第1512話 エルヴィス邸の厨房にて。(特定条件。)
エルヴィス伯爵邸の厨房にて。
料理人達が夕食の用意をしている。
「えーっと・・・タケオが買ってきた食器は洗って今順次湯船の中だな。」
「煮沸中ですね。
場所を取ってすみませんが、木製だと仕方ないですよね。」
「まぁな。
この手の食器はなかったからな。
で、タケオが買い物に行っている間に昨日から言われていた野菜と揚げ物、少ないが豆腐の用意は終わらせている。
・・・料理は聞いているが・・・こんなので大丈夫なのか?」
「世の中にはシンプルな食べ方があるのです。
カレーライスとかね。」
「確かにあれも米にカレーをかけただけだな。
作りも簡単で俺らも楽ではあるが・・・まぁタケオが食べたい料理で良いだろう。
で?紅魚の干物をどうするんだ?」
「普通に切り身にして焼きたいだけです、これは私、鈴音、コノハ、ニオの4名分で良いでしょう。
この人には小さめのお椀を使って皆に出す方を作ります。
スープは何を作りますか?」
「揚げ物と言われたからな。
シイタケの出汁に少しの塩と溶き卵で仕上げる物にした。
サラダはタケオが持ってきたゴドウィン伯爵家で作ったレモンを使ったのを準備中だ。
あと食後のスイーツは前に作ったこし餡団子だな。」
「十分ですね。」
「なら、さっさと切り身にするか。
おーい、紅魚の切り身を作ってくれ。」
「はーい。」
料理長の声に料理人が答える。
「なら・・・私は何をしましょうかね。」
「ベルテ一家とステノ技研の土産の煎餅を作れば良いんじゃないか?」
「そっか・・・そうですね。
大量に出てきましたし・・・一番最初に炊いて貰いますかね。」
「そうだな、まずはそこから炊くか。」
「湯煎している鉄のトレイの準備も問題なさそうですね。
あ、そうだ。
豆腐があるなら待っている間に揚げて油揚げを作ってみますかね。
もしかしたらもう1品作れそうですしね。
あ、卵ありますか?」
武雄が準備されている物を確認しながら頭の中で段取りを考えるのだった。
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エルヴィス家の客間では。
「・・・精霊の本とな。」
「これがそうなのですか。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが机に置かれた本をマジマジと見ながら言う。
「コノハが見つけました。
・・・どんな精霊かは言えないのですよね?」
アリスがコノハに聞く。
「言えないなぁ・・・アリスは私と契約しているからほぼ安心して読ませられはするけどね。
まぁタケオの方がわかっていそうでね。
タケオに確認して貰ったのよ。」
アリスの肩に座っているコノハが言う。
「そうですか・・・まぁ読んでもわからないでしょうから気が乗りませんが。」
アリスがあまり興味を示さない。
「私だと危険なのですか?」
エリカが聞いてくる。
「読めちゃう可能性があるからね。
精霊魔法師になっても良いなら読んで良いわよ。」
「ん~・・・光ってもいませんし、精霊に呼ばれないなら適性がないという事ですよね。」
エリカが言ってくる。
「あ~・・・確かに全能力を制限なく契約するには完全に条件を満たさないといけないけどね。
まぁ今回は条件に合う事はな・・・ん?・・・もしかしてタケオに見させるのが目的だったとしたら・・・」
コノハが言いかけて首を傾げる。
「ちょーっと待ってね・・・
えーっと・・・この内容だから問題はな・・・あれ?なんでこの記述があるの?・・・あれれ??
んん?・・・これって・・・あれ~??」
コノハが精霊の本を手に取ると中身を凄い勢いで見始める。
「「「「??」」」」
皆が首を傾げる。
「げっ・・・これマズいわ・・・
パナちゃん・・・は厨房か、テトちゃんはスズネと食堂ね。
ニオは後で来るんだよね。
これは夕食前に皆で相談しなきゃ。」
コノハがぶつぶつ言いながら思案してる。
「コノハ、悪神や邪神じゃないのよね?」
「それは平気よ。
平気なんだけど・・・タケオはこの内容見たし・・・作りかねないわよね。
えっと・・・アリス!タケオに今日の夕食の中身聞いてきて!というか行くよ!」
「ん?ええ、わかったわ。
じゃあちょっと行きましょうか。
コノハも。」
「うん!行く!」
アリスとコノハが客間を後にする。
客間に残された面々は
「・・・つまり、今日精霊魔法師が誕生するかもしれないという事じゃの?」
「コノハ殿の慌てようだとそうなりますね。」
「はぁ・・・これは大変な事になりそうですね。」
エルヴィス爺さんとフレデリック、エリカが悟った顔をしながらお茶を飲むのだった。
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再び厨房にて。
「ふふ~ん♪
これは驚くかなぁ?」
武雄が鼻歌交じりに鍋で煮物を作っている。
「タケオ!」
「タケオ様!」
コノハとアリスが厨房にやってくる。
「あれ?夕食はまだですよ。」
武雄が2人を見つけてにこやかに言う。
「タケオ!今日の夕食何!?何作った!?」
コノハが言ってくる。
「それは秘密ですよ。
驚かせたいですからね。
大人しく待っていてくださいね。
大丈夫食べられますから!」
武雄が良い笑顔で答える。
「いや!そうじゃなくて。
・・・あ・・・遅かった・・・」
コノハが武雄が煮ている鍋の中を見てガックリとする。
「ん~?」
武雄が首を傾げる。
「パナちゃん、気が付いていた?」
「何がですか?」
コノハの呟きにチビパナが武雄の肩に立って聞き返す。
「たぶんこれが条件の1つよ。」
コノハが鍋の中身を指さす。
「あ~・・・煮つけ・・・なるほど、料理の条件ですか。」
「見誤ったわ。
あの文言なら大丈夫だと思ったんけど。」
「そうですね。
油揚げの煮つけ・・・なのかもしれません。
ですが、概要では特例料理としかありません。
確定ではないですよ。」
「・・・どちらにしても増々条件が整うわね。」
「そうですね。
あ、ニオが来ましたね。」
「はぁ・・・皆で食べる前に軽く打ち合わせしようか。」
「そうですね。
あ、タケオ、私達は席を外しますね。」
「ええ、良いですよ。」
「じゃ、私も~アリス、行ってくる~。」
「「??」」
武雄とアリスを残し、コノハとパナが厨房を後にするのだった。
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