第1530話 研究所開所日。7(休憩中。)
研究所の3階 総務部のカウンター。
鈴音が2階の研究室の室内図をパパっと書いている間、武雄とトレーシーが雑談をしていた。
「ジーナの分は招集の際に持って行きますけど、
スミス坊ちゃんの分は考えていませんでしたね。
そこはエルヴィス伯爵に聞いておきますね。」
「はい、それがよろしいかと思います。
盾の話ですけど、王都で買った資料がまだ我が家にありますが、いつ持って来ますか?」
「個室が出来てからで良いですよ。
それに棚も多少は入れるんでしょう?
2階の書庫に移動はまだ先で良いのではないですか?」
「棚ですか・・・所長の考えではどのくらいの個室を考えていますか?」
「前にも言いましたが図面台が入り、筆記する机があり、小さな本棚がある程度の広さで問題ないのではないですか?
何か組み立てたりするのなら個室ではなく共用場所を設けて工作して、また個室に戻って筆記する。
共用場所にも机と椅子を用意すれば組み立て等をしながら書き取りが出来るでしょう。」
武雄が言う。
「では個室を作って・・・扉を作ると狭く感じそうですね。」
「個別扉は要らないでしょう。
倒れられていても発見できない可能性がありますからね。
入り口には簡単な暖簾・・・上半身が隠れるくらいのカーテンでもかけておき、誰でも入れるようにしておきましょう。
個室ではありますが、あくまで仕切のみです。
広さは奥行3m×幅2mか3mくらいで良いのではないですか?」
「んん~・・・机と図面台と簡易本棚。
結構手狭になりそうですね。」
トレーシーが考えながら言う。
「まぁ室内は無限に広い訳ではありませんからね。
横に広げられないなら縦に広げるのが上手い空間利用という物です。
パナ。」
「はい、タケオ。
打ち合わせに私も参加ですね。」
チビパナが武雄の肩に乗り言ってくる。
「ええ、パナに取っては小さい規模になってしまうでしょうが個室の話を決めなければ先に進めません。
トレーシーさんと鈴音と話し合いなさい。
私は今日は所長室に・・・研究所内にいますから定時まで話し合って方向性を決める事。
必要な資料があるなら明日、手分けをして業者に問い合わせに行きなさい。」
「はい。」
「よし!研究室の広さ写しました。
会議室で打ち合わせですよね。」
鈴音が写し終わって武雄達の下にやってくる。
「トレーシー、スズネ、よろしく。」
「はい!パナさん!」
「じゃあ、さくっと個室の間取り決めますか。」
パナが人間大になり、トレーシーと鈴音に挨拶し、研究室組は会議室に向かうのだった。
・・
・
15時くらいの研究所の3階 所長室。
「おかしい・・・」
アスセナがソファに座り、目の前のスイーツを凝視しながら呟く。
ヴィクターとアスセナは2人なので交互で休憩を取る事にした。まずはアスセナから休憩をとなったのだが、その時に総務部(所長室の向かいが総務部)でヴィクター、マイヤーの2人と話をしていた武雄が
「今日は研究員達が会議室を使っているから、休憩は所長室でしなさい」と言って反論する前に他2名が「そうですね」と賛同したので所長室に放り込まれたのだが・・・
「はぁ・・・落ち着かない・・・
それにどう考えても休憩が多い・・・」
アスセナは奴隷の販売員だったので、休憩は仕事をしながらが当たり前だった。
それに比べればしっかりとした休みがあり、あまつさえスイーツが出て月金貨2枚・・・あり得ないくらい好待遇だった。
ちなみにスイーツは、1階のブルックが代表して皆の分を買い、3階に人数分届けた時に料金を徴収していった。
「なにもする事がない・・・ん~・・・帰りに本でも買って休憩中に読むようにしようかな・・・
あ、美味しい。」
アスセナはゆっくりと午後のスイーツを楽しむのだった。
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研究所総務部。
「そうですか、ジーナが尾行を。」
「はぁ・・・ラックの所が見つかりましたか。
所長はご存じだったのですよね?」
「新貴族達とたまたま飲みにね。
今度王都に行ったら同期とまたあの店に行きますかね。」
「行くなら事前に言っておいた方が良いですよ?
それにしてもラックの店に行っているという事は王都守備隊がルークに接触したんですね。
まぁ順当なのですかね・・・」
マイヤーが腕を組んで考えている。
「マイヤーさん、なんだかすみませんね。
本当なら魔法師にならない為に王立学院に入ったはずなのに王都守備隊に目を付けられてしまったようです。
ジーナを送り込んだからなんでしょうけど・・・」
武雄が申し訳なさそうに言う。
「いえいえ、息子が選んだ選択ですからしょうがありません。
それにラックの娘か・・・確かラックの妻は財政局 予算管理部でしたね。」
「共働きなんですね。」
「ええ、父親は王都守備隊の分隊長、母親は財政局の次長です。」
「エリート一家ですね。」
「ええ。ですが、両親が2人とも重要な部署にいたので、ラックの娘の幼少期は第1騎士団や王都守備隊の情報分隊の女性達に育てられたと言っても良いくらい店に居たはずです。
まぁ彼女達なら問題ないとは思うのですが・・・いかんせん幼少期から大人達に囲まれている生活ですからね。
私も小さい時にしか会っていませんが、聞き分けの良い物静かな娘だった記憶があります。」
「ふむ・・・機会があるならラックさんの娘も見てみましょうか。
あ、息子さんに紹介させた方が良いでしょうかね?」
「ルークはその辺は下手だと思いますけどね・・・まぁないよりはマシではないでしょうか。
使えるだけ使ってください。」
マイヤーが頷くのだった。
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