第1497話 魔王国の本気。2(王城居残り組は大変なようだ。)
親愛なる第1軍指揮官 ラニエロ・フレッディ殿。
この手紙に眼を通しているという事は無事第4軍が捕縛者を第1軍に引き渡したという事だろう。
今回第2軍と第4軍は戦争の大義名分になりうる・・・いや、それに繋がる内容の情報を仕入れた。
それも4名の尋問でだ。
優秀な部下を持つというのはブリアーニ王国に対しなかなかの優越感だ。
さて、優秀な第1軍指揮官殿。
我が戻るまでに第2軍、第4軍が引き出した情報以上の最新情報を入手しておいてほしい。
先の情報はブリアーニ王国も知っている内容だ。
我らはさらに深くまで知らなくてはならない。
選択肢は多く持ちたいからな、あらゆる手段の検討と実施を願う。
追伸、戻ったら第1軍の訓練に参加するからね♪
お前らの主、ダニエラ・セラオ・ヴァレーリより。
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「・・・」
第4軍指揮官が3回程繰り返し手紙の熟読をしていた。
「数回読めば内容が変わるかと思ったが・・・これは第1軍指揮官殿も大変だ。
中隊長・・・良くやった。
今回の犠牲は第1軍だ。
半日の休暇を2日に替えてやろう。」
第4軍指揮官は小さなガッツポーズをして、その場に居ない中隊長に感謝をするのだった。
「さて・・・ここで第1軍に任せっきりだと陛下にどやされそうだな。
取り調べ補助という形で支援する方が良さそうだが・・・」
「失礼します!
第4軍指揮官殿、指示の通り主だった幹部を会議室に招集いたしました。」
指揮官補佐が近寄って報告してくる。
ちなみに魔王国軍での序列は以下の順序になっていた。
軍指揮官、指揮官補佐、補佐官、大隊長、中隊長、小隊長、班長、兵士となっており。
軍指揮官の下に大隊長が3名で約1000名ずつを抱えた実働部隊。
大隊長と同格として指揮官補佐が1名置かれ、約1000名の文官や工作、荷駄等を行う支援部隊を抱えていた。
第1軍は王護衛および王都政務、第4軍は偵察、諜報、攪乱、陽動が主な任務だ。
王城上空の警備は持ち回りだったりする。
なんだかんだと魔王国内の政を各軍で振り分けて行っているのだった。
「うむ。
我らは第1軍の取り調べの支援に回る。
今回出動した中隊は半日の休息後に通常勤務、急を要する事はないとは思うが・・・
陛下がまだブリアーニ王国だ、帰路の際に警護に付く可能性もある旨の伝達だけしておけ。」
「はい、大隊長達には伝えます。
会議はすぐに行いますか?」
「ああ、第1軍が激しい尋問をするかもしれない。
生きているうちに我らも尋問に加わっておきたいからな。
皆で方向性の確認後に支援任務を実施しよう。」
第4軍指揮官が指揮官補佐を伴って王城内に入っていくのだった。
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ブリアーニ王国の王城のブリアーニの執務室。
「・・・」
ヴァレーリは大人しく執務室内にあった本を読んでいる。
「・・・ねぇ、ダニエラ。」
ブリアーニが資料を見ながら聞いてくる。
「ん~?」
「暇そうね。」
「暇だからな。
連れていった者達への取り調べや記載されていた運送業への内偵、調査等は部下がするしな。
我は報告を待っていれば良いし、報告が来たら同時に対応方針も提示されるだろうからどれかを決裁すれば良いだけだな。」
「まぁ、ダニエラの立場ならそうかぁ。」
「小さい組織だと上から下まで動かなくてはいけなそうだが、魔王国軍規模では上が動かなくてはいけない時などほとんどないさ。」
「小さくてすみませんね。
で、今回は?
随分大人しかったけど。」
「現地視察・・・移動中、第2軍指揮官と第4軍指揮官にずーっっっっと言われた。
カールラも見ていただろう?
『私が大まかな説明しますからね!中隊長が難色を示したら魔眼も使ってはいけません!勝手に手を出すと現場が混乱するから絶対に手を出さないように!わかりましたか!?何ですか!その不貞腐れた顔は!』とな。
折角来たんだ、他の者に見られないようにしてちょっとくらい魔眼を使って体に聞いたって良いじゃないか・・・なぁ?」
「聞かないでよ。
時と場合によるし、今回はあの中隊長に任せて正解だったでしょう?」
「穏便に最大級の成果を出した・・・んだが、魔眼使いたかったなぁ~。
これ全然使いどころがないんだもんなぁ。」
「魅了の魔眼で廃人なんて・・・どんな威力よ。」
ブリアーニが呆れている。
「大の大人が幸せそうな顔で気持ち悪いくらいワンワン鳴くぞ。」
「・・・本当に気持ち悪いわ。
魔眼なんて、結局の所、一時的に体の自由を奪ったり、惚れさせたり、思考が弛くなるくらいでしょう?」
「らしいが・・・何でだろうな。
戦闘にも使った事はないし、本当に使いどころがない魔眼だ。」
「ん?戦闘に使わないの?」
「あぁ、魔眼を使っての戦闘なんて2回か3回だ。」
「戦闘には便利そうだけど。」
「ほとんどの魔物は我より強くないからな。
魔眼を使う必要はないし、試合のような場合は使って相手を壊すわけにもいかなくてな。」
「ドラゴンは?」
「あれらは本気で討伐した事はないな。
どちらかと言えば本気の試合程度だろう。
相手を壊す事を目的としていないし、殴り合いの喧嘩のようなものだ。」
「ドラゴン相手にそこまで言えるのはダニエラだけよ。
どうすれば魔眼に対抗出来るのかしら?」
「まぁ、魔眼持ちすら珍しいのだ。
あるとすればドラゴンのような豊富な魔力量と意志の力だったり、本人の素質や精霊が付いていたらとか特殊な条件でじゃないか?
対策を取ってもあまり有意義とは言えないと思うがな。」
「ん~・・・うちの国家には魔眼持ち居ないのよね。」
「良い事じゃないか。
魔眼は差別の対象になりやすいからな。」
「強者の証という見方をする者もいるわよ。」
「魔眼持ちの皆が皆、戦闘に使える訳ではないし、そもそも本人の力量にもよる。
大した力を有しない場合は魔眼であると認識もしていない場合もあるだろうしな。
激昂して目の色が変わるだけでも魔眼持ちだぞ?
差別されるぞ。
ない方が良いに決まっている。」
「そうかぁ・・・でも魔眼かぁ。」
「まぁない物ねだりだな。」
とダニエラは呆れながら言うが心の内では「ま、私の魔眼も植え付けられたような物なんだが」と思うのだった。
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