第1511話 ちょっと散歩。2(雑貨屋とその時の待っている人達は。)
その後、干物屋でいろいろ買った武雄達は今度は雑貨屋に来ていた。
そしてまた店内に散らばり物色している。
「えーっと・・・このぐらい深さのあるお椀が良いかなぁ。
ん?間口が狭くてもっと深いのもあるのかぁ・・・
数は・・・ん~・・・」
武雄はしゃがみ込み棚の一番下にある木製の食器を物色していると。
「タケオー!どこー!?」
コノハが叫んでいた。
「・・・」
武雄が「いくら他に客は居ないとしても店内で叫ばないで」と心の中で思う。
「あ、タケオさん、ここですか。」
エリカがやってくる。
「どうしましたか?」
「えーっと・・・コノハ殿が来て欲しいと言うのですけど。
聞こえましたよね。」
エリカが苦笑する。
「タケオー!こっち来てー!」
再びコノハの要請が聞こえる。
「はいはい。」
武雄が立ち上がりエリカと共に向かう。
・・
・
店内の奥、ひっそりとした本棚の前に到着する。
「来たー!
タケオ!これよ!」
コノハが武雄に本を見せる。
「ん~??」
武雄がコノハから受け取り中を確認する。
「・・・うん・・・なるほど。」
「どう思う?」
コノハが顔を煌めかせながら聞いてくる。
「・・・パナ。」
「はい、これですね。
・・・問題ないのではないですか?
詳細はわかりませんが、この精霊の適応条件は厳しいですし誰もクリア出来ないと思いますよ。」
パナが人間大に実体化して武雄から本を受け取り中を見てそう呟く。
「そうですか・・・」
「タケオ様、何があったのですか?」
「??」
アリスとエリカが首を傾げながら聞いてくる。
「はぁ・・・精霊の本ですよ、これ。」
「「え!?」」
武雄の言葉にアリスとエリカが驚く。
「はぁ・・・どうしましょうかね。
なんでこの時期にというか、なぜにあるのでしょう?」
武雄が微妙な顔をさせながら言う。
「なんでだろうねー?」
コノハが楽しそうに言う。
「・・・誰だ??」
「誰かなぁ~?」
「誰でしょうか・・・」
武雄とコノハ、パナが首を傾げる。
「「??」」
アリスとエリカは3人を見守るのだった。
・・
・
「お買い上げありがとうございました。」
武雄達が雑貨屋を後にして屋敷に向かい始める。
「タケオ様は食器を買っていましたよね。」
「ええ、今日使おうと思ってですね。」
武雄が真っ直ぐ道の先を見ながら答える。
「精霊の本はどうするんですか?」
「とりあえず買ったのですけど・・・ん~・・・
例のごとく店主さんが仕入れた覚えも買った覚えもない代物とはね・・・」
「精霊の本ですし。」
エリカが苦笑している。
「本当・・・どうしましょうかね。」
「タケオ様、どういう精霊なんですか?
悪い方ですか?」
アリスが聞いてくる。
「まぁ使い方によってはね・・・
コノハ、パナ、大丈夫ですよね?」
「うん、問題ないと思うわよ。
ちょーっと面倒だけど。」
「王都の王家専属魔法師が言っていた戦力には・・・たぶんなりませんし。」
コノハとパナが言ってくる。
「戻ってから考えましょうか。」
「そだねー。」
「ですね。」
「大丈夫なのかなぁ。」
「また一難ですね。」
武雄達は屋敷に向かうのだった。
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エルヴィス伯爵邸の食堂。
「「~♪」」
ニルデとジルダが嬉しそうに出されているお菓子を食べている。
「漬け置きというやり方が・・・不思議。」
「米の殻を取ってから水で洗うって凄い考えだよね。
食べ方が全く違うんだね。」
「今まで口にしていたのとはまったく違う物が出るという事なんだね。」
エンマとフローラがお茶を飲みながらさっき見た作業の感想を言い合っている。
「はぁ・・・ここまで違うと期待しかないな。」
「そうね。
キタミザト様達が絶賛するとなると相当お口に合ったのでしょうね。」
ドナートとボーナは落ち着きながら夕食を待っている。
一方のステノ技研。
ベインズが書いた木臼を『分析』をして図面に起こした物を確認しながらお茶を飲んでいる。
「・・・この木臼の図面・・・本当なのか?」
ブラッドリーが聞く。
「ええ、しっかりと見て描きました。」
ベインズが頷く。
「そうか・・・まさか内側と外側で傾斜が違うとな。」
「外側の方が狭く内側が高い溝は均一・・・凄い技術じゃ。」
ボイドが腕を組みながら言ってくる。
「これ・・・小型化よりも先にこの木臼を再現してみますか?」
サリタが言ってくる。
「木を彫るのは大変だぞ?
それもこの精度とは・・・」
ブラッドリーが悩む。
「・・・じゃが、小型化するには一度この大きさで再現してみないといけないかもしれないの。」
「だよね、爺ちゃん。」
サリタが祖父の後押しに頷く。
「木工ですか・・・誰か木の扱いが出来る人は居ましたかね?
どこかに依頼してみますか?」
ベインズが聞いてくる。
「それも手だな。
・・・この精度にするには仕上げはキタミザト様の堅魚節削り器を使えるのか?」
「ん~・・・下側は良くても上側は難しいですよ。
これどうやって仕上げたんですかね?」
サリタが考える。
「中心に向かって下がっている物を・・・紙ヤスリかなぁ?」
鈴音がボソッと言う。
「「「「ん?」」」」
ステノ技研の皆が鈴音を見る。
「あ・・・なんでもないです。」
鈴音が「しまった」という顔をさせる。
「紙のヤスリとはなんだ?」
「研磨石を砕いて紙に張り付けるのですかね?」
「確かに紙なら手が届くなら磨けるの。」
「細かくかぁ・・・採掘を生業にしている所に頼めば商品価値がないのを見繕ってくれて原価は安そうね。」
「作るとなると糊をどうするかかな?」
皆が一気に言ってくる。
「あ~・・・」
鈴音は「これまた商品が増えるの??」と汗をかきながら仲間を見守るのだった。
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