第1509話 夕食の準備。(皆集合。)
エルヴィス伯爵邸の中庭にて。
「「「おはようございます。」」」
エンマ達ベルテ一家が中庭でメイド達と用意を済ませていた。
昨日、一通りを見ている為、皆がすんなりと配置していた。
今は参加者や見学者の為に飲み物を用意している。
「あ、おはようございます。」
「今日はよろしくお願いします・・・が、結構大掛かりなのですね。」
ドナートが木臼等の用具を見ながら言ってくる。
「ええ、それなりにね。
ベルテさん達は米をどう加工するのかと味を確認すれば良いですからね。」
「はぁ・・・米ですよね。」
「ええ、米ですよ。
気楽に待っていてくださいね。」
武雄が優しく言う。
「キタミザト様、キタミザト様、アリス様はどこですか?」
「どこー?」
ニルデとジルダが聞いてくる。
「アリスとエリカさんは裏庭でエリカさんの魔法の練習に付き合っていますよ。」
「「魔法?」」
「ええ、昨日からエリカさんが魔法が使えるようになったので慣らすみたいです。」
「ふーん、行っても良いですか?」
「良いですよ。
ボーナお母さんに許可は取ってくださいね。」
「「はーい。ボーナ!」」
2人がボーナの元に向かう。
「タケオさん、来ました。
ベルテさん達も来たんですね。」
鈴音を先頭にステノ技研一同がやってくる。
「キタミザト様、今回はお招きありがとうございます。」
一同を代表してブラッドリーが挨拶をする。
「いえいえ、すみませんね。
一連の工程はここで見せる通りです。」
「はい、簡略化する為に見学させて頂きます。」
「「頑張ります。」」
ステノ技研の皆が頷く。
「お、もう揃ったのか。
早速始めるか。」
料理長を始め、米が入った袋を2つ持った料理人達が集まってくる。
「やりますか?」
武雄が聞く。
「まぁ早めに作っておけば料理に時間がかけられるから良いよな。
さてやるか。
おーい、準備だ。
配置に付け~。」
料理長の掛け声で皆が配置に付くのだった。
・・
・
「「・・・」」
エンマとフローラが料理人達が回している木臼を正面に座りながらじーっと見ている。
「なぜ、殻だけ取れるのかしら?」
「ね、不思議だね。
この隙間が原因かな?」
「となると、この隙間の広さも考えがあってなのかな・・・
ん~・・・石臼でも出来るかな?」
「石は固過ぎるから木でないと実も削るんじゃない?
木の方が加工もし易そうだし。」
「そうだね・・・溝があるみたいだけど・・・溝の深さや幅も関係あるのかな?」
「どうなんだろう?」
2人して興味津々で見ていたりする。
一方、ドナートとボーナが選別の所を見学していた。
「風で殻を取った米と殻の選別・・・ふーむ・・・」
「どっちも飛んじゃいそうなのに殻だけが飛ぶわね。
・・・周辺に殻が散乱してるけど。」
「そうだなぁ・・・これをあの人達が装置にするのだろうな。」
2人がテーブルを囲んで話している集団を見て呟くのだった。
ステノ技研の面々は一連の工程を見て、鈴音、武雄を加えて机に事前にサリタがニオに指導されながら軽く描いた図面を広げて問題点を言い合っていた。
「問題は木臼の大きさだな。
大きすぎる。」
ブラッドリーが図面を見ながら言う。
「いやいや、風を送る所も問題ですよ。
こう・・・米と殻が落ちてくる所に横から風を当てるというのは、なるほど分別にはその通りだと思います。
ですが・・・落ちてくる物に横から風を当てても効果は薄いでしょう。
なら斜め下から当てた方が良いですよ。」
ベインズが図面に書き込みながら言う。
「木臼を小さくして2段階にしてみますか?」
ベインズの息子のアレホが言ってくる。
「どちらもじゃの。
木臼を2回りほど小さくして段違いの2段にし、この何枚も板を付けてグルグル回す風車?というのかの?
これも下から回して風が斜めに当たるようにしないといけないの。
なので・・・風車は下に設置し、横で起こした風を板で方向を付けて風が斜め下から当たるようにすればどうじゃ?」
ボイドも図面に軽く変更点を書きながら言う。
「それに木臼は横回転、風車は縦回転ですよ?
いくらスズネの考えたミシンの原理を使って早くお手軽に回すにしても縦と横では難しいのでは?」
ボイドの孫娘のサリタが言ってくる。
「ん~・・・武雄さん、木臼って横に回転ですけど何とかなりますよね?」
鈴音が武雄に聞く。
「まぁ歯車の考えがわかるのなら出来ますし、そもそも風車を回せばそこからベルトで木臼の方に持っていき木臼の上側に棒を出させてそれに歯車を噛ませれば回転させられます。
なので横回転で難しいというのは私は考えていませんでした。」
「そうですね~・・・私が思う問題点は木臼に籾を入れる方法ですね。
大量に入れる訳にはいかないですから、少数を木臼に入れられるようにする事と木臼の軸は中心ですから投入場所は軸から少し横にありました。
その穴にどうやって入れるかです。」
鈴音が入り口の問題点を言ってくる。
「ん~・・・ならこうやって・・・木臼の穴が回転する位置はわかっていますから木臼の裏に一緒に回らないように蓋をしてどこか穴の軌道上の1か所に木臼の穴と同じ穴をあけておきます。
籾を入れて置く所は下に行くほど細くさせ、木臼の穴と同じ大きさにしておき、その蓋の穴にピタリと合わせるように設置します。
こうすると木臼が回転して籾入れの所に来れば少しずつ入りますよ。」
武雄が木臼と籾の底部分を図面に書いて説明する。
「あ~、なるほど。
うん!これなら良いですね。」
「なるほどな、確かにそうだ。
こういうのはやっぱり発想だな、流石キタミザト様です。
あとは散らばる籾殻を集めるのは荒い目の布で作った袋を付けた方が良いだろうな。」
「あ~・・・こんなのがラルフさんの所で売っていましたよ。」
ブラッドリーの言葉に武雄がラルフの仕立て屋で買った安い布を取り出す。
「ふむ・・・これで軽く袋を作ってみますか。」
「あ、なら私が作っておくわ。
ラルフさんの所に明日にでも買いに行ってくる。」
サリタが言ってくる。
「あとはミシンの機構をどこに置くかじゃな。」
「風車の近くが良いですし、木臼とかも掃除とかで取り出しやすいようにしないといけないですよね。」
「じゃあ、ここに小扉を付けるか。」
「そこは物ごと取り外せるように。」
ステノ技研はワイワイ話をしているのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




