第1502話 夕食。1(事前に食べる者達はというと。)
エルヴィス伯爵邸の執事とメイドの控室。
「あぁぁぁ♪」
「美味しい♪」
「この幸せ感はなに?んん~♪」
「止まらないよ~♪」
メイド達がカレーライスを頬張っていた。
「あはは、これは紹介して良かったですね。」
メイド達の食べっぷりを見ながら武雄がお茶を飲んでいる。
「キタミザト様、この度は遠征ご苦労様でした。」
メイド長が近寄って来て改めて武雄に言ってくる。
「ええ、この米を入手する為ですからね。
どうです?凄いでしょう?」
「はい、誠に素晴らしい食材かと・・・キタミザト様、申し訳ございません。
些か、皆がキタミザト様の前で醜態を晒しているようにも見受けられますが・・・」
メイド長が恐縮している。
「良いのですよ、良いのです。
ここは皆さんの控室です、伯爵達の面前ではないのですから問題ないですよ。
それにお邪魔しているのは私なのですから遠慮なく、さぁさぁメイド長も食べてください。」
武雄がにこやかに言ってくる。
「ありがとうございます。
頂かせて貰います。」
メイド長が席に戻っていく。
「タケオ、カレーの効果で米も苦になっていないようだな。」
隣にいる料理長が皆を見ながら言ってくる。
「料理人達はカレーに混ぜる前に米単体の味を確認していましたね。
問題はなさそうでしたが?」
「あぁ少し味に苦みというか不思議な味がしていたな。
皆が単体の味の確認をして次になんの料理と合わせるのか考えたかったのだろうな。
皆がどんな料理と合わせるか・・・提案してくるのが楽しみだな。」
「玄米にするのに手間暇がかかりすぎますからね。
もう少し手順が簡略化出来れば良いのですけどね。」
「それは明日のステノ技研に任せるのだろう?」
「ええ、請け負ってくれる予定です。」
「そうか、それは楽しみだな。
作らせる為には美味しい玄米を出さないとな!」
「ええ、『玄米はこんなに美味しい物なんだよ』とわからせれば、ベルテ一家も一生懸命に米を作るでしょうし、ステノ技研も真剣に玄米精製装置を作るでしょう。」
「楽しみだな。
おっと、そろそろ厨房に戻るか。
伯爵達向けの最後の仕上げの所は見ておかないとな。」
「そうですね。」
と武雄と料理長が席を立つと。
「「キタミザト様!ありがとうございます!」」
皆が席を立ってお見送りをしてくれるのだった。
厨房への道すがら。
「あ、そういえばさっきパスタの方の新作を思いついたんだがな?」
「え?この場で相談ですか?」
「ああ、ついでに乗ってくれ。」
「まぁ、良いですけど、何を思いついたのですか?」
「実はなぁ、カレーで肉を煮込んでその肉をパスタに絡めたら美味しいんじゃないかと思ってな。」
「・・・カレーを混ぜれば良いのでは?」
「違うんだ、タケオ。
肉のみにカレーの味を浸み込ませたいんだ。」
「ん~??」
武雄と料理長が話し合いながら厨房に向かうのだった。
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一方の客間では。
「・・・時にアリス。」
「はい、お爺さま。
なんでしょうか?」
「うむ・・・なんだか歓声が聞こえなかったかの?」
「・・・あ、今頃メイド達が夕食を取っている時間ですね。」
アリスが懐中時計を取り出して時間を確認しながら言ってくる。
「!!ということは・・・この歓声が!」
「米とカレーの所業でしょう。」
「ん?フレデリックがいつの間にかいないの。」
「フレデリックは少し前に夕食を取ってきますと退出していますよ。
今頃厨房ではありませんかね?」
「なぬ!?・・・うぬぬぬ・・・」
「お爺さま、私達の分がなくなった訳ではありません。
順番待ちです。」
「・・・アリス、落ち着いておるの。」
「落ち着く?・・・いえ、エリカさんと気晴らしで将棋をしていますけど。
そこに集中しないと将棋を食堂に持って行って出て来るのを待ってしまいそうなくらいです!」
「・・・アリスも焦がれているという事じゃな。
エリカ殿は・・・」
「伯爵様、私は今夕食の事を考えないように集中しているんです。
声をかけないで頂けますでしょうか。」
エリカは将棋の盤面を睨みながら言ってくる。
「うむ・・・すまなかったの。
ん?どうぞ。」
客間の扉がノックされたのでエルヴィス爺さんが返事をするとビエラとクゥとタマとミアが入ってくる。
「あ~。」
「きゅ。」
「ニャ。」
「伯爵様、戻りましたー。」
4人は1つのソファに座って挨拶してくる。
「うむ、ご苦労じゃった、もうすぐ夕食だからの。
皆で待っていようの。」
「「はい!」」
「きゅ!」
「ニャ!」
エルヴィス爺さんの言葉にチビッ子達が返事をする。
「4人共散歩して来ると言っておったが、今日はどこまで行ってきたのかの?」
「はい、伯爵様。
今日はコラ達の所に行って主会議してきました。」
「主会議とな?」
「はい、コラがこの街を鷲が北側を狼が東側、今度コラの下に着いた白狼が南側に生息しています。
西側が不在なんです。」
「ふむ・・・それは今までもという事なのかの?」
「前はクゥが居たので西側で主格の者が居なかったのです。
主が居ようが居まいがオークやゴブリン程度は出没するのですけど、それらの監視や生息数を減らす行為は主達の役割ですからね。
今日は西側をどうするか話してきました。」
「ふむふむ、それはタケオも交えて話をした方が良いかもしれぬの。
夕食後に再び話そうの。」
「はい」
ミアが頷くのだった。
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