第1532話 その頃のミア達と伯爵。(皆真面目に仕事しているね。)
試験小隊の訓練場にて。
ミア、コラ、鷲、狼達そして、時雨とビエラ、クゥが試験小隊の休憩所で打ち合わせをしていた。
「あ~・・・やはり西側への派遣はクゥが居た所まで行かないといけないですかぁ・・・」
ミアと時雨がエルヴィス邸から持ってきた地図を見ながら言う。
「あ?」
「それはビエラだからですよ。
それにこの場所はクゥの元住み家です。
クゥとしてはどう思いますか?」
「きゅ?」
「・・・ドラゴン2名に聞いたのが間違いでした・・・
はぁ・・・魔力溜まりの数がなぁ・・・
私達の計画では街と各町を繋ぐ街道を守り、さらに他の魔物の索敵と管理が目的です。
この計画を持って、東町、南町、西町、北町から内側での鷲と狼の討伐禁止を主と伯爵様に願い出るつもりだったのに・・・相応の数を養えるだけの魔力溜まりが西町の先・・・領境にしかないとは・・・」
「ガウッ?」
狼の1体が吠える。
「確かに生息には適していますし、他の主格が居ないのですから魔物を監視および管理をするのにも邪魔は入らないでしょう。
それでも領境です・・・相手は冒険者の可能性も高いでしょう。
各町からこの街までの内側のみという条件を持って主や伯爵様に冒険者組合と話し合って貰い、鷲と狼の討伐依頼の不許可を実施しないといけません。
なので貴方達の生息地はこの街を中心に各町までの間になります。
そこでの魔物討伐は私達が担当し、人間や商隊を襲わず共存をしていかなくてはいけません。」
「ニャ。」
「クルッ。」
「ガウッ。」
コラ達が吠える。
「ええ、そうです。
今までお互いの縄張りだけを守り、牽制し合っていたのでしょうが、時代が変わったのです。
人間と共に領地の安定化をさせる時がきました。
人間は臆病だと聞いています、自分達に何か不利益になればすぐに討伐される可能性があります。
まずはこの地域全体の魔物の討伐と監視と管理を任せて貰い、私達は安全で有益だという結果を出します。
結果を出せば人間達から無用な襲撃はされないでしょう。
人間を含めた私達全員の子孫が安心して暮らせる地域を作り出すのです。」
「ニャ。」
「クルッ。」
「ガウッ。」
コラ達が吠える。
「うん・・・なのですが・・・
西町とこの街の間に魔力溜まりがないとは思いませんでした・・・
これは最新なんですよね・・・」
「そうっスよ~、最新の領内地図っス。
街を中心に町までの状態は2日前の状態っス。
特に異常の報告は来てないっスね。」
時雨が報告してくる。
「スライム達が見逃すとは思えません・・・ないかぁ・・・」
ミアがガックリとする。
「あー?」
「きゅ?」
ビエラとクゥがミアに言う。
「ダメダメ、そんな危険は主も私も許しません。
クゥの居た所は確かに魅力的ですが、人間と交戦を否定できません。
人間と一度戦ってしまうと他の森にすむ者達にも影響を及ぼします。
あくまで私達の陣営は街と各町を繋ぐ街道を守るという名目で不戦をお願いするのです。
なので、基本はさっきも言ったように町の内側での活動が基本指針です。」
ミアがビエラとクゥの意見を否定する。
「あ~?」
「きゅ~?」
「だからそれが難しいのですよ・・・
ん~・・・東と北、南は皆で監視と協力しての間引きは出来るけど・・・ん~・・・」
「クルッ?」
「確かに西側に常駐しないで監視をするなら鷲達の機動力が要ですね。
そこはお願いするしかないですし、各住み家間での連絡もお願いする為、あまり数が出せないでしょう。
それに・・・西側で異常を見つけて東と南から募って西に討伐しに行く・・・町間内とはいえ結構な距離の移動です。
疲れで戦力が落ちるのは避けたいですよね・・・常駐出来る所があれば解決するのですけど・・・」
「ニャ?」
「コラの言う通り、2日交代で派遣するというのも手ではありますけど・・・それをやると南の狼達が一番忙しくなります。
1つの家族を忙しくするつもりはありません。
皆が均等に忙しい状態を作らないと意味がないでしょう。
どうやったら良いのでしょうか・・・」
「ニャ。」
「クルッ?」
「ガウッ?」
ミア達の会議は続くのだった。
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エルヴィス伯爵邸の伯爵の執務室。
エルヴィス爺さんとフレデリック、監視役・・・雑用係のメイドと夕霧が揃っていた。
「今年も作物が順調に育っているようじゃの。
北町はライ麦の増産が上手く行きそうではあるか・・・南はこれからじゃの。」
エルヴィス爺さんが報告書を見ながら言う。
「そうですね。
それに例のスライムの体液を混ぜた高性能肥料ですが、さすが森の管理人達です。
試験している者達から『使用した畑の作物の茎が少し太いようだ』との報告も上がってきています。」
「なるほど、良い方向に向かっておるの。
じゃが、使いすぎても畑に何か影響が出るかもしれぬ。
あまり一か所に大量に投入は出来ぬの。」
「はい、心得ております。
それに高性能肥料もそこまで多く用意は出来ませんので、投入する地域もしくは品種をまずは限ろうと思います。」
「そうじゃのぉ・・・早く実り豊かな土地にならんかのぉ?」
「ははは、皆がそう思いながら着実に仕事をしております。
さて、今度はこっちの報告書を。」
「はぁ・・・これは・・・港湾部からじゃの・・・
・・・はぁ・・・これはちょっと予算超過じゃ・・・」
「ですね。
如何いたしますか?」
「どうもこうもやるしかないしの・・・
じゃが、もう少し安く出来ないかの?」
「はい、私もそのように考えておりました、後ほど指示します。
単品でみれば銅貨数枚の差でも多くをすれば金貨数枚、数十枚の差になりますから。」
「そうじゃ・・・はぁ・・・これからこういう報告が増えるのかのぉ?」
「はい、なので主にはしっかりと夕食と睡眠を取っていただかなくてはいけません。」
フレデリックがエルヴィス爺さんから報告書を受け取りながら言う。
「・・・もう少し楽になると思っておったのじゃがの。」
「それはスミス様に家督を譲られてからでしょう。
さ、次はこの報告書です。」
「・・・夕霧、夕食はまだかの?」
エルヴィス爺さんがソファに座り、メイドに文字を教わっている夕霧に聞く。
「・・・2分前に見回りのスライムが来ましたが、今料理人達が作っています。
まだまだ先です。」
「そうかぁ・・・・はぁ・・・次は・・・」
エルヴィス爺さんのため息が深いのだった。
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