第1529話 研究所開所日。6(初日は説明ばかりです。)
研究所の1階 試験小隊詰め所。
「はい!襟章を受領してきました。
皆、配布するので呼ばれたら前に来るように。」
「スズネ殿もありますよ。」
アンダーセンとトレーシーが皆に言う。
「「「はーい。」」」
皆が席に着くと。
「ベイノン。」
「はい。」
「右襟に付けてください。
次、ブレア。」
「はい。」
次々と呼んで襟章を渡していく。
・・
・
「左右で違う色。」
「へぇー。」
アニータとミルコは物珍しそうにお互いの襟章を見ている。
「この襟章は所属先を識別する事が目的ですからね。
譲渡したりしないようにしてください。」
アンダーセンが言う。
「はーい。」
ミルコが答える。
「あ、洗濯とかして失くしたらどうなりますか?」
アニータが聞いてくる。
「始末書という名の反省文ですね。」
「「はーい・・・」」
ミルコとアニータが「失くさないようにしよう」と心の中で誓うのだった。
「金色の下地・・・かなりの上役でないと出来ないんじゃ・・・」
鈴音が昔見た映画を思い出しながら考えている。
「ちなみに説明書では金色の下地は王家と陛下直轄組織のみ。
黒線2本が王家、黒線1本が所長や王都守備隊総長、白線1本が所属員で星の数が階級。
エルヴィス伯爵家は鮮やかな赤が下地で金色の線、キタミザト子爵家が深い青が下地で金色の線。
ちなみに深い青は濃紺というらしいな。」
アンダーセンが言う。
「何か法則性があるのですか?」
ブルックが聞く。
「王家は金色の下地で上位から黒線2本、1本、白線2本、1本で組織順位が決まっている。
貴族はそれぞれの色の下地で上位から金色の線1本、白線2本、1本の組織順位。
王家と貴族での星の数は組織最上位の陛下と当主が3つ、親族が2つ、執事長とメイド長が1つ、他なし。
軍隊組織では騎士団長や兵士長が星3つ、小隊長が2つ、班長が1つ、兵士がなし。
試験小隊では私とトレーシー部署長が星2つ、隊員が1つ、ミルコ、アニータ、ケード、パメラ、スズネ殿が星なし。
ちなみに所長の説明だと『新人隊員は星なしで3年経過後の総評が良いか、もしくは他のベテラン隊員が推薦するのなら星1つにするかも』との事。
とりあえずこんな所だな。」
アンダーセンが説明書を読みながら言う。
「なるほど・・・今の所、王家、陛下直属組織、エルヴィス家、キタミザト家のみなのですね?」
ブレアが聞いてくる。
「今の所・・・だと思う、今後、増えると予想はするが・・・
それに絶対他の貴族や組織が類似したのを作るだろう。」
アンダーセンが考えながら言う。
「あ、そういえばテイラーさんが襟章を額に貼り付けていましたよ。」
「額に?・・・多分どこかに飾って自分達の階級等を覚えやすくするのでしょうね。」
トレーシーが考えながら言う。
「王家もエルヴィス家もキタミザト家もありましたが?」
鈴音が首を傾げる。
「・・・王都に送る気かも・・・
所長の事だからアンダーセンが言った他の貴族達が作る前に王都に送って自分達の襟章を認めさせるんじゃないかい?」
トレーシーが言う。
「なるほどな。
だが、早々に送った方が良いだろう。
真似される前に王都で認識させれば同じ物を作られないだろう。
あと向こうに届け出のあった襟章はこちらでも額に入れて覚えた方が良いだろう。
どこで会うかわからないしな。」
「そうだね~。
一応、所長に言ってジーナ殿とエルヴィス家のスミス殿にも送った方が良いだろうね。」
「そうだな。
あとで進言しにいこう。
さて、とりあえず我々の大まかな仕事が割り振られているが何をどうするかは決まっていない。
会議室は当面研究室の面々が使うだろうから俺らはこの場で今後のやり方を考えて行こうと思う。
まずは全体の流れだが・・・トレーシーはスズネ殿とは会議だろう?」
「会議室広すぎだし・・・打ち合わせ場所を借りるかな。
スズネ殿、研究室の図面は持って来ていますか?」
「いえ、持って来ていません。
3階のヴィクターさんの所に部屋の図面が置いてあるはずなので、写して持って来ますね。」
「ええ、お願いします。
なら私も行ってさっきアンダーセン達が言っていたジーナ殿とスミス殿の襟章の話を所長にしてきますかね。」
「トレーシー、頼む。」
「はいよ。
じゃ、研究室の面々は一旦3階に行ってくるよ。」
「一旦失礼します。」
トレーシーと鈴音が試験小隊詰め所を後にする。
「・・・あ、そうそう勤務時間は朝8時から夕方の18時までになった。
休憩等々はこの後考えるとして今は今後の話をして行こう。」
試験小隊の面々がアンダーセンの話を聞き始めるのだった。
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研究所の3階 総監室。
「・・・人事局のこの書類なんですけど。」
「着任届?・・・あぁなるほど、王都守備隊から王立研究所への異動だから離任と着任の届けが必要なんですね。」
「そうです。
とりあえず王都守備隊出身とトレーシーに書かせて、まとめて封筒に入れて所長名で送って良いですよね?」
「ん~・・・私のサイン必要ですかね?」
「そこがなんともわからないんですよね。
王都守備隊の時は分隊長達が集めて、まとめて人事局に持って行っていたんですよ。」
「となると・・・マイヤーさんのサインで良いのですかね?」
「組織として考えてみると所長のサインが必要な気がするんですよね。
王都守備隊の時は同じ王城内でしたからそれでも良かったのかもしれないのですよね。」
「まぁ近くに居ると一々所属長のサインを貰いに行くのも億劫ですかね・・・
地方ならしっかりした方が良いのでしょうね。」
「はい、なのでまとまった時点で所長のサインを貰ってお送りします。」
「うん、大した手間ではなさそうですし、良いですよ。」
「わかりました。
あと、ジーナ殿の襟章ですが、送付で良いのですか?」
「急ぎではないから5月の招集の際に渡しに行きますかね。」
「そうですね。
それに王立学院の様子も見て来れるのでしょうからついでで構いませんね。」
「誰連れて行きますかね。」
「ん~・・・最低2名は必要じゃないですか?馬ですよね?」
「ええ、でも帰りはスミス坊ちゃんが乗っていった馬車を回収しないといけないのです。」
「ん~・・・3名でしょうか。
人選はもう少し考えましょう。
所長がさっき持っていた招集の回答を書かないといけませんね。
だからこちらに来たのでしょう?」
「ええ、すみませんが、代筆お願いします。」
武雄が頭を下げるのだった。
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