楽しんでいる。
「いや・・・研究所の1階の配膳係用の衣装よ?
ペイトー、どう?」
「可愛らしいですね。」
コノハの言葉にペイトーが頷く。
「短い!短い!」
「そうよ!短いわよ!」
アリスとエリカが言ってくる。
「腕の裾かな?」
「確かに配膳だともう少し裾を短くしますか?
七分袖くらいが良いでしょうか?」
「ペイトー、カットソーと言いなさいよ。
むしろ七分袖と言うのは私の言葉よ。」
コノハが困る。
「ちょーっと!そっちじゃなくてスカートの方よ!」
「足をそんなに出しちゃダメよ!」
アリスとエリカが抗議してくる。
「ニーソックスにする?」
「膝上靴下ですか。
靴下・・・ん~・・・出来ますかね?」
コノハとペイトーが2人の契約者を無視して話をしている。
「コノハぁ、足出し過ぎよ。」
アリスが心配そうな声で言ってくる。
「え~・・・まだ膝上10㎝よ?」
「ま・・・まだ!?」
アリスがコノハの言い方に驚く。
「アリス、さっきコノハと言いましたが、膝上靴下すれば肌の露出少ないのでは?
あ~・・・何か布ありますか?」
ペイトーが女性店員に言うと女性が布を持ってくる。
「こうやって・・・」
ペイトーがマネキンのような物の足に布を巻く。
「・・・ダメでは?」
エリカが言う。
「「ええええ?」」
コノハとペイトーが抗議の声を上げる。
「もう少しスカートを伸ばしなさい。
せめてタケオ様の研究所でスズネさんやブルックさん達が着用している膝丈にしなさい。」
アリスが言ってくる。
「「・・・」」
2人が不貞腐れる。
「・・・いや、ダメだって。
風紀が乱れます。」
「んん~・・・ペイトー、どうする?」
「膝丈ですかぁ・・・ん~・・・どうしましょう。
可愛くしたいですよね。」
「だよね~。」
コノハ達は修正を始めるのだった。
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研究所の3階 所長室。
「・・・」
パナが窓から外を見ている。
「パナ、どうしましたか?」
武雄が聞いてくる。
「いえ、この通りは文官達が多いのだなぁっと。」
「官庁街ですからね。
研究以外でしたい事がありますか?」
「いえ、特には。
スライムの研究は楽しそうですし。」
「そこは任せます。
あ・・・鈴音、ステノ技研に依頼が出せそうですね。」
武雄が書類を見ながら言ってくる。
「何かあるのですか?」
「王都の専売局から鉄鋼材の開発依頼が正式に来ましたので、受諾する旨の返事をしますからね。
ブラッドリーさんには言ってあります。
確かベインズさんが中心になるという話だったような気がします。」
「わかりました、言っておきます。」
「試作する配合リストと最小高炉の設計図は貰う手はずになっています・・・あ、書いてあった。
貰えるようです。」
「どんな材質の開発なのですか?」
「配合通りに2cm四方で長さ20cmの物を11本作り出して、無作為に5本選び、折れるまで荷重をかける試験をして評価するそうです。」
「なるほど。
製作依頼なのですね?」
「ええ、ですけど依頼にない配合を考え付いて試作して、その配合が一定以上の質の製品になった場合に成果報酬として一括で支払いしてくれるらしいです。」
「へぇ~・・・新配合ですか・・・
ん~・・・」
「鈴音は何か作りたいですか?」
「材料はわからないですね・・・プラスチック系はスライムですよね。
鉄はありますし・・・ん~・・・あ!アルミは?」
「アルミニウムですか・・・王都で見た鋼材リストにはありませんでしたね。」
「ないんですか。」
「いや、名前が違うのかもしれません。
それに発見されていないのかも・・・」
「鉄みたいに溶かすのではないのですか?」
「確かアルミって凄い精製が面倒だった気がするんですよね・・・
果たしてこの時代に出来るのか・・・それをするぐらいなら黄銅を作りたいですね。」
「黄銅?」
「鈴音にわかりやすく言うと・・・ドアノブでしょうか?
金色のドアノブを見た事ないですか?」
「あります!でもあれって鉄とかアルミに何か塗ったんじゃないんですか?」
「違いますよ。
黄銅は銅の合金で加工がしやすいのでアルミが普及するまで家具によく使われていましたね。」
「へぇ~・・・黄銅・・・この世界ではないのですかね?」
「んん~・・・あるのかもしれないですけど・・・リストに無いという点はアルミニウムと一緒ですね。
これから調べないといけないでしょう。」
「材料も作っていかないといけないのですね。」
「材料が増えると選択肢が増えますからね。
製造工房としては良い事だと思いますよ。」
「とりあえず、親方達には伝えます。」
「ええ、お願いします。」
武雄が頷くのだった。
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