第1496話 魔王国の本気。1(皆はとりあえず帰投した。)
ブリアーニ王国の王城の女王の執務室。
この部屋にはブリアーニとヴァレーリのみが居る。
撤収も終わり、まずはこの地で1泊してから帰投となっていた。
ちなみに捕縛した者達はワイバーンに吊るされて一直線に王城に連れていかれている。
第2軍指揮官はヴァレーリのお目付け役として同行しており、別室で今は休憩中。
第4軍指揮官は捕縛した者達と一緒に王城に帰還していた。
で、肝心の室内はというと。
「んん~・・・」
「・・・」
ブリアーニ達が会合場所で入手したリストと戻って来てからヴァレーリが書いた報告書、そして事前に確認した行方不明者リスト等を見ながら唸っていた。
ヴァレーリは窓から外を見ながらお茶をゆっくり飲んでいる。
「ん~・・・ん~・・・」
「カールラ・・・」
「ん?なに?」
ブリアーニがリストを見ながらぶっきらぼうに聞いてくる。
「うるさい。」
「・・・独り言言わないだけマシだと思って。」
「そうか。」
ヴァレーリが頷いてお茶を飲む。
「ん~・・・ん~・・・」
再びブリアーニが唸り始める。
ブリアーニが悩んでいる原因・・・会合場所で入手したリストに行方不明者リストに無い者の名前があったり、ヴァレーリが書いたタローマティが覗いて読み取ったオリーヴの心内のリストに記載されていたと思われる名前が行方不明者リストにあったりと・・・自国民の確認を悩みながらしているからだった。
入手したリストには、積み荷の内容として食料、物、奴隷(種族名と名前)等の区分とどの荷物がどの運送業者に引き渡したのかの印、そして運送業元締めの名前と住所が記載されていた。
そして事前に作成した行方不明者リストには出身地と名前と性別が書かれており、タローマティが読み取ったリストは入手したリストと同じ形式で書かれていた。
「・・・まぁエルフという種族の括りなら魔王国 ブリーニ領も候補なんだがな。」
「でもそちらのエルフは人攫いの報告はないのでしょう?」
ブリアーニが即座に返答する。
「少なくとも我には報告が来ていないな。
領主のブリーニも何も言ってこないという事はないという事だと思うしかない。」
「もしくはあっても報告しない・・・か。」
「人攫いがあった場合でも王城に報告する義務がないからな。
そこは領主達の判断次第になるな。」
「どちらにしても現状では我が国の国民だと思わないといけないんだよね~・・・
あ、この人もリストに無い・・・なんでないのよぉ~・・・・これは誰が集めたのかしら。
まったく・・・あ、これはあるっと。
喜んじゃダメよね・・・真面目に真面目に・・・・」
「カールラ。」
「・・・ん~・・・ん~・・・」
ヴァレーリの呟きにブリアーニは唸るのみに留め始める。
「はぁ・・・あいつらはそろそろ王城に帰還したかな?」
ヴァレーリが窓の外を見ながら呟くのだった。
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魔王国王城の城門前の広場にて。
捕縛された者達が第1軍の兵士達により王城内に連れて行かれていた。
「大きい土産ですね。」
「ついでにうるさかったんですけど・・・黙りました。
流石に王城では騒ぐ気にはならなかったでしょうか。」
「ワイバーンに長時間吊られたからではないですか?」
「あ~・・・確かに慣れないとあの高さは怖いですか。」
「あれは相当訓練必要ですしね。」
「ですね。
私も久々に乗りましたが、少し怖かったですからね。」
「貴方がそう言うのでしたら第2軍の指揮官はさらに慣れていないだろうに・・・だから陛下の護衛に残られたのでは?」
「ははは、かもしれません。」
第1軍指揮官フレッディと第4軍指揮官が笑いあいながら話し合っている。
「報告します!
第1軍指揮官殿!第4軍指揮官殿!
特殊作戦中隊が捕縛した者を第1軍に引継ぎ完了しました!」
中隊長が報告にやってくる。
「うん、ご苦労。
現時点を持って特殊作戦中隊を解散、総員原隊に復帰するものとする。
また作戦に参加していた各小隊は半日の休暇を実施するよう伝達を行え。
その後は各軍の指示に従う事、以上だ。」
「はっ!
特殊作戦中隊を解散し、原隊に復帰します!
また半日の休暇を作戦に参加した各小隊に伝達します。
失礼しました。」
中隊長が指揮官2人から離れ自分が指揮した者達の所に戻っていく。
「上手く指揮出来る者で良かったですね。
良い人選でしたね。」
「陛下もそう評価されておりました。」
「そうですか。
さて・・・取り調べを開始しますかね。」
「引き渡しが終わりましたのでこちらを渡しておきます。」
第4軍指揮官が手紙を取り出す。
「これは?」
「陛下より。」
「はぁ・・・」
フレッディがため息混じりに手紙を読み出す。
「っ!?」
直ぐに口元を抑え・・・あ、手紙を握りつぶしました。
「陛下はなんと?」
第4軍指揮官が聞いてくる。
「・・・私は部下に指示を出してきます。
後ほど第4軍指揮官殿には詳細な打ち合わせをお願いします。」
フレッディが第4軍指揮官にくしゃくしゃになった手紙を渡して城内に去っていく。
「・・・えーっと・・・あ~・・・酷いな・・・」
第4軍指揮官はヴァレーリの手紙を読みそう呟くのだった。
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